フォーカス試乗記 どこまでも素直なハンドリングに胸キュン

マニアック評価vol377

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ビッグマイナーチェンジを行なったフォード・フォーカス。どれほどの進化を遂げたのかを確かめるべく試乗した

フォード・フォーカスがビッグマイナーチェンジを行ない、新しいパワートレーンに変更された。さらに、エクステリアおよびインテリアはもちろん、ボディ剛性やサスペンションなど、多岐にわたり変更されたニューフォーカスを箱根のワインディングで試乗してきた。<レポート:髙橋 明/AkiraTakahashi>

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フォード・フォーカスのエンジンは、従来の2.0L・NAから1.5Lターボへ変更された

最大のポイントはエンジンとトランスミッションの変更だろう。エンジンは、従来の2.0L・NAエンジンから1.5Lターボへと変更された。フォードの環境エンジンEcoBoostのラインアップを見てみると、最も小さいものが1.0L・3気筒となり、フィエスタに搭載される。その次が今回フォーカスに搭載した1.5Lターボ4気筒(M9D型)、その上に1.6L・4気筒、2.0L・4気筒、マスタングに搭載した4気筒の2.3L、そしてV型6気筒の2.7L、最大排気量V6型3.6Lといったラインアップである。

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これまでの2.0L・NAエンジンの170ps/202Nmに対して、今回の1.5Lターボ・エコブーストは、180ps/240Nmへとダウンサイジングしながらも、出力はアップしている。さらに燃費も20%向上し、JC08モード14.3km/Lとなっている。また同時にトランスミッションも、フォード・ゲトラグ製の6速DCTから6速ATへと変更されている。マニュアル操作できるシフトは、サムシフトと呼ばれたシフトレバーにあるスイッチを利用するタイプから、一般的なパドルシフトに変更された。

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エクステリアは写真でもわかるようにフロントマスクが大きく変更され、よりスポーティな印象に変わった。これまでキネティックデザインとして展開してきたフォードのデザイン言語は、今回さらに進化を遂げ「フォード・グローバルデザイン」とも言うべき新たなデザインツールとして展開する。

現行マスタングを小振りにしたエクステリアは、フォードのラインアップに組み込まれた兄弟として印象付けられ、どこか特定の地域だけを意識したものではなく、グローバルモデルであることが理解できる。インテリアでは大幅な変更はないものの、細かく配置されていたスイッチ類が整理され、操作系はシンプルになった。

従来のフォーカスもそのハンドリングレベルの高さに驚かされたが、今回はさらに感心させられた。フォーカスのライバルはCセグメントに分類されフォルクスワーゲンのゴルフやプジョー308、ルノー・メガーヌ、マツダ3(アクセラ)などであるが、このフォーカスはグローバルに単一車名で最も量販されているモデルでもある。

日本ではそれほど目立つ存在ではないが、実は世界中で売れているモデルなのだ。その理由のひとつに、運転のしやすさや、乗り心地のよさも含まれているだろう。もちろん価格も戦略的であるに違いないが、日本ではその方程式には収まらないため、一般的な印象とは少し異なる。

感心させられた運転のしやすさを具体的に示すとすれば、素直なハンドリングなことだ。操舵スピードと同速で回頭し、舵角通りにノーズが動き、ダイアゴナルロールの動きをしながらリヤの追従性も高く、常にドライバーは安心感を持ちながらカーブを曲がることができる。直進しているときの安心感と変わらず旋回するというフィールが得られるのだ。

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スロットルの開閉に関わらず、常に操舵方向にクルマは進もうとし、途中でブレーキを掛けたとしても、まるで挙動に変化は起きない。常にハンドルを切った方向に動く。微妙な弱アンダーなのだろうが、限りなくニュートラルに感じさせ、高速の下り、大きいアンジュレーションのS字という厳しい状況でも姿勢を乱すことなく走り抜けるのだ。レベルが高い・・・高すぎる。<次ページへ>

直進性においても座りがよく、長時間・長距離でも気を使わずに済むので疲れないし、安心感も高い。ちょうど試乗のタイミングが大雨の状況で、いたるところに水溜りや川ができるような悪コンディションであったが、高速もワインディングもドライ路面を走る場面とまったく変化なく普通に走ることができる。

この普通に走ることがじつは凄いことなのだが、普通すぎて分かりにくいかもしれないが、ひとたびハンドルを握ってもらえば「運転しやすい」と感じることを保証しよう。

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タイヤサイズは215/50R17。足周りの仕上がりも上々で乗り心地もいい

乗り心地でも満足度が高い。装着するタイヤは215/50R17で、このサイズを見事に履きこなしている。サスペンションもよくストロークし、大きな入力も丸くいなす。また、ステアリングのダイレクト感も程よく、タイヤへの横力や無駄な振動などは伝えず、接地感やコーナリングフォースなどを感じられるようなフィールを作っているのも素晴らしい。これはセグメントナンバーワンだと思う。

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ある意味フォーカスは走りのスポーティさやハンドリングオタク的な要素があり、高級感やしっとり感などのプレミアムモデルが持つ世界には足を踏み入れていない。当たり前だが、量販モデルであり、誰もが乗り易い、使い易すいを目指しているモデルだからであり、それでもプレミアムモデルだけが持つフィーリングのよさをこのフォーカスは持っていると言っていいだろう。

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トランスミッションは、フォード・ゲトラグ製の6速DCTから6速ATへと変更されている

新しくなった1.5Lターボと6速ATミッションも、このハンドリングと見事にマッチングしている。NAのようにナチュラルに加速し、また低回転のトルク感もしっかりある。ATは滑らかにシフトするし、パドルシフトの反応もいい。従来よりもパワー・トルクともにアップしているので、よりワインディングを楽しめるようになった。

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国内では、VWゴルフがCセグメントの絶対王者として君臨しているが、ちょっと地味目ではあるが、セグメントトップの仕上がりだと思う。これに高級感やプレミアム感が加わると、もはや量販モデルではなく、一つ上のクラスにアップグレードしてしまうほどのレベルなのだ。

また先進の安全技術も搭載し、自動並列、縦列パーキングアシスト機能やレーンキープ、自動緊急ブレーキなども装備。フロントスポイラー、サイドステップ、大型リヤスポイラーも全車標準装備で、見た目にもスポーティさが増している。

ボディサイズに変更はなく、全長4385mm×全幅1810mm×全高1470mmで、ホイールベース2650mm。グレード構成は2グレードで、上級グレードのSport+EcoBoostが349万円(税込)となり、SportEcoBoostが309万円(税込)という価格設定になっている。このフォード・フォーカスは、2015年10月3日から発売される。運転が好きな人はぜひ、試乗してみて欲しい。

フォード公式サイト

COTY
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