【フォード】エコスポーツ試乗記 フォードが投入するコンパクトSUV レポート:髙橋 明

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人気のBセグメントSUV、コンパクトクロスオーバーに投入されたフォード・エコスポーツ

BセグメントのSUVモデルが熱い。量販を使命とされるモデルが各社からリリースされ、フォードからも「エコスポーツ」が導入された。早速試乗してきたのでそのレポートをしよう。なお、販売開始は2014年5月31日からとなっている。

◆ポジショニング
コンパクトSUVのブームが世界中で巻き起こっている。SUVはもともとアメリカで人気が高まり世界中に広まっていったが、コンパクトクラスのSUVは欧州が発信源となって広まってきている。ところが大型車が多いアメリカでもコンパクトクラスのSUV人気が意外とあるらしい。

日本においてもホンダからヴェゼルが、スバルからXVが発売されたように、グローバルで戦うにはコンパクトSUVは必須アイテムだ。そして大量に販売しなければいけないという使命を持ったモデルばかりで、フォルクスワーゲンからはクロス・ポロ、プジョー2008、ルノーキャプチャーらがあり、フォードはエコスポーツでグローバル展開が始まっている。ただし、このエコスポーツは北米での展開はない。

B、Cセグメントはそもそも量販を前提としたセグメントであるが、そこにBMW MINIに代表されるプレミアムモデルが加わり、ドイツ御三家がこのクラスに参入してきた経緯がある。しかし、フォードはあくまでも従来の大衆量販クラスの位置づけで、Bセグメントにおいてはグローバルの販売目標を2015年までには200万台の販売という数字を掲げている。

その目標達成の中心となるのはフィエスタだが、今回その後押しの役目としてエコスポーツが加わったことになる。また、フォードのSUVとしては2013年の販売はグローバルで120万台を販売し対前年比+30%の伸び率だという。

エコスポーツの生産拠点はブラジル、中国、タイ、インドで生産され、日本に輸入されるのはインドのチェンナイ工場で生産されたモデルとなる。フォード・ジャパンではインド工場からの輸入は初めてとなるが、1996年に1000億円投資して設立している。また、今回のエコスポーツの生産に合わせ140億円かけて改修し世界50カ国以上に生産車を輸出する輸出基地としての機能を持っている。ちなみに欧州で販売されるエコスポーツも、このインド・チェンナイ工場産である。

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フォード・ジャパンはこのモデルの特徴を、「扱いやすいコンパクトサイズ」、「力強さと躍動感を融合した”SUV”」と説明しており、量販モデルであるがゆえにコンパクトカーの王道とも言うべき特徴でアピールする。多くの人が乗りやすい、扱いやすい、好ましい、といったフィールを得やすいようなモデルというとこを強調している。

一方で、エコスポーツはSUVという表現をしているが、国内導入モデルには4WDの設定はなくFFモデルのみで、日常での使い勝手の良いパッケージングやデザインを重視したクロスオーバーSUVという捉え方でいいだろう。

また、生産拠点から推測すれば、エコスポーツは途上国での販売台数を増やす狙いだと思う。欧州、アジアがメインマーケットで、特に中国や東南アジア、中央アジア、南米といった地域が重視されているモデルなのだろう。

さて、このエコスポーツは5ドアのBセグメントSUVカテゴリーで、国内に導入されるモデルはTitanium(タイタニウム)だけのモノグレードになっている。価格は税込み246万円(8%消費税込)ボディサイズは全長4195mm×全幅1765mm×全高1650mm、ホイールベースは2520mm。一方、1クラス上のクーガの室内サイズと比較してみると、ヘッドスペースは991mmで同等、レッグルームの前/後では、エコスポーツが1090/939mm、それに対しクーガは1027/934mmと逆に広くなっている。

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室内スペースは1クラス上と同等というスペックを持つ

搭載するエンジンは1.5L自然吸気のデュラテックエンジンで、吸排気独立バルブタイミング機構を持つオールアルミエンジンとなっている。出力は111ps/140Nm。これにゲトラグ・フォード製の6速DCTを組み合わせている。燃費はフォードSUV史上最高の14.5km/Lという省燃費になっている。

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14.5km/Lという低燃費をマークする1.5Lエンジン

プラットフォームはフィエスタと共通のグローバルBプラットフォームだが、シャシーはSUV用に専用にチューニングした仕様となっている。また電動パワーステアリングにはドリフト補正機能とアクティブニブルコントロールという機能が装備されている。

これは、ハンドルの微小なブレや振動を感知して、それをシームレスに打ち消す制御を行なうものと、路面の凸凹や左右に振られる変化をモニターしながら、強い横風や路面のうねりなどによるステアリング微調整の労力を補正・軽減する機能であり、ドライバーには無駄なインフォメーションを感じさせない装備ということになる。そして、ボディはクラストップレベルの高剛性ボディとしており、Aピラー、Bピラーには1300MPaという高強度、高剛性で軽量なボロンスチールを採用するなどしている。

◆インプレッション
乗り込んで最初に感じるのはボディの堅牢性、高剛性な感じを味わう。走りだすとフィエスタとは随分とフィールが異なるチューニングがされていると感じる。装着するタイヤが205/60-16とエアボリュームのあるタイヤのため、非常に乗り心地がよく、気持ちいい。最近は輸入車の多くがアジリティを追及しスポーティ指向が強く、乗り心地の固いものが増えているが、エコスポーツには、ホッと安心する乗り心地が味わえる。

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それに伴い、ステアリングのレスポンスもサスペンションもアジリティな味付けではなく、誰もが安心して操作できるようなフィールとしている。サスペンションはストローク感があるがロールは少なく安心してコーナリングできる。ステアリングの反応も過敏ではなく、かといって鈍感でもない。フィエスタの印象と比較してしまうと大きく異なる印象なのだが、ポジショニングを考えればちょうどいいところにセッティングしていると思う。

ハンドルの操舵は軽く、女性でも抵抗なく軽々と操作できる。最小回転半径5.5mは決して小さくはないが、取り回しのよさとして感じる部分だ。フロントの視界ではヒップポイントが高いため、見通しがよく安心感が高まるものの、目の前のワイパーブレードが視界に入り、少し残念。

シートは座面の後傾角を調整する機能がないため、ジャストフィットするポジションが見つからなかった。フィエスタではシートの素晴らしさを訴えたが今回はクラスレベルという印象。また、ハンドルのチルト&テレスコピックは装備していた。

エンジンは1.5Lの自然吸気エンジンで、111psなりの走りだ。ただNVHには拘って生産しているということだが、ボンネットからのエンジン音はそれなりに室内に入り込む。

パワーステアリングに装備されるドリフト補正機能とアクティブニブルコントロールだが、ドライバーには分かりにくい。つまり、それは正しく機能しているということだろう。未舗装路を走るときにハンドルが頻繁に取られるようなことになると、神経を使うことになるが、そのような負担を軽減する。しかし、ステアリングやコラムポストを含め取り付け剛性がそれほど高いとは感じられないが、走行中に外乱による無駄なインフォメーションがないと感じるのは、これらの機能によるものではないだろうか。

エコスポーツは、直進の座りがよくふらつきがない。安心して高速道路を長時間巡航できる。もちろん一般道でも路面のうねりなどによる影響が少ないため、気づかないが楽に運転できているのだと思う。言われてもなかなか分かりにくい機能だ。

リヤゲート
テールゲートは横開き式

 

タイヤ
スペアタイヤを背負うスタイル。いかにもクロカンらしいデザインアイコンだが好みが分かれる部分でもある

 

エクステリアやインテリアのデザインではキネティックデザインの流れを汲み、線の強さがあり、コンパクトカーながら力感のあるデザインをしている。プジョーやルノーなどとは明らかに路線の異なるデザインだと言える。しかし、背後に背負うタイヤは好みが分かれる部分だろう。4WDっぽくクロスカントリーをイメージする人もいれば、武骨と感じるかもしれない。このあたりでもプジョー、ルノー路線とは違うベクトルだと感じる。新興国需要を考慮すればランフラットや超扁平タイヤの採用も難しく、修理の容易な従来タイプのタイヤを装備することは不思議ではない。

フォードの量販車の特徴は、尖った性格の製品は少なく誰もが安心して安全に乗れるというオーソドックスなモデルが多いと感じる。とはいえ走る、止まる、曲がるという基本性能のレベルは高く、しかも高いレベルでバランスしているということも特徴だろう。このエコスポーツも同様に基本性能は高いと感じられ、個性という点ではデザインが主役というモデルなのかもしれない。

■フォード・エコスポーツ主要諸元

■フォード・エコスポーツ価格表

エコスポーツ価格表

フォード公式サイト

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