【フォード・ジュネーブモーターショー2012】1.0Lエコブースト。急激なダウンサイジングをプレゼンテーション

フォードは、ジュネーブショーで環境性能技術をアピールした。コンパクトMPVの「B-MAX」、ミドルクラスのクロスオーバーSUV「クーガ」、スポーツクーペの「フィエスタST」、ミニバンの「トゥーネオ・カスタム・コンセプト」、そして今後の主力となるダウンサイジング・エンジンの「1.0Lエコブースト」エンジンなどを取り揃えたのだ。

B-MAXは2011年のジュネーブショーにコンセプトカーとして出展されたが、今回は量産車としてのワールドプレミアになった。グローバルBプラットフォームを採用するフィエスタをベースにしているが、BセグメントのMPV(フォード呼称=コンパクト・マルチアクティビティ・ビークル)として新しいデザインで誕生している。

クラストップの使いやすさを追求し「イージーアクセス・ドア」と呼ばれるフロントの大開口ドアとセンターピラー一体式のリヤスライドドアを採用するなどして、自転車も楽に搭載できるのが大きな特徴だ。そして、前後のドアには超高張力鋼のボロン鋼が採用し、ボディ全体では58%が高張力鋼以上の材料が採用されていると言う。

ボディ全長は4000mmを少し超え、フィエスタより110mm長く、フォードC-MAXより320mm短い。まさにBセグメントのサイズとし、最大級のパッケージングを追及しているのだ。

デザインテーマは、コンパクト、スポーティ、スタイリッシュの実現だという。装備では、ボイスコントロールできるインターネット接続システム「SYNC」やGPSの装備などで先進性をアピールしている。また、低速走行時に作動する衝突回避システム「アクティブ・シティストップ」も装備する。

B-MAXはFF駆動のみであるが、スポーティな走りを実現するために、4輪に自動ブレーキ介入することにより駆動トルクを配分するトルクベクタリングコントロールを採用し、優れたトラクションと俊敏性を向上させている。

B-MAXのパワートレーンは、クラストップの燃費を狙っており、ガソリンエンジンは3気筒1.0Lターボのエコブーストを搭載している。このエンジンは100psと120psの2仕様が設定され、いずれもスタート&ストップ、ブレーキエネルギー回生を装備し、120psエンジンで4.9L/100km 、114g/kmというスペックを達成している。

ガソリン・エンジンはその他に、4気筒の1.4L・デュラテック(90ps)、1.6Lデュラテック(105ps)で、これらには6速DCTが組み合わされる。また、ディーゼルは2種類のデュラトルクTDCiを設定。1.6Lの95psエンジンの燃費は4.0L/100km、104g/kmとクラストップである。さらに、1.5L/75psのエンジンも近いうちに追加される予定だ。

ワールドプレミアとなったクロスオーバーSUVの新型クーガは、斬新なデザインと大容量のキャビンに加え、新技術も満載している。装備では、新開発のハンズフリー自動テールゲートを新採用している。これは足の先をバンパー下面にかざすと、テールゲートが自動開閉するシステムだ。またB-MAXと同様にSYNCやGPSも装備。ドライバーアシストとしてはパーキングアシストやブラインドスポット・インフォメーションも備えている。

オンデマンド4WDシステムは、瞬きより20倍も速い反応速度を誇るという。またトルクベクタリング・コンコントロールも装備し、ダイナミックな走りを生み出している。

エンジンのラインアップはディーゼルが2.0LのTDCiに140ps、163psという2種類の設定があり、ガソリン・エンジンは1.6Lのエコブーストが搭載される。なおこのクーガの発売は2012年末の予定だ。

フォードの環境性能チャンピオンカーとして、フォード初のEV,フォーカス・エレクトリックも登場した。リチウムイオン電池の容量は23kWhで、3時間から4時間で満充電できる性能を持ち、航続距離は160kmとしている。なおEVとはいえ、5ドア・ハッチバックとしての利便性やフォーカスらしい俊敏なハンドリングもそのまま取り入れているという。

トゥーネオ・カスタム・コンセプトは、1tクラスの商用、FF駆動のマルチバンのコンセプトカーとされているが、市販間近の完成度である。販売地域はヨーロッパとアジアとされている。

8座席シートを備え、乗用車と同等の走りや快適性、ラグジュアリーな内装、ドライバー重視の運転席などを取り入れ、エグゼクティブのためシャトルサービスの使用にも適合するという。もちろんリヤシートは可動式で、多用途性を備える。ドライバーアシストや低燃費技術もフルに盛り込まれ、搭載エンジンは、2.2Lのディーゼル、デュラトルクTDCiが計画されている。

ボディは標準ホイールベースとロングホイールベースの2種類を設定している。なおフォードは2012年末には後輪駆動のより大型トランジットカーを発売する計画で、このモデルはアメリカでも販売されるという。

新型フィエスタの高性能スポーツモデル、フィエスタSTもベールを脱いだ。フィエスタSTは2011年のフランクフルトショーでコンセプトカーとしてベールを脱いだが、今回は3ドアの市販モデルとして発表された。

エンジンは直噴ターボの1.6Lエコブーストを搭載し、180ps/240Nmを発生する。STのシャシーはフォード・チームRSにより開発され、俊敏なコーナリング性能や正確なステアリングを実現しているが快適性も兼ね備えている。STのためにフロントキャンバーやリヤのトーションビームも専用チューニングされ、車高も15mmダウンされている。また進化版のトルクベクタリング、eTVCも備えている。

ジュネーブではフォードのダウンサイジングを代表する、新開発の直噴ターボの3気筒・1.0Lエコブースト・エンジンも注目を集めた。アーヘンにあるドイツ・フォード開発センターが中心になり、イギリス・フォード開発センターが協力して開発され、製造プラントはドイツの新工場というオール・ドイツ製のエンジンだ。ケルンの新製造プラントのために1億3400万ユーロが投入され、年間35万基の能力を持っている。さらにルーマニアの新工場が今年中に稼動し、年間70万基の製造能力に達するという。最終的には全世界で年間130万基の供給体制を整える計画だ。

1.0エコブースト・エンジンは、最初にフォーカスの2012年モデルに搭載され、次にB-MAX、C-MAXに採用される。このエンジンの出力は100psと125ps仕様の2種類が設定され、100ps仕様を搭載するフォーカスの場合で4.8L/100km、109g/kmとクラストップの燃費を実現している。最大トルクは1400rpm?4500rpm(100ps仕様は4000rpm)と低回転からのフラットルクの特性を生み出す。このエンジンは自然吸気1.6Lを上回る性能を備えているのだ。

DOHC・12バルブのレイアウトをを持つこのエンジンのボア・ストロークは71.9×82.0mm。ボア間肉厚は6.1mmときわめて薄い。シリンダーヘッドは排気ガスマニホールド一体型のデザインを採用しており、またヘッドとシリンダーは2系統冷却システムとしている。エンジン内部は低フリクション化が徹底され、カムベルトはオイル潤滑式で、オイルポンプも可変容量式を採用。

超小型ターボの最高許容回転数は24万8000rpmで、慣性モーメントを最小限にしている。またTi-VCT( 吸排気カム可変バルブタイミング)を装備。直噴インジェクターの燃圧は150bar。この1.0エコブーストはここ当分はダウンサイジング・エンジンの象徴的な存在になりそうだ。

フォード公式サイト

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