クルマの常識を覆す!BMWのニューフラッグシップ「iX」試乗記

BMWの電動化フラッグシップ「iX」に試乗してきた。iXは2018年のパリモーターショーでコンセプトモデル「ビジョンiNext」としてワールドプレミアされている。この時点ではBEVにとどまらずFCVの可能性もあったが、欧州、とくにドイツのバッテリーEVの潮流がありiXはBEVとして発売されたわけだ。

試乗モデルはiX xDrive50で、スポーツアクティビティヴィークルSAVのボディで、車両本体価格1116万円。試乗車にはオプション273万8000円が装備され合計1398万8000円のモデルだった。またバッテリー容量やモーター出力を抑えたiX xDrive40モデルあり、こちらは981万円、そしてMモデルのiX M60も現在はラインアップされている。

ボディサイズは全長4955mm、全幅1965mm、全高1695mmのSUVで112kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。航続可能距離は650kmとロングだ。モーターは前後にそれぞれ搭載し出力は385kW(630ps)/765Nmと弩級の出力を持っている。BMWでいえばM8と同等。フォーミュラEマシンが250kWで競うレースカーでそれを遥かに凌ぐことがわかる。

BMW iのiXは次世代提案型のモデルで「i」のコンセプトは2007年にまで遡る。そして2014年にi3が国内導入され、2021年このiXが発表されている。BMWは、2030年までにグローバルでBEVを50%にする目標で、このiXをニューフラッグシップに位置付けている。iXには最新のサービス、完全な電動化、次のレベルのコネクティビティを持ち、全く新しいラグジュアリーの定義としているのだ。つまりクルマの常識を覆す新しい価値観作りをしているモデルというわけだ。

ちなみにLCA(ライフサイクルアセスメント)での製造でも、iXは水力発電で電力を賄うドイツ・ディンゴルフィン工場で生産され、使われる材料にもスウェード調の人工皮革で東レのウルトラスウェードを採用している。さらに、ウッドパネルは森を守る森林認証制度のFSCによる適切な伐採で得られた木材を採用するなど環境配慮型の次世代モビリティとなっているのだ。

さてドアは、窪みに指先を入れ握り込んで開けるタイプ。開けるとサイドシル、Bピラーのカーボンが見える。が、i3のようにカーボンモノコックではなく、アルミや高張力鋼板、熱可塑性樹脂、CFRPも使ったコンポジットで、部分的にカーボンで覆うような演出がされている。

シートはヘッドレスト一体型デザインで、高級ラウンジのように豪華なシートを装備。そして目に飛び込むのが六角形のステアリングだ。iXはパワートレイン、デザイン、生産方式など全てにおいて革新的なモデルなのだが、このステアリング形状には驚かされる。が、運転してみると違和感はあまりなく、というか、大舵角を繰り返すような場所を走行していないからか、一般的な走行範囲ではフツーに感じた。

メーターパネルと操作パネルは一体化され、湾曲したディスプレイで表示。ダッシュボードまわりはスッキリしている。このタッチ式操作パネルの採用で、物理スイッチは少なくセンターコンソールにあるダイヤル式のiDriveコントローラーは、BMWオーナー馴染みの機能として存在している。

サスペンションは22インチの大径タイヤを装備し、アダプティブ エアサスペンションが乗り心地を担保する。走行状態に合わせ、常に最良の地上高を保ち、乗り心地、敏捷性、安定性などを高いレベルでバランスさせることができる。また、ドライバーによる任意の切り替えも可能で、例えば、Sportモードへの切り替えで、ダンパーを固くし車高を下げればスポーツ走行に適した特性となり、さらに車高をハイ(+20mm)、ロー(-10mm)を設定することもできる。

また前後輪統合制御ステアリング システムのインテグレイテッド アクティブステアリングを標準装備し、走行状況に応じて、後輪を積極的に操舵させることで街中での取り回しやスポーティな走りを生み出すことができるのだ。じつはこの四輪操舵は各社が開発をしているものの、ドライバーには違和感があるため、世に出ては消え、また出てくるという歴史を繰り返している技術なのだ。だが、今回、初めて違和感を感じなかった。

というよりリヤが操舵されている感触が、一般道、高速道路の走行時にはほぼ感じない。高速旋回やタイトコーナーという条件がなかったからか、従来の4WSでは街中でも違和感があるものなので、新しい世界が誕生しているのかもしれない。

もはやボンネットは開かないのだ。ウインドゥウオッシャーの補充はここから

特筆はパワーだ。レスポンスの良さと高出力には新たな世界が存在していることを感じた。エンジン車で中間加速をするときはシフトダウンがあり、エンジンの回転が上昇しながらトルクもアップする、車速もそれに従い加速するがiXは瞬間的に車速が跳ね上がるのだ。CVTでは常にトルクバンド内にある仕組みだが、これほどの大パワーに対応するCVTは存在しない。

iXはシフトダウンはないし、モーターの回転上昇を待つことなく瞬時に最大トルクを発揮するため、車速も瞬時に上がることを体験する。例えばクルマの間を縫うように走ることがエンジン車ではできない車間、速度差でもiXでは可能になることが理解できるのだ。それでいてサスペンションのしっかりした、そして乗り心地がよく、静粛性が高いというまさに全てが革新的であり、新しいラグジュアリーを体験できるモデルだった。<レポート:高橋アキラ/Takahashi Akira>

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