【BMW】BMW i8 Specialist海外試乗 新しいスーパーカー像をi8に見た レポート:佐藤久実

マニアック評価vol274

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i3に続くBMW iシリーズの第二弾i8は、ハイブリッドスポーツカーだ

BMW第三のブランド「i」から、電気自動車「i3」が登場したのは記憶に新しい。今回、第2弾となる、21世紀のハイブリッドスポーツカー「i8」の国際試乗会が、アメリカ・ロサンゼルスで開催された。

「i8」は造り方からパッケージング、使用材料など何から何までとにかく革新的な技術が駆使されており、従来のスーパースポーツカーのコンセプトや常識を刷新するクルマと位置付けられる。

◆パッケージング
まずはそのパッケージングからご紹介しよう。フロントに96kW(131ps)のモーター、リヤに170kW(231ps)の3気筒ターボエンジンを搭載し、リチウムイオンバッテリーはセンターコンソール&トンネル部分、燃料タンクはリヤシート下にレイアウトされたプラグインハイブリッドカーだ。モーターはフロント、エンジンはリヤを駆動する。つまり4輪駆動システムとなっているのだが、フロントとリヤをコネクトするのはソフトウェアのみで機械的な接続はない。

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i8はカーボンモノコックのアッパーボディと総アルミ製のシャシー/バックボーンという構成のため車両重量は1480kg、重心は460mm以下と相当に低重心となっている。電気モーターとバッテリーによる200kgの重量増を相殺するため、1gでも軽くしようということで、アッパーボディは全面的にカーボン素材と樹脂製のアウターパネルが採用されている。

一見して、未来的な印象を受けるスタイリングだが、こんな斬新なデザインであっても、また新たなブランドであっても、「キドニーグリル」によりBMWであることは一目瞭然だ。また、クルマの四隅にタイヤがあり、2800mmというロングホイールベースになっているのもBMW本来のクルマ造りの基本思想を体現している。

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ボディには高効率をイメージさせるブルーリボンがあしらわれ、翼のような形状のサイドミラー、ルーフラインやサイドのキャラクターラインからは空力性能の高さが視覚的にも窺える。ドアは開けると上方に跳ね上がるスイングアップ式だ。高さも幅もあるサイドシルとヒップポイントの低いシートのせいで、乗降性はお世辞にも良いとは言い難い。油断すると思わず「よいしょっ」と言うコトバが漏れてしまう…。が、スポーツカーであるという大前提、そして骨太感から得る走りに対する期待値の方が不便さよりも遥かに大きい。特殊なドア、一手間かけて乗り込むことが、「新たなスポーツカーの世界に誘う扉」とでも言わんばかりだ。

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乗り込む際には少々の手順があるが、そうした手間もスーパースポーツらしさと言える

インテリアは、カーボン素材を意図的に見せている。パッケージングやカーボンモノコックは事前に説明されているからわかっているものの、実際にはこのインテリアを眺めることで、直感的に持続可能性やライトウェイトを実感することとなる。

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リヤシートはエマージェンシーシートと割り切りたい
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細部にわたって未来デザインを演出する

 

リヤシートは、シートバックが直角に近い感じだ。10~15分ほどリヤシートに乗る機会があったが、長距離ではちょっと厳しいスペースだ。やはりi8の基本は2シータースポーツカーで、リヤシートのスペースは広い荷室空間がある、あるいはエマージェンシーシートと理解した方が良いだろう。スポーツカーだもの、これくらいの割り切りはむしろ潔い。

◆インプレッション
BMW i8はさまざまなドライブモードを持つが、試乗会場からまずは電気モーターのみでフロントアクスルを駆動する「eドライブ」モードで市街地走行をスタートした。スポーツカーでありながら無音でスムースに走る感覚は不思議でもあるが、他モデルのピュア電気自動車には、もう我々は慣れがあるので違和感はない。i3ではかなり積極的に回生を効かせており、アクセルを戻すとフットブレーキを必要としないほどの急激な減速感があったが、i8のドライバビリティは加速感やアクセルを戻した時の減速感など、従来のエンジン車とまったく違和感なく運転できるようになっていた。

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これは、モーター駆動時とエンジン駆動時のドライブフィールを同じにするための意図的なチューニングだという。もちろん、ブレーキペダルも回生時と回生されていない時で、タッチは変わらない。というか、差がわからない。ペダルやステアリングの操作系も適度な重さで、視認性も問題なく、街中でも運転しやすい。

キュッと締まった乗り味でストローク感はほとんど感じないが、不快感はない。おそらく、カーボンモノコックによる剛性の高さや低重心が効いているのだろう。従来からBMWは「低重心」を謳っているが、i8の成せるワザはその比ではない。ホント、何でこんなに締まっているのに乗り心地にカドがないのだろう…と不思議に思うほどだった。

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Eドライブモードでは、120km/hまでモーターのみで走行できる。航続距離は条件によるが、試乗時は約30km弱

それにしても、BMW i8の注目度は凄い。信号待ちで止まれば隣りのクルマのドライバーから声をかけられるし、パーキングに止めれば人が集まってくる。そして、超高級車が普通に路上駐車されているロデオドライブでさえ、熱い視線を集め、しばしば被写体となった。

郊外に出ると、コンフォートモードに切り替える。このモードはモーターでスタートし、ブレーキング時はエネルギー回生を行ない、そして65km/hを超えるとエンジンで駆動する。エンジン駆動になるとさらにサプライズがあった。3気筒エンジンがこんなにもスムースだなんて。もっとも、従来の3気筒エンジンといえば軽自動車や小型車をイメージする。つまり、いかに安く大量に造るかと言うことにプライオリティが置かれている。しかし、i8の3気筒エンジンは、「BMWの持てる技術をすべて投入した」だけあり、従来の認識を覆す性能であった。

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さらに、ワインディングに入り、スポーツモードをチョイスしてエンジンを回すとスムーズさに加え、なんと気持ちよいサウンドを奏でるではないか! サウンドエンハンサーが装備され、音まで創り込まれているのだ。うーん、恐るべしBMW。

シフトレバーを倒してスポーツモードを選ぶとインパネ表示が赤くなり、まずは視覚的に刺激される。エンジンやモーターの立ち上がりトルクがダイナミックになり、アクセルレスポンスも高くなる。4WDシステムになっているのでコーナリング時は、路面状況に応じて前後のトルク配分を制御する。コーナー進入時にはリヤ寄りにトルクを配分してステアリング精度を高め、立ち上がりは通常のトルク配分に戻すという具合だ。つまり、コーナリング中は常時前後にトルクがかかる4WD状態で、トルクベクタリングも備える。

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なのだが、実際にステアリングを握っているとFR的なドライブフィールであり、「駆け抜ける歓び」がある。正直、市街地や郊外を走っている時にはi8には新鮮さはあるものの、アドレナリンが湧き出るようなエモーションはないかな、と思っていたのだが、ワインディングでのスポーツモードは十分なドライビングプレジャーが感じられる。

ただ、テストした道路は制限速度25~30mph(約40~50km/h)で民家も点在する狭い道路だったので、是非とも本気の走りを試してみたいと思った。開発エンジニアいわく、「サーキットを走るクルマではない。それはMモデルでどうぞ」とのこと。それは百も承知の上で、やっぱり思いっきり走ってみたい! と思わせるクルマだ。

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新しいスーパーカー像をi8に感じた佐藤久実氏。「思い切り走ってみたい」とその魅力にとりつかれた

i8にはさまざまな走行モードがあり、ハイブリッドは複雑な制御をしているが、ステアリングを握っていて違和感や煩わしさは一切ない。効率のために、ドライバーに我慢や妥協を要求しない。むしろシチュエーションに応じた適応性が見事だと思う。

見て、走って、まったく新しいコンセプトのスポーツカーを体感したが、BMWのiブランドの取り組みの素晴らしいところは、単に車両造りに限定されていないところだ。新たな工場を造り、カーボンファイバーの生産や車両組み立てに必要なエネルギーのすべてを再生可能エネルギーによる発電でカバーしている。リサイクルも含め、クルマの生涯で「サスティナビリティ」を追求している。そういうことも含めて、BMW i8は新しいスーパーカー像を創り上げていると実感した。

BMW i8主要諸元

■BMW i8価格表

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BMW公式サイト

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