EVラリー 乗鞍スカイラインを走ったぞ~~編集長高橋 明談 day1 ドライブマップ付き

2016年の6月20日、一通のメールがタカハシのPCに届いた。「ジャパンEVラリー2016取材のご案内」という件名。例年日本EVクラブが主催する電気自動車によるラリーイベントで、メールを開封し文面を確認すると、なんと!「乗鞍スカイラインを走破する!」という文言がある。ご存知の人も多いだろうが、乗鞍スカイラインは自家用車の乗り入れを禁止しているエリア。もちろん、環境保護のために自動車の排気ガスから守ろうという取り組みが実施されているエリアだ。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

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その乗鞍スカイラインを電気の自家用車なら走れる!という内容なのだ。環境保護のためにこれまで、国や県、市などの行政機関が自家用車の乗り入れを禁止していたのだが、このイベントに限って通行を許可したというビッグニュースだ。

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タカハシのアシとなるBMWからお借りしたi3。いざ出発

さっそく事務局に取材申請を行ない、ラリーに同行取材させてもらう手筈を整えた。事務局からは「タカハシさんはEV車あります?」との質問。「フツー持ってないだろう・・・」と脳内でつぶやきつつ、
「いえ、クリーンディーゼルです」と答える。
「それでしたら、乗鞍スカイラインを走るための車両運搬を兼ねて、BMWi3を東京から乗ってきてくれませんか?」という提案。
「お!意外な展開」
「はい、大丈夫です。乗って行きます」
もちろん、何も問題ない。BMWi3はエンジン付きのREX、レンジエクステンダーなので、長距離移動するときは、このエンジンの存在が精神安定剤の役目も果たしている。

こうしてしてタカハシは取材という立場から参加者へと立ち位置が微動したのである。

◆高速移動じゃつまらい
このEVラリーはスピード競技のラリーとは違い、「ある目的のために集う」という意味でラリーという用語が使われている。だからゴールの白馬、乗鞍、奥飛騨、高山まで参加者は思い思いのルートで、ドライブを楽しみながら参集するのだ。

免許取り立ての頃を思い出すと、特に目的もなくただひたすらクルマを運転して「どこかに向かって走る」ことがあった。そう、どこかに向かってたのだ。クルマを運転することが大好きで、自由きままに、いつでもどこでも行けるというクルマの魅力に憑りつかれていた少年だった。

「どうせ参加するなら、いろいろ寄り道しながら、目的地に向かっていこうか?」という18歳のタカハシを懐古する思いが沸き、事前に道路地図を眺めながらルートの算段に入った。

◆朝の渋滞
7月の3連休、夏休み突入という初日。横浜の拙宅から初日のゴール白馬を目指す。普通であれば東名横浜から厚木ICで圏央道に乗り、中央高速を経由して安曇野近辺から白馬を目指すのが一般的だと思うが、これまでの経験から東名は朝6時半から渋滞が始まるから、まずは6時に出発して東名の大和トンネル付近の渋滞を避ける作戦。

「が~ん」電光掲示板には圏央道八王子JCT付近が15kmの渋滞と出ている。東名は予定通り渋滞する前にすり抜けたものの、その先が渋滞なので想定外。いや、IOTの時代だというのに、使いこなせていないが故の凡ミスか。

「高速道路は時間を短縮するためのツール」という認識が心の奥底にある18歳のタカハシとしては、行楽客に紛れて渋滞にハマっている姿が許せない。どうせ時間がかかるなら下道がいい。「景色はあるし、季節もある。地方へ行けば広告看板も面白いものがある」とても18歳にはない思考だが・・・

ということで圏央道には乗らず、御殿場まで突っ走った。BMW i3は電気自動車でバッテリー充電のためのエンジンを搭載しているクルマ。燃料タンクはわずか9.0Lという容量だから、「急な目的地変更で大丈夫か?」つまり、急速充電やらガソリンスタンドの有無が心配。しかし、ナビ画面にはそれらのポイントが常に表示されているので、少しは安心感がある。

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高速出口看板を見つけて、「電欠しなくて良かった」と安堵の瞬間

御殿場からは138号を通って東富士五湖道路を経由し中央道に乗る。ここまで一切渋滞はない。順調だ。
がしかし、電気不足とガソリン不足のピンチが訪れたのが大月付近。
「笹子トンネルで電欠・ガス欠したら大渋滞を引き起こすだろうなぁ」という不安がよぎる。
「え~い、行ってしまえ!」と大月では降りず、勝沼まで引っ張った。18歳のタカハシは思慮が足らず勢いだけだ。

国道20号に降り立ち最初のGSサインは「右に曲がれ700m」の看板。腹を空かした子猫のように、その看板に飛びつき路地を曲がる。
その先に、確かに田舎のスタンドがあった。祭日だけど営業中で中からおばさんが出てきた。もちろん普段着。チェーン店のユニホームなど着ていない。

「ハイオク満タンお願いします」
「このクルマ何?」という怪訝な視線を感じながら給油量は8.80L!
「あれ? 入らないねぇ」と給油口をのぞき込むおばちゃん。
「これ、電気自動車なんで、ガソリンは少ししか入らないんですよ」と説明しつつ、残り200ccだったという奇跡に近いオレの勘にほくそ笑む。

◆清里へ
これでばっちり充電もできるので、ひと安心。
再び中央高速に戻るのもつまらないので、18歳のタカハシは再び目覚め、ここからは下道で八ヶ岳へ向かう。
国道20号から甲府市街を抜ける。国道沿いは全国展開する大型チェーン店が軒を並べている。牛丼店、回転ずし、家電量販店などどこにでもある店ばかり。アメリカ的でもあるが、風情がない。

道の駅 韮崎
道の駅 韮崎

甲府から笛吹市付近で国道141号に乗り換え八ヶ岳を目指す。
すると道の駅発見!「道の駅韮崎」とある。道路を挟んだ反対側には日帰り温泉と書かれている。宇宙ステーションのような景色の道の駅だが、9時10分の時点で、開店準備中。お風呂も「9時30分」からと書かれている。朝食を食べていないので、「ここらで・・・」とは思ったものの、結局なにもないので、再び走り出した。

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道の駅 南きよさと

道の駅韮崎から走り出すこと30分もしないで今度は「道の駅 南きよさと」というのが出てきた。迷わずハンドルを右に切って駐車。
ここは、「花の社」というのがあって、ちょっとしたケーブルカーに乗って行く山頂には花の庭園があるようだ。他にもラベンダー狩りとか、ドッグラン、池には鯉が大量にいて200円で鯉のエサも売っている。ちょっとした娯楽施設だ。
レストラン?食堂に入り朝食は「信州のそばかなぁ?いやここは甲州のほうとうか?」なんてイメージを膨らませてメニューを見ると、「清里カレー」というのが名物だと書かれている。
「へ~なんで名物なんだ?」
と説明書きを読んでみるとアメリカ人のポールさんが清里で栽培した野菜の収穫を祝い、カレーを振る舞ったのが由来と書かれている。
「野菜カレーなんだ」と理解し、自販機で清里カレーのボタンをポチ。750円。
味はカレーだった。

10時前に道の駅を再スタートして清里方面へ登っていく。前方に八ヶ岳が見えるはずだがどんよりとした空からは覗けない。

野辺山付近にくると観光客がちらほら歩いている。日本最高地点の鉄道駅とか、パラボラアンテナなどが有名だが、今回はスルー。途中、単線の小海線を走る電車に遭遇したので記念にパチリ。グーグルマップでは八ヶ岳高原線となっている。改名したのだろうか。

国道141号で佐久市まで行き、142号に乗り換え。そして国道254を通るルートで松本方面を目指す。途中三才山トンネルという有料のトンネルを抜けると、もう松本市に入る。そのまま国道254号を走ると松本の市街になるので今度は143号で北上する。

そこで通りがかった日帰り温泉が良かった。
「湯多里山の神」という名前。ゆったりやまのかみ。「なんだこれ?あて字か?洒落か?」
ここは住所では安曇野になるようだった。温泉はトロッとした優しいお湯で、小さめの日帰り施設もあってか、地元の人が多そうな温泉。
450円で入湯料を払い1時間ほどリラックス。また来たいと思う温泉。あとで調べてみると、それなりに有名な温泉らしいが、連休中でも空いていたので穴場であることは間違いない。

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白馬が見えてきた。左側に五竜、佐野坂、47、八方とスキー場が連なる

安曇野まで来れば、白馬はもうすぐだ。
しかし時計を見れば午後の2時を回っている。午後4時までに白馬に集まるのが初日のタスクなので、ここからは寄り道できない。
「あ!道の駅発見!道の駅 安曇野松川 寄って停 まつかわ」というまたまた、妙なダジャレに誘われた。

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見た目からはわかないが長芋の入ったコロッケ

「そういえば昼ごはん食べていないなぁ。ここは何が名物?」と物色していると、
食堂には、信州そばの他に「長寿コロッケ」とある。
食堂のおばちゃんに「なんで長寿なの?」と聞くと
「松本の山形村は長芋が名物で、身体にいい長芋を混ぜたコロッケなのよ」という説明。
自販機で食券を買い、信州そばとそのコロッケを食べたが、
コロッケには長芋を入れないほうがいい。

そして午後4時、無事に白馬に到着した。所要時間10時間。給油は2回で15.0Lほどかな。
◆白馬47スキー場

午後5時からEVラリー参加者の表彰式があり、みんなでラリー参集の成功を祝う。何が基準で表彰されるのかよくわからんが、もっとも遠いところから来た人、とか、毎年参加している人とか、そんな感じの表彰式をやって、BBQの懇親会。

タカハシと同席になった二人は、遠距離賞を受賞した二人で鳥取からの参加者だった。しかもアコードのPHEVというなんともマニアなモデルでの参加。現行モデルなので、マニアなクルマと言ったらホンダから怒られる。だが、これは個人では買えない、行政や企業用なのでレアなモデルとなっているのは本当だ。

事情を聴いてみると、「私たちは市役所の職員で、市内でEV普及を手掛けていて、そのための勉強として参加したんです」ということだった。
裏日本ルートを使い、福井だか、富山だかで一泊してたどり着いたという話。高速区間が少ないので、かなり裏日本を満喫したことだろう。

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地元も子供たちによる、太鼓演奏で歓迎される

会場では地元の子供たちによる太鼓の演奏や、モータージャーナリストのトークショーなどがあり、その日を終了した。ちなみに今井優杏ちゃんと片岡英明さんのトークショーだった。

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右)元オリンピック選手の永井祐二さんは「ピレモン」のオーナー

タカハシは白馬に旧友が経営するペンションがあり、そこに泊まった。旧友はアルベールビル・オリンピックにエアリアルの競技で出場した経験の持ち主で、今は、犬と泊まれるペンションを経営している。また、現在はSAJというスキー連盟の仕事もしていて、上村愛子選手は小・中学校のときは指導していた経験があるのだ。そんな昔話をして初日を終えた。白馬に行かれたらペンション「ピレモン」を訪ねてみてください。充電設備もあります。つづく。Day2はこちら

COTY
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