電気的クワトロ
e-tronスポーツバックは前後2個の電気モーターによって駆動する、新時代のクワトロを採用した電動4WDです。通常は主にリヤのモーターを使用することで走行抵抗を低減し、エネルギー消費を抑制。
一方で、滑りやすい路面や急加速やコーナリング時など4WD走行が望ましいとシステムが検知した場合、フロントモーターも駆動し4WDとなります。電気モーターのトルクが立ち上がるまでに要する時間はわずか0.03秒で、従来の電子制御機械式クワトロよりも遥かに鋭い反応時間となっており、瞬時にモーターのパワーを路面に伝えることが可能です。
もちろん前後のモーター駆動トルクは連続可変制御され、ミリ秒単位で正確に制御されます。低中負荷走行時では、最高の効率を達成するためにリヤに搭載された電気モーターが使用されます。ドライバーが、より多くの駆動力を要求した場合、この電動4輪駆動システムは、必要に応じてフロントアクスルにトルクを配分します。
滑りやすい路面や高速コーナリング中にスリップが発生する前、あるいは車両がアンダーステアまたはオーバーステアの状態になる前に、予測的(フィードフォワード)制御が行なわれます。
システムが走行状況を検知して電気モーターのトルクが駆動するまでの時間は、わずか0.03秒。そのため路面の摩擦係数が突然変化したり、極端な走行状況でも、クワトロのパフォーマンスが保証されるわけです。
2個のモーターは非同期の誘導式モーターを採用し、360psのピーク出力を備え、561Nmのトルクを発生。誘導式モーターは、非通電状態において電気的に誘発される引きずり損失が発生しないため、コースティング時などには極めて効率的です。
またアルミニウム製ローターを採用することにより、非常に軽量で高い耐久性も備えています。もちろんこのモーターは、製造時にレアアースが不要となっています。
このモーターは最長60秒間にわたってピーク性能を発揮でき、静止状態から電子リミッターが作動する200km/hまでの加速を、ピークパワーを保ったまま、何度か繰り返すことが可能です。その発進加速は、スポーツカーに匹敵しています。
なおこのモーターは、短時間であれば出力を引き上げることが可能で、シフトレバーをDモードからSモードに移動し、アクセルペダルを床まで踏み込むと、ブーストモードが起動します。この状態は、8秒間継続可能です。ブーストモードでは、408psのシステム出力と664Nmのトルクを発生します。その際、フロントアクスルとリヤアクスルの電気モーターの駆動力配分は、フロントが183psのブースト出力と309Nmのトルク、リヤが224psのブースト出力と355Nmのトルクに設定されます。
アクスルと平行に設置されたフロントの電気モーターは、通常時は170ps/247Nmを発生します。リヤと同軸上に設置される後輪用モーターは、190ps/314Nmを発生。それぞれ1速ギヤを備えた2ステージ遊星ギヤボックスが、デファレンシャルを経由してアクスルに駆動力を伝達します。