最先端の回生ブレーキシステム
e-tronスポーツバックは、405kmの航続距離となっていますが、その中で30%は回生ブレーキによって距離を稼ぎ出しています。これを実現しているのが新開発のブレーキbyワイヤー技術です。
前後のモーターで得られる減速時の回生ブレーキ力は、パドル操作で行なう3種類の回生モードにより制御されます。最も低い設定では、アクセルペダルから足を離しても引きずりトルクを発生することなしに惰性走行(コースティング)を続け、電気モーターに電流は出入りすることはありません。
レベル1(バランス重視:最低限の減速)、レベル2(強力な回生:大きな減速)のモードでは、電気モーターが回生ブレーキトルクと電力を生み出します。ブレーキ回生のみで大きく減速できるため、ドライバーはアクセルペダルのみで加速と減速を行なうことが可能で、ワンペダルフィーリングが生み出されます。
また回生ブレーキ力は、パドルによるマニュアル操作だけでなく、MMI(マルチメディア インターフェイス)を経由して自動モードも選択できます。この場合、ミリ波レーダーによる前走車の検知により自動的に回生レベルが調整されます。これは、アクセルペダルを再び踏み込むまで作動し続けます。
回生ブレーキ・システムはアウディが専用開発したクワトロ回生機能を使用し、前後のモーターでどのくらいの回生を行なわせるかという判断を実行します。ドライブコントロールユニットは、前後の電気モーターに対する回生トルクの理想的な配分を、正確にかつ瞬時に計算し、ほとんどのケースでは、最も高い効率を実現するため、リヤの電気モーターがアクティブになります。
走行中にドライバーがアクセルペダルから足を離した時や、ブレーキペダルを踏んだ時の回生ブレーキ力は、-0.3Gまでの減速に対応し、これは減速時の90%以上をカバーしています。つまり、実質的に日常域のほとんどのブレーキは、回生ブレーキで賄えることを意味します。
この回生システムの能力は、きわめて効率的なため、メカニカルブレーキを使用することはきわめて少なくなります。-0.3Gを超える強い減速が発生する場合はメカニカルブレーキによる制動も行なわれます。
回生力は、100km/h走行時の減速で300Nm/220kWの電力を回生できます。これは走行に使用するエネルギー入力量の70%以上に相当するもので、これほどの高い回生率を備えた市販車は、他に存在していません。
また急ブレーキ時には、統合型ブレーキbyワイヤー コントロールシステムの利点が最大限に発揮されます。コントロールユニットは、ドライバーがどれくらいの力でブレーキペダルを踏んでいるかを検出し、瞬時に必要な制動力を計算し、回生トルクだけでは不十分だと判断した場合はブレーキ油圧装置のピストンが追加の制動圧を生成します。
電気駆動されるこの油圧ピストンは、ブレーキフルードをブレーキラインに送り込み、従来型の摩擦ブレーキを作動させます。電気と油圧ブレーキの連動はスムーズで、制動力も一定に保たれるため、ドライバーは気付くことはなく、ドライブbyワイヤー式とはいえペダルの踏み応えも最適化され、ドライバーに従来の油圧ブレーキと同様のペダルフィールをもたらすことができます。
電気油圧式アクチュエーターの採用により、高い精度で制動圧を高めることが可能で、それに要する時間は従来型システムと比較して約半分に削減。緊急自動ブレーキが発動した場合、パッドとディスクの間に最大制動圧が発生するまでの時間は、わずか0.15秒。その結果、従来型より約20%も短い制動距離が実現しています。