バッテリーの構成
e-tronスポーツバックのパワートレーンは前輪、後輪をそれぞれ駆動する2個の電気モーターを搭載した4WDシステムを採用しています。
システム最大出力は408psで、0-100km/h加速は5.7秒と強力な加速力を備えています(Sモードのブースト時。Dレンジでは6.6秒)。95kWhのエネルギー容量を持つ駆動用バッテリーにより、一充電あたりの航続可能距離は最大405km(WLTCモード)となっています。
この航続距離は、日産リーフの40kWhバッテリー・モデル(322km:WLTCモード)と62kWhバッテリー・モデル(458km:WLTCモード)のちょうど中間となっています。
95kWhの容量を持つLG化学製のリチウムイオン・バッテリーは、熱コントロールシステムを装備し、様々な環境での走行に対応。熱コントロールシステムは4つの回路系統からなり、キャビンや電装品を冷却したり温めたりするべく、状況に応じてさまざまに接続されます。
このシステムは効率的なヒートポンプとしても機能します。温度管理は、バッテリーの昇温・冷却の他に、電気モーター(ローター含む)、パワーエレクトロニクス、チャージャーの温度を制御します。これらにより真冬の冷間スタートから真夏の高速走行まで、バッテリーは常に最高の作動効率が得られる25度~35度に保たれバッテリーの長寿命化にも貢献します。
急速充電システムは最高出力50kWの急速充電器(CHAdeMO1.0規格:現状で最も普及している急速充電機)に対応しています。
バッテリーの公称電圧は396V、理論容量は95kWh、実用容量は86.5kWhです。バッテリーパックは、アルミケースに入れられた36個のセル・モジュールで構成され、セル・モジュールの中には12個の角型バッテリーセルが内蔵されています。
ちなみにバッテリーセルはLG化学製ですが複数購買戦略により、スペックが同等のバッテリーセルであればどのメーカーのバッテリーでも使用することが可能です。現時点ではLG化学以外にサムスン、SKI、中国のCATLなどからも供給が行なわれています。
バッテリーパックはフロア部分に平らに敷き詰められ、長さ2.28m、幅1.63m、高さ0.34mで、リヤシートの下の部分には2段にパックが搭載されています。重量は強固な外周フレームの耐衝撃構造も含んで約700kgです。
なおアルミニウム製のバッテリーハウジングは、47%が押出成型アルミニウム、36%がアルミニウムパネル、残り17%が鋳造アルミニウムのパーツと、全てアルミ製です。曲げ剛性、ねじり剛性を確保するため、バッテリーパックは35本のボルトを使用してボディに結合。これより車体のねじり剛性は27%向上しています。もちろんフロア部のバッテリーパック配置により、低重心化も実現しています。
なおバッテリーパックは、車両の組み立てと同様にベルギーのブリュッセル工場で行なわれています。ブリュッセル工場はアウディの電動車両のメイン工場で、バッテリーに関しては包括的に開発を行なっており、この電気自動車用だけではなく、PHEV用なども含め、共通のモジュラー設計を採用しています。