2012年5月6日に開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)第2戦のスパフランコルシャン6時間レースに、アウディは2種類の新型、つまりR18ウルトラとR18 e-tronクワトロという2012年型マシンを送り出した。ちなみに3月に開催されたWEC第1戦のセブリング12時間レースでは、アウディは2011年型R18で出場し優勝している。今回のスパ6時間レースは、WEC第2戦というよりルマン24時間レースに向けての実戦テストの場と位置付けられ、24時間レースに向けて2012年型マシンがどれほどの実力を発揮するかがポイントとなる。その一方で、アウディR18 e-tronクワトロと同じハイブリッドカーでWEC、ルマン24時間レースに出場するトヨタTS030は、今回のスパ6時間レースの出場を急遽見合わせたため、レースとしては盛り上がりに欠け、やや寂しい感じがするのは否定できない。
予選では、2号車のアウディR18 e-tronクワトロがポールポジションを獲得した。ハイブリッドのLMP1マシンが初めてのレースでいきなりポールポジションを獲得したことは歴史の1ページに記録されることになる。
2番手が4号車のR18ウルトラで、その差は0.5秒。さらに0.6秒遅れで1号車のR18 e-tronクワトロ、続いて3号車のR18ウルトラという順位で、まさにアウディの従来型ディーゼルとディーゼル・ハイブリッドの戦いという様相である。ちなみに5番手はローラ/トヨタ、6番手はHPD ARX 03a/ホンダ、LMP2クラスではオレカ03/日産がトップにつけている。
5月6日の決勝レースは、名物ともいえるスパ・ウェザーで雨の中、火蓋が切られた。レース序盤から、アウディの2台のハイブリッドマシンは優勢で、1号車のR18 e-tronを駆るロッテラーはトム クリステンセンが乗る2号車のR18 e-tronを従え、3号車のR18ウルトラはトップから1分遅れで3番手と続いた。
レース開始から1時間が経過しようとした時、チームはピットに入ってきた3号車のR18ウルトラのタイヤをスリックタイヤに交換した。他のマシンはすべて浅溝レインタイヤである。これがちょうど路面が乾き始めていたタイミングとマッチし、3号車は1周7.004km のコースで、他のマシンより4秒も速いラップタイムを記録してトップに立った。その一方で、2号車のR18 e-tronはライトシステムの不具合が発生し、ボンネットの交換を余儀なくされて約1分間を失った。
このタイヤ選択の成功が大きく功を奏し、デュマス/デュバル/ジェネ組の3号車がトップを走り続け、ゴールを迎えた。2位には1号車のR18 e-tron、3位には4号車のR18ウルトラ、そして4位には2号車のR18 e-tronが入り、1位から4位までをアウディが独占した。またこのレースではR18 e-tronとR18ウルトラはほとんど互角の性能であることも実証された。
なお5位、6位はローラB12・60/トヨタ、7位はHPD ARX 03a/ホンダ、8位にはLMP2クラストップとなったザイテックZ11SN/日産が入った。