プジョー量販車史上最強のホットハッチ「308 GTi by PEUGEOT SPORT」。ドエライのが発売されました。<レポート:繁浩太郎/Shige Kohtaro>
308をベースとした今回の308GTiには、270psと250psの2つの仕様があります。両者の違いを馬力・トルク曲線から読み取ると、約4200rpmあたりからトルクが落ち始めるのが250ps仕様で、約5500rpmまでMAXトルクを維持するのが270ps仕様です。ピーク馬力は両者ともに6000rpmです。
つまり、約4200rpmまでは、同じ加速性能となります。追加の情報として、両車ともに車両重量や変速比などは同じで、装着タイヤは異なっています。パワーウエイトレシオは270ps仕様で4.46kg/ps、250ps仕様で4.82kg/psと「怒涛の走り」が期待出来ます。
しかし、WRC、ル・マン、F1などを戦ってきたモータースポーツ部門のエンジニアがパワートレーンのみならず、シャーシーからボディ・艤装まで、究極のコンパクトスポーツを作ろうと取り組んだので、単に「怒涛の走り」だけではないはずです。
今回は私も、もう抑えきれない高揚を感じ(まだ若い)、いつもの静的確認は後回しにして、とにかく試乗しました。もちろん、試乗したのは270ps仕様。試乗は一般路とこのクルマにふさわしくツインリンクもてぎのジムカーナなどに使われる南コースでした。
■インプレッション
まずは、一般路走行。エンジンをスタートさせ、クラッチを踏んで6速MTを1速にシフトして、クラッチをつなぐ。つながりは非常にスムーズで、これならたとえATに慣れてしまった人でも、エンストの心配はなくスムーズに発進でき、MTを楽しめそうです。
走りだすと、サスは引き締まっていて硬いのはあたり前としても、ゴツゴツと尖った乗り心地ではなく、また思わず奥歯を噛みしめる必要もなく、丸い感じで「快適」なんです。しかも、タイヤサイズは235/35ZR19という扁平なものなので快適なはずはないと思うのですが、「快適」なんです。
また、かなり小径のステアリングを「すぅ〜っ」と切り込み、切り返してみて、まさにドライバーの意思のままの素直なクルマの動き。感動。最近ドライバーの意思以上に切れるステアリングが多い中で、開発陣はこのクルマの役目をわかっている感じがして、嬉しくなります。
一般的に量産車の派生で作られたハイパワー車というのは、当然サスペンションも締め上げていますから、一般道での制限速度内では乗り心地がイマイチで、ハンドリングもぎこちないものになりがちです。そして、スピードが乗ってくると落ち着くというのが多いですが、このように低い速度域から、非常に素直なハンドリングで乗り心地も快適というのは珍しいです。
つまり、このハイパワーMT車は日常使いでも十分快適に乗れるのです。エンジン音なども良く抑えられていますし、日常でのNVH(ノイズ、バイブレーション、ガツンというハーシュネス)が良いのです。
ただ、アクセルをその気になって踏み込むと、そこは高馬力の象徴でブロロ〜ンと低音が気持ち良く聞こえるとともに瞬時に吹け上がり、意のままに切れるハンドリングとで、一般路でもまさに「スポール」を感じながら走れます。
そしてジムカーナコースです。「行くぞ」と、スタートから怒涛の加速で一気に1コーナーへ。最初は少し抑え気味で突っ込む。「あれ?」。なんてことなくするりと回っていく。次の短い直線でさらなる怒涛の加速をし、今度は故意にオーバースピードで突っ込む。タイヤが可哀想というか、すぐ削れてしまいそうな、速度とステア角。
この時、クルマは諦めてアンダーになるかオーバーになるか、何か変な挙動が出るか……というのをイメージしますが、なんと308GTiは踏ん張って何も起こらず次のコーナーへ勝手に行ってしまう。「これはスゴイ! 面白い!」。ついに仕事を忘れた走りに〜。楽しませていただきました。
一般路の比較的低速からジムカーナコースでの走りまで、プジョーのクルマ造りの奥深さを感じました。奥深さと言えばやはり、プジョーやルノーを筆頭にヨーロッパのホットハッチは概して低速から高速まで、道路とクルマのあらゆる関係、またドライバーとクルマのあらゆる関係も熟知しているとしか言いようのない乗り味で、長い経験と知恵から出る深い技術があるような気がします。
そうそう、静的な確認もしておかないと。まずは、シート。270ps仕様は肩が張っていたり、両ももの間が凸になっていたりと、走りを意識した機能的な形状で、その結果ステッチやデザインも専用になります。
メーターはステアリングの上端越しに眺めるレイアウトになっていて、このタイプには始めて乗りましたが、意外と見やすい。まさに覗きこむ感じがなく、ぱっと見える。また、タコメーターの針が時計と反対方向に動き、生理的にどうかとは思いましたが、意外と何ともなく、それより「変わっていて面白いなぁ」と。
あと、ペダル類はステアリング、シートセンターと正対しており、また段差も少なく、誠に操作しやすい。もともと、小さいクルマでも左ハンドル車はペダルオフセットの心配が少なく、またシフト操作を利き腕の右手で行なえ、スイッチ操作なんかもそうですが、右ハンドル車より操作しやすいと思うのです。
そうそう、あとどうしても書いておきたいのが、270ps仕様に+30万円でオプション設定されているクープ・フランシュという2トーン外装色です。これを最初見た時には、「あれ? テスト車?」。
昔は、クルマの開発でホイールベース違いのテスト車を造ったりする時には、クルマを輪切りにしてつなぐのですが、異なるボディ色のクルマを繋いだりで、クルマの前後で色が異なったりしたのです。だから、つい、それを思い出してしまいました。
最初は確かに違和感ありますが、乗って、見ているうちに、その違和感が不思議とこのクルマの個性と感じられるようになってきたのです。30万円もするので選ぶ人は少ないか、あるいは個性的な2トーンでオモシロイとなり多くなるか?
これが街中を走っていたら注目度は高く、特別感も出ますし、結構選ぶ人は多いのではと思います。
今回308 GTiは日常走行でも、ジムカーナ走行でも味わえる「スポール」性能を持っていると感じましたが、さらに様々な走りで、さらに奥深い性能を見せてくれるように思います。
「プジョー量販車史上最強のホットハッチ」、このコピーに真実感あり。