【言いたい放題】第5回 レクサス・ブランドは今、島を作るべき 繁浩太郎

みなさん、こんにちは。繁浩太郎です。今回も私のコラムにおつきあいください。ところでみなさんはクルマのレクサスというブランドは、ご存知ですよね?

「そうトヨタが造っている、高級車ブランドです」、私はこう説明してしまいます。「高級車」と聞いて頭に浮かぶのは、「ベンツかな…」となるのが多方の答えと想像します。レクサスは一番に浮かびません。つまり、レクサスは「トヨタの…」がつかないと頭に思い浮かばない。

最初から、変なこと言っていますが、今回はクルマという実体の話でなく、こういう無形の、いわゆる「ブランド」の話をしたいと思います。

今回はクルマ本体のことではなく、レクサスの「ブランド」についてお話しましょう
今回はクルマ本体のことではなく、レクサスの「ブランド」についてお話しましょう

「ブランディングの意味」
ドイツ車、イタリア車、アメリカ車…それぞれ想像していただくと、個性があります。名前を聞いて、少しクルマのことを知っている方ならその個性を簡単に思い出せます。ベンツと言えば世界の高級車、アルファロメオと聞けば情熱的なクルマ…などなど、これがいわゆる「ブランド」で、ブランド名を聞いて商品やその会社などをイメージできる。そして、イメージしてしまうのが「良いブランド」ということになります。

だって、お客さんがイメージできるってことは、お客さんの頭の中にそのブランドが記憶として残っているということで、クルマの購入の時にも思い出してもらえて、検討されて、購入確率が上がるということですから。それと、同様の記憶をもっている周りの人にも、「ああ、知っている」と認めてもらえる。

そう、「ブランドとはお客さんの頭の中にあって、それが購入時に出てきて、結果買っていただく」。おわかりのようにブランド価値の最終目的は「買ってもらう」ことなのです。

日本メーカーは高級ブランドの「レクサス」「アキュラ」「インフィニィティ」というものをアメリカ中心に立ち上げていますが、これは高級車マーケットがすでに存在しているということにほかなりません。そのマーケットの中で日本車は「信頼性のある高級車」というブランドを確立し、それぞれのブランドは成功していると聞いています。

しかし、日本においては高級車と言うと、メルセデス・ベンツなど輸入車を先に思い出してしまいますよね。商品ハード的には「レクサス=高級車」なのですが、「レクサスってこういうクルマ」だ!と、高級車にふさわしいイメージを日本のお客さんの頭の中に残せないと、購入の時に思い出してもらえません。

レクサスラインアップ

「レクサス・ブランドの具体的取り組み」

そこで率直に、レクサスはブランド作りをどう展開しているのか? レクサスに取材に行って聞いてまいりました。

レクサス試乗会で取材中の筆者。後日、インターセクト・カフェへもうかがった
レクサス試乗会で取材中の筆者。後日、インターセクトbyレクサスへもうかがった

 

トヨタはリーマンショック、米国でのリコール騒動、さらに東日本大震災などを乗り越えて、レクサスそのもののことも考え直し、それが結果レクサスインターナショナルにつながりました。

レクサスインターナショナルとなってから、よりチャレンジングに戦略的に具体的に多方面に渡って、ブランド展開をできるようになっています。

レクサスは今、以下の三つを柱にして、ブランド展開を推進中とのことでした。

1. お客さんが高級車をイメージしたときに、一番にレクサスを思い浮かべてもらえるようにする。

2. 走りのパフォーマンス向上。文句なしにまずドイツ車並みにする。それに加えて、静かで滑らかで乗り心地良くて、エモーショナルな性能を良くする。

3. 安全・ハイブリッド技術という、強みを足す。

まず、商品作りの中で、動的には「匠制度」というのを取り入れて「走りの職人」が動的性能を作るということです。スタイリング的には一目見てレクサスとわかるようにスピンドルグリルを採用。これは、突き刺す個性があり一目でレクサスとわかる、そういう意味で成功していますね。技術としては、安全・安心技術とハイブリッドに代表される環境技術を強みにする。

次に、大切なコミュニケーション領域では、下記の展開を推進しています。

AMAZING IN MOTION – グローバル・ブランド広告
INTERSECT BY LEXUS
CRAFTED IN MOTION
LEXUS DESIGN AWARD
BEYOND BY LEXUS
LEXUS AMAZING EXPERIENCE
LEXUS SHORT FILM
HIDEKI MATSUYAMA
CONCEPT CARS
DINING OUT
MOTOR SHOW
MOTOR SPORTS
LEXUS collection
LEXUS GALLERY

…これで全部でないかもしれませんが(笑)、これは、凄い。お客さんの生活の中のあらゆるところで、レクサスを感じる、触れられるようにするという…「絨毯爆撃」といいますか、とにかく全網羅的です。

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このように、レクサスのブランド取り組みは商品~コミュニケーションと「本気度」100%です。なんと言っても、その陣頭指揮に当たっているのが、豊田章男社長ですから。

この意味は、ブランド作りとはお客さんの頭の中にレクサスを入れるということだから、何よりも、ぶれたら駄目で一貫性を持ってお客さんに発信していかなくてはならない。しかも、ブランド作りは、お客さんの頭の中の意識のことだから、急にはできない。

つまり、社長が変わったからといって、その取り組みが変わるようでは、ブランドはできません。長くかかるブランド作りを創業家の豊田章男社長が本気で取り組んでいるところがレクサスの最大の強みで、きっと最終的には、誰の頭にもグローバルプレミアムブランドとして、レクサスが頭に浮かぶようになると思います。

「レクサスのグローバルプレミアムブランド、その方向性は…」

インターセクトbyレクサス
インターセクトbyレクサス

プレミアム・高級という価値観も時代と共に変化してきていますよね。以前は、価格の高いブランドバッグを持ったり、他人からどう見られるか? という価値観が強かったのに対して、今では、他人の価値観でなく「自分がどうなのか?」という価値観に変わってきていますよね。

立派な豪邸に住んでるぞということより、小さくても朝陽を浴びて起きられるのが自分には気持ち良いとか、代官山の蔦谷書店もあそこに身を置くのが気持ち良いとか…お金がどうのこうのより、自分がどう感じるか? という価値観なんですよね。

こういうことをヒントに、今までと異なるプレミアム/高級価値観を目指す。と取材で担当者はおっしゃっていました。これは確かに何かありそうな感じがしますね。いずれにしても、今までと異なる価値観を見つけて、それをレクサスのブランドとして、並み居る強豪ブランドの中でしっかりと「自分の島」を作れば成功です。

「完璧なだけに、心配なこと…」
しかし、ひとつ私が心配なのは、とにかくレクサスのブランド展開は「全て、全網羅的」過ぎるのではないかということです。商品やコミュニケーションを全てやり切るのは確かに良いことで、すばらしいことですが、ブランド的に言えばちょっと違う気もするのです。

インターセクトの内装。クルマのパーツをペイントして壁面にディスプレイしている
インターセクトの内装。クルマのパーツをペイントして壁面にディスプレイしている

人の頭に残るのは一つか二つのイメージで、あれもこれも良いと言われると、結局「なんだっけ?」 となりますので、その「結局」を的確に人の頭に入れるほうが、残りやすいのです。

一方で、「全て完璧なブランド」というのもあるかとは思いますが、やはり全てやった上に「コレ」というものを見つけて、それを「ブランド魅力」にする方が人の頭に残しやすいと思います。

島というのは、海底に裾野を持っていてその頂上が海から出て見えているだけです。海底の裾野は見えません。島となって海上に出ている部分の独自性で色々な名前を付けられて、認知されています。つまり、他車と差別化されたレクサスの「ブランド魅力」は何か?を定めるということです。

それは、日本でレクサスを買う意味というか、ブランドの魅力は何?ということになりますね。これを見つけて「島」にしないといけません。

とにかく今、レクサスのブランドは推進中です。ブランド作りは、人の頭の中のことですから、時間がかかります。みなさんはアメ車と聞いたら「ガソリンを食う」といまだに、頭に浮かぶでしょう。これを何とかするのが、ブランド作りです。これからいろいろと発展していくレクサスを応援します。

レクサス公式サイト

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