昔のヘッドライトは6Vだったが、今やレーザーライトまである進化の軌跡【動画】

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アウディから登場した新型A8は、従来の32個のLEDを使用するLEDマトリクス・ヘッドライトに加え、70km/h以上の高速走行用に強烈な照射光を発生するレーザーライトも装備している。さらにリヤのランプはLEDに加え、新開発の有機LEDを新採用。薄型の有機LEDフィルムとLEDを組み合わせて新たな照明デザインを生み出している。

ヘッドライトやテールランプなど灯火類は時代に合わせて着実に進化を続け、新型A8のような現時点での頂点とも言える灯火システムが実現している。今回はフォルクスワーゲンを例にとって、電源が6V時代までさかのぼって、ヘッドライトの技術の変遷を考えてみよう。

ライトの進化の歴史

自動車が誕生して以来、長い間、クルマのヘッドライトは半球形の丸型だった。ただ自動車の誕生初期には石油やアセチレンガスを燃料にした燃焼式の照明装置が使用されたこともあり、必ずしも半球形ではなかった。1908年に発売されたフォード・T型モデでは丸型のアセチレンまたは石油ランプが採用されていた。

ヘンリー・フォードとT型モデル
ヘンリー・フォードとT型モデル

1912年にキャデラックで、デルコ社のバッテリー式点火装置と電気式照明装置を統合した電球式のヘッドライトが登場し、1915年にはロービーム機能を持つヘッドライトが登場したが、これは車外から操作しなければならなかった。車内から操作できるタイプは1917年にキャデラックが初搭載したのが始まりだ。1924年に登場したバイラックス電球により1つのバルブでハイとローが切り替えられるようになり、1927年には足踏み式のディマー(ハイ/ロー切り替え:ディーマーは減光装置の意味)スイッチが登場した。

フォルクスワーゲン ビートルの6V電源時代のヘッドライトもバイラックス(ハイ/ロー切替式)バルブを使用してフェンダー部に取り付けられていた。それ以前のクルマの多くはラジエーターグリル横やフェンダー部に独立してヘッドライトが取り付けられていたが、フェンダー一体型が主流になりつつあった。

そしてクルマは大量生産され、街中で見かけるようになるヘッドライトの形状、サイズ、配置がクルマのブランド・デザインとなっていった点も注目しておきたい。

戦前のビートルのプロトタイプ「V3」のヘッドライト
戦前のビートルのプロトタイプ「V3」のヘッドライト

初期のフォルクスワーゲン・タイプ1の丸くて大きな目のようなヘッドライトは、エクステリア・デザインに大きな影響を与えた。 タイプ1のプロトタイプV3のヘッドライトはまだボンネットに取り付けられていたが、量産されたタイプ1・ビートルは、車両の前面に丸い大きなヘッドライトを組み込んでいた。 6Vの電装システムのために、ビートルからの照射能力は、今日の観点からは明るいとはいえなかったが、当時の法規が定める光量はクリアしていた。 1960年のビートル以降は、非対称(右側通行用)・減光基準を守るため、新たな2次元の拡散レンズを持つヘッドライトを装備した。

戦後に量産が開始されたビートル(タイプ1)1951年型のヘッドライト
戦後に量産が開始されたビートル(タイプ1)1951年型のヘッドライト

1967年からビートルは電気系統を12Vにアップグレードし、より明るいヘッドライトに生まれ変わった。デザイン的には後傾したそれまでのライトではなく、直立デザインとなり、現代的な外観に変化している。さらに、1969年にはビートルに初めてハロゲンランプが導入され、1974年にはさらに強力なH4ヘッドライトがビートルに採用され、これまでにない明るいヘッドライトとなっている。

12V電源となった1969年型ビートルのヘッドライト
12V電源となった1969年型ビートルのヘッドライト

その後、楕円形のメイン・ヘッドライトを持つ411(タイプ4)、角型ライトのK70、パサート、そしてゴルフと、新しいモデルも登場した。しかし、ライトによってスタイリングに革命をもたらすまでには至らなかった。

デザイン的な効果を持つヘッドライト

1997年に登場したフォルクスワーゲン(ゴルフ4)が最初に装備したオール・プラスチック製の自由曲面リフレクター付きのクリアガラスヘッドライトは、1995年にフォルクスワーゲン・デザインに新たに設立されたヘッドランプ開発チームの手によるものだった。

ゴルフ4で採用されたオール・プラスチック製の自由曲面リフレクター付きライトユニット
ゴルフ4で採用されたオール・プラスチック製の自由曲面リフレクター付きライトユニット

それはCAD設計の実現により、全く新しいデザインで、様々な機能が統合されたヘッドライトで、視覚的にも斬新であり、デザイナーたちにとってヘッドライトは新たなデザイン領域として認識されるようになった。

プラスチック製の自由曲面反射鏡を持つゴルフ4のヘッドライトは、光量を著しく増加させると同時に、この新しいヘッドライトはブランド・デザインを生み出す効果を持ち、その後のクルマのフロント・デザインに独自の表現を行なうことが可能だということを証明したといえる。

COTY
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