トヨタにとって新たな市場への参入となるBセグメントサイズのコンパクトSUV新型ヤリスクロスに試乗した。ライバルはホンダ ヴェゼルやマツダCX-3、欧州ならプジョー2008やルノー キャプチャー、フォルクスワーゲンのT-CROSSあたりで、欧州のコンパクト市場へも本格導入していくモデルだ。今回、国内仕様となるヤリスクロスをサーキットで試乗することができた。
ヤリスクロスは先行発売しているヤリス ハッチバックと共通のプラットフォーム、GA-Bを使ったSUVモデルで、ボディサイズは、全長4180mm、全幅1765mm、全高1560mm、ホイールベースは2560mm。全長はヤリス ハッチバックより240mm長く、全幅は70mmワイド、ホイールベースは2560mmで、ヨーロッパ仕様のヤリス ハッチバックと共通で日本仕様より10mm長い。また最低地上高は30mm高くなっている。
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3モデルに試乗
パワートレーンが違う3タイプに試乗できた。1.5Lのハイブリッド+E-Four(4WD)、FFの1.5Lハイブッド、そしてFFの1.5L+CVTの自然吸気モデルだ。
今回はサーキット試乗という条件なので、限界付近での特性がよくわかったので、そのあたりを中心にお伝えしよう。
全体にヤリスHBより車重があり、車高も高いため、ヤリスHBほどスポーティではないものの、やはり車両重量が軽いFF1.5Lモデルがもっとも軽快で、扱いやすい印象を受ける。ステア特性も特にクセはなく、旋回ブレーキでも操舵方向へ回頭を続ける。スロットルで姿勢コントロールできるモデルがトヨタには時々出てくるが、そうした方向ではなく、欧州スタンダードとも言える操舵方向へ動く味付けになっている。
また、リヤの接地感がわかりやすく限界付近でのグリップも分かりやすいので、安心して走れる。操舵フィールもヤリスHBよりは手応えはあるが、軽めの部類。また切り戻しの時に適度な手応えがあるため、常にグリップ感や接地感が伝わり安心感がある。
ハイブリッドのFFモデルはおそらく販売の中心的なモデルとなるだろう。こちらは車重の重さがある程度あるため、ガソリンFFモデルより重さを感じる。性格的には同じ方向の仕上げで、やや、リヤの動きに落ち着きのない場面が出るものの、それは限界付近での話であり日常的には体験しない領域だ。サーキットだから顔を出す部分と言っていい。
そしてE-Fourを搭載したハイブリッドの4WDモデルは、全体にずっしりとした重さを感じるが、それも3タイプを比較試乗しているからであり、単独で試乗すれば気になるものではない。FFハイブリッドでのリヤの落ち着きに関し、E-Fourでは特に感じることはない。それは4WDだら安定するということではなく前後の重量配分の違いによるものだ。
つまり、モーターによるリヤ駆動アシストは50〜60km/h付近までなので、サーキット走行では影響していないのだ。また、このE-Fourはいわゆる生活四駆という位置づけのものだ。
3タイプに共通するものとして、エンジン音が気になる。サーキットという場所での試乗のためどうしてもエンジンを高回転まで回して走るが、CVTということもありずっと唸っている。高周波の音はカットするなどの工夫があってもいいと思った。
3気筒エンジンということもあり、ネガ要素になりがちだが、欧州マーケットへの本格導入モデルであるなら、量販モデルとはいえ音への対策はあってもいい。もちろん気持ち良い音とか静粛性を意味しているわけではなく、気にならない音作りというレベルの話だ。アウトバーンなどアクセルを全開で踏むケースが多い欧州の道路事情を考えると気になった部分ではある。
ユーティリティ
ヤリスクロスはBセグメントに求められる要件は満たしつつ、さらなる満足をプラスすることを目標に開発されている。特にクラストップレベルの荷室容量390Lは、シートアレンジも含め使い勝手を研究している。
ゴルフのキャディバッグは真横に置いて2セット重ねて搭載することが可能で、日本車ならではの工夫だと感じる。欧州車のBセグメントサイズのクルマで真横に搭載できるモデルは少ない。またラゲッジフロアは6:4に分割できるフロアボード式になっている。二重底の形状にしてあり、背の高い荷物も収納できる配慮だ。だが、ハイブリッドモデルになるとリヤにバッテリーを搭載しているためキャディバッグは1本、分割式フロアボードにはなっていない。
シートバックは4:2:4分割式でセンターを倒すとスキー板やサーブボード、釣竿など長尺物が搭載できる。また全部シートを前側に倒すとフルフラットな荷室になる。
ヤリスクロスを俯瞰してみると、ヤリスHBのインパクトが大きかったためか、あるいは穏やかな万人受けを使命としているためか、大きな驚きや新鮮味は薄く感じ、ダイナミック性能ではかつての80点主義を思い出させるような仕上がりだと感じた。ただ、エクステリアデザインやラゲッジスペース、圧倒的な実用燃費の良さといったところでは魅力たっぷりと言えるだろう。
他にも最新のトヨタセーフティセンスの標準装備やインテリア、エクステリアの質感など訴求したい部分はあるが、それは市販され公道を試乗したときにお伝えできればと思う。まずは限界付近での性能についてお伝えしてみた。<レポート:高橋明Akira Takahashi>