トヨタ ハリアー 感性価値を大切にした上質なモデル試乗記(FF+2.5Lハイブリッド、4WD+2.5Lハイブリッド FF+2.0L CVT)

新型ハリアーを横浜の市街地で試乗することができた。4代目のハリアーはグローバルモデルとなり、実用性より感性価値を訴えるモデルだとアピール。先行して発売するSUVのRAV4とは、プラットフォームを共通としたモデルだ。アドベンチャーやオフロードイメージが強いRAV4に対して、アーバンライフで乗用車テイストを強めているのが新型ハリアーというわけだ。

RAV4と共通のプラットフォーム、パワートレーンを採用しながら、キャラクターの違いを明確にだしている

試乗したモデルはFFの2.5Lハイブリッドと、同じく2.5Lハイブリッドの4WD(E-Four)、そして2.0Lの自然吸気FFモデルの3モデルに、横浜の市街地と首都高速の環境でテストドライブを行なった。

感性価値から豊かな生活へ

ハリアーの開発責任者である佐伯禎一氏は、「ハリアーを所有して乗っていただくことで、豊かな気持ちになって欲しい」と話す。人は、どんなものでも、お気に入りのモノを手にし、それが期待どおりのものだと幸せを感じる。あるいは美味しいものを食べたときにも幸せを感じるものだが、新型ハリアーに乗ってドライブすることで、そうした多幸感や豊かな気持ちを感じてほしいというこ意味だ。

無骨さとは無縁なデザインコンシャスな新型ハリアーは都会がよく似合う

だから、4代目新型ハリアーは実用性ではなく、感性価値のほうを重視したクルマづくりをしてきたということだ。

具体的にはエクステリア、インテリアデザインにその多くの要素を持っていると感じる。後方に向けて絞り込まれたシルエットに、張り出したフェンダーでたくましさが伝わり、曲面を多用することで艶やかな色、高級感が感じられる。特徴的なヘッドライトはひと目でハリアーとわかる存在感があり、リヤテールウインドウの下端を引き伸ばして伸びやかなルーフラインとすることで、エレガントさが伝わってくる。

インテリアは全体を水平基調としながら、馬の鞍をイメージしたという幅の広いセンターコンソールでセパレートし、包み込まれる様な抱擁感がある。ブラウン系でまとめられた試乗車は大らかな曲面や面質、触感が心地よく、仕立ての良さを感じさせるインテリアになっている。
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リヤウインドウ下端を後方へ伸ばし、ラゲッジスペースを確保しつつ美しいシルエットに

ハイブリッドのインテリア。丸みを帯びたセンターコンソールは鞍をイメージしている

高い静粛性

デザインからくる上質さを感じながら走り出してみると、とりわけハイブリッドの静粛性が際立つ。静かな車室内は走行中も維持され、EV走行に切り替わると滑る様に滑らかに走り、極上の乗り味が味わえる。

E-Fourのハイブリッドは交差点を曲がる時でもリヤのアシストが加わり、スッと回頭していくのが気持ちいい。2.0LのガソリンFFモデルはハイブリッドより、全体に軽快な印象を受ける。コーナーでのステア操作では、スッとノーズが動き気持ちよさがある。

高速の路面が綺麗な舗装では、静粛性と滑らかさに高い満足感が生まれ、そして荒れた舗装路では嫌な高周波の音が丸められているため、ロードノイズは大きくなるものの気にならないレベルに仕上げている。

静粛性の高いキャビンは高級感があり、優雅な気持ちにもなる

こうした吸音・遮音には、さまざまな工夫がされていた。キャビン周りではドアを閉めた瞬間の静けさを作るために、フロアサイレンサーを設置し、ルーフも含めた車両全体に吸音材を配している。またエンジンルームでは、バルクヘッド全面に遮音サイレンサーおよび制振剤を備え、エンジンルーム内にも吸音材を入れている。

こうした対策で走り出しの静けさやエンジンノイズの中周波領域を改善している。そして高速走行ではドア、タイヤ周りに吸音材を配し、とくにフロント、リヤフェンダー内側ライナーにも吸音材を入れることでロードノイズを大幅に低減できているというわけだ。

乗り心地

こうした静粛性に見合う乗り心地も上質だと感じる。特に微低速域でのフリクションのなさ、ダンパーの減衰が効いた乗り心地は気持ちいい。最近のトヨタの開発目標にドライバーの目線が動かされにくいことを狙った開発が行なわれており、新型カローラからこうした改善が製品に現れてきていると感じる。

細いテールレンズやリヤフェンダーの張り出し、ツインテールパイプなど唆られるデザイン

したがって、車高が高いにもかかわらずロールやピッチはあまり感じることはない。市街地走行レベルではクルマの揺れを意識させられることはないだろう。フラットライドが自然とできている。

ステアフィールも気持ちいい。第3世代のラックパラレル式の電動モーターを装備しているが、切り戻しで特に気持ちよさが伝わる。切り始めはスッとノーズが動き、ある程度の手応えを残しながら切り戻せるので、タイヤの接地感をずっと感じていられるので、安心感にもつながっている。

シートの座り心地はソフトだ。試乗時間が30分程度なので、長時間走行したときのインプレッションはとれなかったが、乗り込んだときの印象は良い。上質なインテリア、ハイセンスはエクステリアを見た後の座り心地としては期待を裏切らない。また、試乗コースも公道ということで大きな旋回Gがかかるシチュエーションがなく、ホールド性もチェックできていないが、ネガとなる部分はなさそうだった。

ソフトな座り心地で良い印象のシート。落ち着いた配色もあり大人感がある

快適装備

アイディアたっぷりの装備として調光パノラマルーフがある。ルーフ全体に大型のサンルーフが装備されている。開閉はできないタイプで、素通しのガラスとサンシェードされた状態とが切り替わる新しいタイプのサンルーフだ。しかも音声対応をしており、開発主査の佐伯氏は「星空が見たいと言ってみてください」というので、発話すると瞬時にサンシェードが取れ、天空を見渡せるようになるのだ。

使う頻度はそう多くはないアイテムかもしれないが、景色のよい高原や海、都会の夜景、星空観察など、想像するシチューエンションはロマンティックで、幸せになるアイテムかもしれない。

もうひとつがドライブレコーダー内蔵のデジタルインナーミラーを装備している。前後方録画機能付きで、マイクロSDカード16GBを内蔵している。煽り運転対策のほか、事故検証にも役立つアイテムだ。

そのデジタルルームミラーは便利だ。クルマのリヤエンドにカメラがあるため、後席や荷室は映し出されず、後方視界を妨げるものがない。クリアな後方視界が確保でき、かつ雨や夜間などミラーでは見にくい状況の時に威力を発揮する。とくに夜間は、肉眼より遥かに明るく映し出されるので、肉眼でも見落としそうなものも映るので、安全に寄与するのは間違いない。

かつてのマークXやチェイサーといった上級セダンがハリアーのポジションになるのだろう

国産車にありがちな、さまざまな機能、性能の全てを求めることに対応するクルマづくりから、一歩踏み出したモデルという印象を受けた。幸せを感じるクルマづくりというのが実は新型ハリアーの狙いなのかもしれない。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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