トヨタは2011年のデトロイトショーで発表したプリウスv(ブイ)とジュネーブショーで披露されたプリウス+(プラス)の、より市販モデルに近い、スペースコンセプトを報道陣に公開した。発売は本年4月下旬となっており、正式車名は公表されていないが、発売1ヶ月以上前という異例の早さで公開された。
最終型の試作車であるプリウス・スペースコンセプトは、現行プリウス(ZVW30型)の派生車で、5人乗りのラゲッジスペースが広いモデル(v)と3列シート7人乗りの(+)2モデルがある。
開発のコンセプトは、居住性の高さと、使い勝手の良さ、そして環境性能をバランスさせたパッケージであり、ファミリーからパーソナルユースまで多様なライフスタイルに適応できるように開発されている。
ボディサイズは5人乗り、7人乗りともに共通で、プリウスと比較してみると全長で+155mm長い4615mm、全幅も30mm広く1775mm、全高は+85mm高く1575mm、ホイールベースは+80mmの2780mmとなっている。全高はセダン標準よりかなり高くミニバン並みだ。
ボディは、モーター走行するなど、パワーユニットが発する音が少ないため、タイヤのロードノイズ、風切り音、などが気になるので、ハイブリッド車に特に要求される騒音、振動、風切り音への対策がされている。プリウスと比較し、エンジンノイズでは3000rpmを超えたあたりからは、その違いがあり、また、風切り音もスペースコンセプトのほうが静かになっている。
プラットフォームはプリウスと共通で、サスペンションの構成もフロント・ストラット、リヤ・トーションビームと同じである。しかし、ボディサイズの大型化や車載重量増、乗員数増もあり、スペックは見直され、最適にチューニングされているという。
今回採用された技術に「ばね上制御振動」がある。これは路面の凸凹に応じてリアルタイムでモーターのトルク制御(変動)を行い、路面入力によるピッチ挙動を抑制するという技術だ。このことにより、タイヤの接地性が高まるため、操舵感も向上し、操縦性、走行安定性、そしてフラットな乗り心地がより高い次元で達成できたという。
このばね上制御振動というのは、例えばノーズが伸び上がろうとしたときに、瞬時にモーターのトルクを落として伸び上がろうとする動きを抑え、車体を安定させる技術だ。つまり車体のノーズリフトやダイブに対して反対向きのモーター駆動トルクをかけることでフラットライドを実現しようというものだ。トルクが瞬時に立ち上がるモーターの特性を利用したモーター搭載車だけにできる技術でもある。
搭載されるパワーユニットもプリウスと同じで、1.8Lエンジンにトヨタが誇るフルハイブリッドTHS-IIを搭載している。モード燃費は公開されていないが30km/L以上のスペックは当然期待することになる。プリウスと異なるポイントとして、モーターにウオータージャケットが追加されていることがあげられる。従来型も片側に水冷ジャケットはあったが、今回はフル・ジャケットになっている。重量が重くなった分、モーターにかかる負担が増え、モーターの冷却効果を高める狙いがあるのだろう。
そして、このモデルは、バッテリーに5人乗りは従来のプリウスと同じくニッケル水素が使われ、3列シートモデルはリチウムイオンバッテリーを使用している。トヨタはこれまで、ニッケル水素バッテリーをメインとして使用してきており、プラグインハイブリッドなど、限られたモデルだけにリチウムイオンバッテリーを使用していた。これには、安全性の確認や取り扱いに関する規定や基準など、ニッケル水素と比較して製造リスクを伴うことなどや価格面を考慮し、他社と比較して消極的だった。
これらの問題をある程度解決しリチウムイオンを使用することとし、その結果、バッテリーが小型化でき、搭載位置を従来のリヤスペースからセンタークラスターへ移動することが可能となった。これにより、ボディをサイズアップしたことに伴い、リヤスペースが拡大され3列シートが誕生している。そして5人乗りモデルは従来と同じくニッケル水素だが、ボディ拡大によりラゲッジスペースを確保しVモデルが誕生している。
インテリアではプリウスと明らかに違う広いスペースが誕生し、ステーションワゴン&ミニバンというカテゴリーに属するモデルであることが分かる。5人乗りモデルではラゲッジスペースは195Lも拡大され535Lの容量があり、座席のヘッドクリアランスや前後シート間隔も広がったことから、広くなったと実感する。これは5人乗り状態でゴルフバッグが4本できる搭載量を持っており、また、シートアレンジも両モデルともに、多彩であり実用性の高さを感じる。
さらに、トヨタ初の樹脂製パノラマルーフがオプションとして採用されている。ガラス製のルーフに比較し17kgも軽くなっており、またドアロックに連動して自動でクローズする機構を採用し、車外からのドアロック操作と同時にシェードを閉じることができるようになっている。
エクステリアでは、一見してプリウスと分かるデザインとなっているが、共通する部分は少なくドアハンドルやドアミラー程度でボディパネル、ウインドウ、ランプ類などは全面一新されている。しかしながら、プリウスがもつ先進性をイメージするデザインは継承され、実際の空気抵抗値もCd= 0.29と優秀な数値になっている。
ハンドリングや詳しい解説については4月末の正式発表後にお届けしたい。
文:編集部 髙橋 明
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