ZFインタビュー APCEOルディ・フォン・マイスター氏が描く日本への参入ロードマップ

雑誌に載らない話vol119

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かねてから当サイトでもお伝えしていた世界的規模の自動車部品、システムサプライヤーであるZFとTRWが2015年5月に合併し(詳細記事)、合併後初めて今後の活動についての取材ができた。その第1回目はCEOのインタビューをお送りしよう。2回目以降は先端技術レポートをしていく予定だ。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

2015年7月ドイツ・ベルリンにおいて世界のジャーナリスト向けに「Pre IAA」と題して、技術説明会及び試乗会が開催され、Auto Prove編集部もこのイベントに参加してきた。イベントに先立ちアジア・パシフィックCEOのルディ・フォン・マイスター氏へのインタビューもできた。

ZFはTRWを吸収することにより、トランスミッションや、ダンパー、サスペンションなど、これまでのZFの得意分野に加え、TRWのシャシー制御、運転支援システム、エアバッグシステム、ステアリングシステム、ブレーキシステムの技術、製造拠点が加わることで、まさにグローバル・メガ・サプライヤーとしてのポジションを確固たるものにした。

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売上規模は約4兆円程度が予測され、その規模はマツダやスバルの売上高3兆円前後を凌ぐ規模である。ちなみにトヨタはその10倍の売上高になる。Tia1としてもボッシュ、コンチネンタルに並び世界3大メガ・サプライヤーの一員となり、14万人の従業員を抱える巨大企業へと変化したことになる。

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TRWのジョン・C・プラント社長兼CEO(左)とZFのCEOステファン・ゾンマー博士

このことに対しCEOのマイスター氏は「統合してこれまでの約2倍の大きさとなり、お互いにシナジーを、相乗効果をもたらさなければならない。メガサプライヤーのトップにいるが、これからが大変になるだろう」と話す。

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今回インタビューしたアジア・パシフィックCEOのルディ・フォン・マイスター氏

では具体的にはどのようなことが起きているのか?「TRWが得意とする分野は、ZFの5番目の事業部となりアクティブ、パッシブセーフティの部門として稼働し、これまでの顧客も含め、お互いのターゲットに対してきちんと仕事をしていく必要がある」と。

マイスター氏はアジア・パシフィックのCEOであり、上海に本社がある。もちろんメインターゲットは中国である。乗用車の台数は日本の4倍は確実に販売され、このまま行くと2000万台をはるかに超え、3000万台というとてつもない販売台数が可能とされる中国だ。いまや日本は500万台にも届かない…。

その日本について「日本の完成車メーカーの存在感は世界中でも大きく、その大きなプレゼンスを占める日本企業とのビジネスは重要で、イノベーション、コネクティビティ、自動運転で最先端を行きホットなマーケットだ」と日本の重要性を訴えている。

2014年10月に上海でマイスター氏にインタビューしたときには、 2015年に日本にR&Dを設立するという話をしていた。その進捗については11月の東京モーターショーの頃に詳しい話ができるだろう、ということだった。

では、日本の企業とビジネスする上で難しいこと、障害になるようなことは何か?「非常にチャレンジングなパートで、長期的視野が必要で辛抱強さがなければいけない」と難しさを感じているようだ。これは日本以外のTia1のポジションは自動車メーカーと部品サプライヤーは対等のポジションで、共同開発・研究は普通に行なわれる。もちろん、開発済み部品を購入し自動車メーカーが自身で最適化することや、サプライヤー任せになることもある。

こうした完成車メーカーへの入り込みができている状況に対し、日本の完成車メーカーはTia1に対し「下請け」という垂直のポジションでの付き合いが一般的だ。そのため、完成車メーカーから指示された部品を生産し納品するというスタイルで、日本の自動車メーカーの「すべて自前主義」が障害になるということを言いたいのかもしれない。かつて当サイトでも2010年に「自動車メーカーと対等」という記事でポジショニングについて書いている。

「1990年に私がGMゼネラルモータースに居た時、中国でいすゞとGMのパートナーシップがありました。その時、いすゞのスタッフは5、6年後には中国語を流暢に話し、ローカルのやり方にアダプトするやり方を取っていました。これは凄く勉強になったことを覚えています」というエピソードを教えてくれた。

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当サイトの取材で日本の自動車メーカーエンジニアに話を聞いても、やはり自前主義が重要と言う話は頻繁に聞く。そしてその部分へのこだわりもあり、Tia1との協業はあまり考えていない印象だ。特に外国企業の場合、開発の段階で言葉の問題もあるのだろう、マイスター氏が言う辛抱強さが必要なのかもしれない。

マイスター氏は57歳。中国在住で中国語を話し、ドイツ語、英語を話すアメリカ人。そしてタカハシの名刺を見て漢字を読み、英語ではあったが意味まで説明した。じわりと日本に溶け込むZFの姿はそう遠くないのかもしれない。

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インタビューの終わりに、名刺の漢字を読みニコリとしたマイスター氏

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