ZFに見る次世代運転支援技術 レベル2プラスとはなんだ【上海モーターショー 2019】

上海モーターショー2019
雑誌に載らない話 vol.294

2019年4月に開幕したオート上海2019では、中国車の台頭、次世代車の進化など、世界はEV化を含めた次世代モビリティへの変化を目の当たりにした。それはメディアだけでなく、自動車づくりに関わっている当事者ですら、その変化の速さに驚かされているわけだ。世界的システムサプライヤーのZFのCEOウォルフ=ヘニング・シャイダー氏もプレスカンファレンスで、モビリティの急激な変化が中国では敏速にそして広範囲で始まっていると話す。具体的にどのように変化しているのかをお伝えしよう。

プレスカンファレンスで中国は進化のスピードが速いがZFの開発も速いとシャイダーCEO
プレスカンファレンスで中国は進化のスピードが速いがZFの開発も速いとシャイダーCEO

チャイナ スピード

ZFは、1980年から中国でビジネス展開しているZFは、モビリティの変化を作っていく役目だともシャイダー氏は言っているのだ。そのシャイダーCEOに話を聞くことができたのでお伝えしよう。

ウォルフ=ヘニング・シャイダーCEO
ウォルフ=ヘニング・シャイダーCEO

シャイダーCEOによれば、今、中国では合弁会社を除くと、5つの純粋な中国カーメーカーと取引があり、新しいエネルギーの車両やプラグインハイブリッド、EVなどへのシステム、パーツ供給を行なっているという。

また運転支援システム(ADAS)では、レベル2+(プラス)を提案し、これはカメラやレーダーに加えて、スーパーコンピューターであるZF ProAIやアメリカのNVIDIAのアルゴリズムを使って洗練された運転支援システムを提供していくとしている。

ZFでは「CO PILOT」と呼んでいるレベル2+
ZFでは「CO PILOT」と呼んでいるレベル2+

こうした新しい技術を搭載した車両がぞくぞくとデビューし、国策である電動化のスピードには目を見張るものがあった。それをドイツ人たちの間では「China speed」という言葉でその変化を表し、半年経つと変わっている、というスピード感に溢れているのが中国市場だと言うわけだ。

進化の加速は世界で類を見ないスピードで進行している
進化の加速は世界で類を見ないスピードで進行している

一方で、中国の景気が下降気味なことに対しては、モビリティに対する需要は大きく、人も多いことから、すぐにこの不景気は回復する、と考えているあたりも興味深いものだった。これも非常に多くの人口がいるということが大きく影響し、さらなる需要の拡大があるということなのだろう。

そして、今、ZFは新しい次世代のモビリティに向けて注力しているのは自動運転、EV車、統合安全システム、そして車両のモーションコントロールだという。いずれも便利さと安全の両方を確保しなければならないと話す。

シャイダーCEOのインタビューの中で出てきた「レベル2+」は気になるワードだ。そのレベル2+とは、レベル2の運転支援システムが、より洗練されたものだという。そこで、開発エンジニアであるオリバー・ブレムル氏にレベル2プラスについて聞いてみた。

オリバー・ブレムル氏は自動運転のシステムエンジニアだ
オリバー・ブレムル氏は自動運転のシステムエンジニアだ

洗練された運転支援システムの進化

レベル2+はあくまでも運転支援システムであり、ドライバーの責任においてクルマは操作する必要があり、何かあれば即座にドライバーが運転できる状態でなければならないシステムだ、と前置きをしながら説明があった。

例えば、高速道路を80km /hと100km /hで走行している車両があった場合、速いクルマは自動で追い越し自動でレーンに戻ることができる。また、インターチェンジで別の高速道路に乗り換えるような場面では、インターチェンジのループもステアリングを握ることなく、自動で転舵しインターチェンジを降りていくことができるといった機能がレベル2+だ。

安全デバイス、センサー類などZFの最新のポートフォリオを搭載
安全デバイス、センサー類などZFの最新のポートフォリオを搭載

これが最大のレベル2との違いになるが、駐車場でも自動で駐車スペースを探し、自動パーキングするといったことも可能になるという。

こうした自律走行のトレンドはこれからの乗用車のトレンドになるといい、また一般道ではインフラとの協調制御も必要になってくるという。レベル2ではその必要はないが、レベル2+になると信号を読み取る必要も出てくるわけで、そうした対応はコミュニケーションボックスと言われる仕組みで取り組んでいるという。

2019年CESで公開した最新のスーパーコンピューター「ZF ProAI Robo Think」
2019年CESで公開した最新のスーパーコンピューター「ZF ProAI Robo Think」

信号のカラーは世界共通ではあるが、色が数値化されているわけではなく、人間の目と脳で、カラーを判断しているため、現在の搭載システムでは信号の判定は難しいものがある。だが、コミュニケーションボックスでは青信号の時に使う電波などを決めておけば、解決できるというわけだ。

そのコミュニケーションボックスを彼らはT-BOXと呼んでいたが、これはデバイスは各種あったとしても公開されるプロトコルであれば、すべてのデバイスがアクセスできるようになるわけで、そうした動きを現在欧州ですすめているという。

2018年のハノーバー商用車ショーでは、トラック同士の通信システムのプラットフォームに「ENSEMBLE(アンサンブル)」といった仕組みを導入しているとレポートしたが、乗用車では「NEVADA(ネバダ)」というプラットフォームを作ろうとしているという。

また通信には現在オートモーティブ用wi-fiには11Pというものが一般的に使われている。これが2020年には5Gへと変わるという。さらにインフラとしては道路側に設置しているRSUというハードユニットがあり、こちらにアクセスすることで、信号などを理解するようになるということだ。

次回はこうした次世代技術に対して、どのようなソリューション、ポートフォリオを持っているのか、ZFスタンドを見学したレポートをお送りしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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