【ZF】ワールドプレスツアーレポート最終回 EPSそして後輪操舵。これもZF製なの?

ZFワールドプレスツアーのレポート最終回はシャシーテクノロジーについてお伝えする

ZFのワールドプレスツアーレポートの最終回は、シャシーテクノロジーのハンドリングについてレポートしたい。さらに、現在市販されている各社のモデルにはどんなZFの技術が投入されているのかをご紹介しよう。

ハンドリングテストではBMW5シリーズセダンに搭載されている後輪操舵+トルクベクタリングの車輌をテストドライブできた。これは既に市販されている5シリーズの一部や6シリーズ・グランクーペに採用されている技術で、その時の試乗レポートは。コチラ。レポートを読んでもらうと分かるが、新しい価値観をもたらすほど衝撃的な技術だったとレポートしている。

それは、ドライバーがこれまで経験したことのない世界で、新鮮さに溢れている。さらに安定性が高いために安心感は高まるのだ。

ZFの後輪操舵システムは具体的には後輪が最大2度までステアする。60km/hまではフロントタイヤとは逆の方向にステアし、60km/h超えると同じ方向にステアする。そして、トルクベクタリングが加わるので、これまでの自分自身の限界と車輌自体の限界も変わり、異次元の走りが誰でも体感できる。ちなみに後輪操舵システムは日産のHICASが世界初で、1985年に油圧制御式をスカイラインに搭載した。その後電動式4輪操舵と可変配分4WDを組み合わせて、システムとして完成させたが、ZFはトルクベクタリングと組み合わせるという発想だ。

後輪操舵のリヤタイヤの状態を比較。たったこれだけのことでもクルマの動きには大きな影響が

「これ以上いくとスピンモードになる」、あるいは「アンダーが出る!」、「ここではまだアクセルは開けられない」、などの予測をことごとく打ち破り、車輌の旋回性、コーナリング速度はさらに高いレベルでバランスしていることを体験するのだ。
さらに直線でも強い直進性を感じ、安心感が高い。国内でもレクサスGSのLDH搭載モデルでは同じようなシステムを採用しているが、直進の座りがいまひとつで、コーナリング性能は高いのに、もったいない印象を持った記憶がある。このテスト車輌ではまったくそれがなく、完成度の高さを感じるテストドライブだった。

第三世代となるZFレンクシステムのEPSapa。ラックにベルトを掛けて駆動するタイプ

また、この車輌のパワーステアリングシステムは第3世代のEPSapa(ベルト駆動ラックアシスト式電動パワーステア)が採用されており、ステアフィールもナチュラルでBMWらしい走りを体験する。これはステアリングラックにベルトを掛け、モーターはベルトを使ってラックを動かすタイプとなっている。もっともこのEPSapaはすでに多くのBMWを始め他のメーカーのクルマにも採用されており、多くの人がその魅力を経験しているだろう。

■さまざまなクルマでZFテクノロジーに触れてみた

さて、ここからはずらりと並んだテスト車輌の紹介だが、これらの車輌に投入されているZFの技術を交えてご紹介しよう。

テスト車両のポルシェと筆者・高橋明
911に搭載されるZFのテクノロジー群。現地で資料を複写したため見にくい点はご容赦を…

まず、ポルシェ。ケイマンは7速ツインクラッチのPDKを搭載し、MTは6速を搭載している。もちろんどちらもZF製のトランスミッションだが、異なるトランスミッションを搭載していることを意味している。一方911は7速PDKと、7速MTがあり、同じ7速である。これはツインクラッチであるPDKをマニュアル化にしたもので、同じトランスミッションを使用していることが分かる。

ここで、詳しい人ならピンとくるのだが、7速PDKをMT化することは簡単ではないということだ。では何が凄いのか?と言うと、ツインクラッチのギヤセットをMT化した場合Hパターンにギヤが組めず、複雑なレイアウトとになってしまう。それを通常のHパターンで使えるように組みなおしているところが凄いのである。

どういうことか。通常、ツインクラッチのギヤセットは奇数ギヤ用、偶数ギヤ用の2本のインプットシャフトとカウンターシャフトによって構成されるが、ギヤ配列は段数の順番どおり並んでいるわけではない。だから、MT化しようとしたときPDKのままのギヤ配列で仮にMT化すると、通常の1速の位置が6速で2速の位置が4速、3速→R、4速→2速、5速→3速…というギヤ配置になり、とてもじゃないがマニュアル運転はできない。これを通常のHパターンのシフト配列にしているということなのだ。なんともマニアックな話だが、高度なメカ技術が投入されていることがわかる。

PDKのギヤ配列のままMTにしたのが左のレイアウトで、それをHパターンにに置き換えている

もちろん、操作フィールも良く、滑らかでしっとりとしたシフトフィールに仕上がっており、ポルシェらしい仕上がりなのは言うまでもない。ちなみに、このポルシェ2車種にはトランスミッションのほかにサブフレームやサスペンションリンクなどシャシーコンポーネンツ、ステアリングシステムも投入されている。

国内にも導入が始まったジャガーのスポーツカー「Fタイプ」にもZFの技術が採用されている。ミッションは8速ATでパドルシフトを装備している。ジャガーはXJXFといったモデルにも同様に8速ATを採用している。その8速ATはある意味ZFの稼ぎ頭の製品であり、BMWやベントレーマセラティクライスラーなどの8速ATはこのコンポーネンツが搭載されているのだ。ちなみに、現状8速ATというトランスミッションはこのZFと日本のアイシンが製造しているだけ。8速ATと言えば、そのどちらかということで、レクサスにはアイシン製が搭載されている。

ジャガーFタイプ ZFと筆者高橋明
ジャガーFタイプでは8速ATのもたらす走りを実体験した。

試乗フィールは、動き出しはトルコンのメリットを活かし滑らかに動き、シフトチェンジはツインクラッチとの差が分からないほど素早い変速スピードだと感じる。もっともエンジン音のチューニングもしっかりされているため、ブリッピングなどの演出も素晴らしく、ロードスターを快適にそして、爽快に走らせることができるのだ。もちろん、飛びギヤシフトもする。

このFタイプには、他にシャシーテクノロジーとステアリングシステムも導入されているが、ステアリングアシストは電動ではなく油圧を採用している点はメーカーの姿勢がうかがえる。

■数多くの車両に搭載されているZFテクノロジー

他にも試乗車はたくさんあり、ZFの技術が投入されているモデルを何台も試乗できた。例えば最新のゴルフ7、アウディA5、MINI、メルセデスベンツAクラス、Eクラス、Mクラス、BMW1シリーズ、3シリーズ、オペルアストラ、カスケードなどなど、多くの車輌が用意されていた。さらにフランス車シトロエンDS3のAMTもZF製であり、VW up!のAMTも用意され、上記のジャガー系ではレンジローバーの8速AT、国内未導入だがXFのシューティングブレークの試乗車があった。

現地で配られたZFインプレッション車両一覧。あらゆるクラスに搭載されているのが分かる

ZFでは、ハイブリッドモデルのモジュール供給は、アウディQ5、BMWアクティブハイブリッド5、VWジェッタハイブリッドなどに採用されており、ZFの技術・製品はコンパクトからプレミアムモデルまで幅広く供給しているのがわかった。主な技術としてはトランスミッション、CDC(連続可変ダンパー)、そしてステアリングシステムといったところが代表的なものとして挙げられる。

こうして最終回となるワールドプレスツアーのレポートだが、サプライヤー技術を知ることでよりプロダクト(製品車輌)への理解が深まり、「なぜ、このクルマは○○が優れているのか?」という疑問が少し理解できた気がした。専門の技術や知識の集まりであるサプライヤーが、自動車メーカーと一緒に開発を進めていることを知るいい機会でもあった。

ZF社はサプライヤーとしては世界第9位という企業で、第1位はBOSCHである。他にもコンチネンタルやティッセンクルップ、マグナシュタイヤー、TRW、デンソーなど多くのサプライヤーが自動車メーカーへ技術を供給し、そして共同開発をしている。ドイツではこのサプライヤーがあったからこそ、自動車の進化ができたと説明できるだろう。

自動車メーカーとサプライヤーの関係は下請けではなく、並列の位置に存在しているということも理解できるツアーであった。今後もこのようなチャンスがあれば、どんどん参加させてもらい、レポートしていきたいと思う。

 

■ZFワールドプレスツアーバックナンバー
【ZF】多段化の最先端 最新9速ATを搭載するレンジローバー・イヴォークとジープ・チェロキー試乗
【ZF】第4世代連続可変制御ダンパーCDCとサブコンパクト向けCDC 1XL
【ZF】先端技術を体験。乗用車向け電動駆動システムとECOnnect

ZFジャパン公式サイト

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