ZF
まずZF社からは、昨年11月にプレリリースされ2011年発売予定の新型BMW X3に採用された8速AT、新開発ダンパーに関する情報が明らかにされた。
ZF製の8速ATはすでに5シリーズ、7ハイブリッドに採用されているが、今回のモデルチェンジに合わせ、X3にも採用されることになったのだ。
8速ATは6速ATと同等のコンパクトなサイズで、ワイドな変速比幅とギヤ間クロスレシオを両立。さらに、今回はエンジン・スタート&ストップも付加された。8速ATは開発当初からこのスタート&ストップ機能やハイブリッドシステムを想定したモジュラー設計になっている。
通常のATの場合、スタート&ストップ機能を働かせるには、エンジン再始動時に備えてAT油圧を確保する必要がある。そのために電動ポンプを追加する必要があるが、ZFは蓄圧・瞬時加圧メカニズム、HIS(Hydraulic Impulse Oil Storage)を装備しているのが特徴で、スプリングの力を利用して再始動時のAT油圧を瞬時に立ち上げることができ、電動ポンプよりエネルギーロスが少ないのだ。
新型BMW X3は、もちろんヨーロッパではディーゼルターボ仕様もラインアップされている。このクラスは、ヨーロッパではMTが主流のため、ZFは新開発の6速MTを開発しX3に搭載している。新型6速MTは、軽量・コンパクトはもちろん、ドライサンプシステムの採用やカーボンコートシンクロなど最新技術を盛り込み、伝達効率の向上、フリクションロスの低減を追及したユニットである。オイルパンを備えず、ギヤの冷却は直接オイルスプラッシュを吹き付けることで行うようになっている。この6速MTもスタート&ストップ機能を装備している。
ZF社は、X3用の前後のサスペンション・ユニットも供給している。フロントは初の入力分離式ストラットアッパーマウントを採用。ロアリンクはダブルジョイント式だ。リヤの5リンクサスペンションは、従来のものより小型軽量化がはかられているという。
X3もランフラットタイヤが標準装備されるが、そのためにZFは新開発のダンパーを供給している。ランフラットタイヤは剛性が極めて高いため、どうしても乗り心地が固くなる傾向にあるが、それを解消するため新たな技術を導入している。
それは、ピストンの伸び側通路に組み込む減衰バルブを改良し、ストロークが縮み側から伸び側に切り替わる瞬間に減衰力がリニアに立ち上がる特性を実現しているというものだ。伸び/縮みの切り替わり時には、通常のダンパーは正確な減衰力が発生できないか、減衰の立ち上がりが急激になりすぎるのが一般的であるのに対し、リニアに立ちがることで滑らかな乗り心地が達成できるわけである。
フォルシア
日本ではなじみが薄いが、フォルシア社は世界第6位の自動車部品サプライヤーであり、シート、ダッシュボード、内装、ドアアッセンブリー、バンパー、エキゾーストシステムなどを自動車メーカーに納入している。本社はフランスのナンテールにあり、同社のルーツはプジョーの創業(1810年)まで遡り、1987年にプジョーサイクル社とプジョースチール&ツール社が合併して、自動車用パーツサプライヤーのエシア社となり、1997年にフォルシア社に改称し、大規模サプライヤーとして成長している。
現在では世界32カ国に238の事業所と38の開発拠点を持ち、7万5000 人の従業員、3500人のエンジニアを擁している。
ジュネーブショーでは出展された新型アウディA6、RS3スポーツバック、BMW1・Mクーペ、1クーペ&カブリオレ、6カブリオレ、シボレー・アヴェオ、メルセデスベンツSLK、レンジローバー・エヴォーク、サーブ9-4X、VWティグアンに同社のパーツ、コンポーネンツが採用されているのだ。
車種を見ればわかるように、本国のプジョーやシトロエンはもちろん、プレミアムセグメントのクルマをメインにしたサプライヤーになっていることが分かる。定評のあるシート作り以外に、近年ではモジュール組立に対応したユニット開発を行っていることが特徴だ。
複雑なダッシュボードを事前に組立し、1ユニットにして自動車メーカーに供給しているのだ。ドア内装も多くのパーツを1ユニットのコンポーネンツにまとめている。このようなモジュール組立前提のユニット設計により、自動車製造ラインでの組立よりはるかに精度が高く、ネジ止めを少なくし一体化させ、軽量でありながら見栄え、質感が高いという特徴がある。ちなみにモジュール組立を最初に導入したのはアウディで、その質感の高さの源泉になっているのがモジュール組立方式なのだ。
自動車メーカー側は、事前に組み立てられたモジュールユニットをワンアクションで車体に組み付けることができるので組立工数を低減できるメリットもある。フォルシア社はそのモジュール組み立てのナンバーワン・サプライヤーなのである。