自動車部品サプライヤー大手のTRWは、世界的に需要が高まってきている歩行者の安全確保に向け、高度な歩行者保護システムを開発し、生産を開始したと発表した。
TRWはこれまで衝突センサーとエアバッグの電子制御ユニットのサプライヤーとして、長年にわたり自動車メーカーに部品・技術提供を行ってきた。特にエアバッグ機能の制御アルゴリズムの分野での評価が高く、今回新開発したシステムにもその技術が使われ、信頼性の高いシステムを構築できているという。
欧州自動車メーカーとともに生産開始された歩行者保護システムは、フロントバンパー部分に最大3個のリモート加速度センサー(RAS)を装備している。衝突時にセンサーは人体であるかないかを瞬時に解析し、データ分析が行われるECUへ継続的に加速度信号を伝送する仕組みになっている。
人体への衝突であると判断した場合、ボンネットリフター機能が作動し、ボンネットとエンジン部分との間に空間を確保し、人体への損傷を軽減するという仕組みだ。
この歩行者保護システムは、RASセンサーと独立型のECUでシステム構築しているが、TRW既存のエアバッグ制御ユニット内でソフトウエアを統合することで、コスト効率も高いソリューションの提供という一面もあるという。また、TRWが特許をもつ歩行者衝突検出アルゴリズムを採用するセンサーパッケージは、業界で広く利用されている通信プロトコルに基づいた通信インターフェースに対応でき、高い互換性と信頼性があるとしている。
そしてパッシブセーフティ(乗員安全)にも、新らたなコンセプトで軽量かつ高い信頼性のある次世代シートベルト・プリテンショナーを発表した。
火薬式シートベルトは30年にわたり市場に定着した製品だが、TRWは2001年に生産開始したESA4.0をベースに、このたびSPR4を開発した。このSPR4は衝突時などにかかるテンショントルクの伝送に、従来の金属製部品ではなくプラスチック製ピストンを採用することで、軽量かつコンパクトなパッケージングを実現したというまったく新しいコンセプトのプリテンショナーである。
作動原理は、車載センサーによってシートベルが作動すると、火薬式ガスジェネレーターが点火しグリーンガスが発生する。ガイド管内のガス圧が上昇し、プラスチックピストンが押し上げられ、ピニオンギヤを動かす。この時の力がリトラクタースプールの巻き上げる力となり、乗員が前に飛び出すことを防いでいるわけだ。この一連の動きに要する時間はわずか100分の1秒ということだ。
この新しいプリテンショナーはピストン、ガスジェネレーター、ガイド管、ピニオンという4つの主要部品だけで構成されているため、自動車メーカーに対し、パッケージングおよび搭載スペースの面でも高い柔軟性を提供することになるという。今回のSPR4の生産は2013年が予定されている。