世界有数のティア1企業であるTRWオートモーティブ社は、シートベルトに新しいシステムを採用した「ダイナミック・ロッキング・タング」(DLT)を開発した。
通常、市販車に装備されるシートベルは3点式がそのほとんどで、一定の力で引っ張るとロックして引き出せないELR機構などをもっている。近年では、車両に一定の衝撃が加わった場合、シートベルトを引き上げ、上体を拘束し怪我を低減する仕組みのプリテンショナー機能をもつものが増えてきている。
しかし、ハンドルやダッシュボードにぶつかることがなくなる反面、シートベルト自体の締め付けが強いために、ベルトによる胸への圧迫によるケガが起きてしまうことも珍しくない。
この問題を軽減すべく開発されたのが、このDLTである。DLTはバックル部分に新機構があり、差し込んで固定する部分となるタングに回転カムとバネが内蔵されている。このカムの働きにより、プリテンショナーやロードリミッターなどの機能と連動し、ベルトを締め上げすぎないように自動調整されるというものだ。
急ブレーキや衝突による力がシートベルトに45ニュートン(約4.54kg)を超える負荷がかかった場合に、DLTはシートベルトを固定し、乗員の上体を拘束するが、必要以上に締め上げないようにフォースリミッターという機能も働き、締め上げたシートベルトを緩める機能も瞬時に働く。
その結果、胸部への負荷を低減することができ、シートベルトによるケガを避けることができるわけだ。TRWによれば、自動車衝突安全テストであるNCAP(USA)、及びユーロNCAPで採用されている評価システムより、さらに厳しいテスト基準にも適合しているという。
こうした特徴を持つDLTは、多くの自動車メーカーから注目され、今後、多くの車両に装着されることになるだろう。