横浜ゴム ヨコハマタイヤのミニバン専用 ウエット性能が向上した低燃費タイヤRV02 試乗記:髙橋 明

マニアック評価vol318

ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02
テストコースの低ミュー路面を走るアルファード

横浜ゴムからミニバン専用の低燃費で、ウエットグリップの性能が向上したタイヤ「BlueEarthRV02」が2014年12月1日に発表され、2015年2月から発売が開始される。発売に先立ち、横浜ゴムのテストコースで、最新のBlueEarthRV-02の性能テストをしてみた。

BlueEarthRV-02は従来のBlueEarthRV-01の後継モデルで、タイヤラベリング制度で最高グレードのウエット性能「a」、転がり抵抗「A」にランクされる低燃費タイヤだ。タイヤサイズは195/65R15 91H~245/35R20 95Wまで全18サイズ、オープンプライスで販売される。

Blue Earth RV-01と新発売のRV-02
セダン用の「Blue Earth AE-01F」と新発売のミニバン用の「RV-02」

ニューモデルとなるRV-02の特徴は雨に強い、ミニバン専用低燃費タイヤで、ミドルクラス以上のミニバンを対象に開発されている。車種ではおもに、ボクシー/ノア、ステップワゴン、セレナ、オデッセイ、アルファード/ベルファイヤー、エルグランドなどになる。横浜ゴムではこれらのクルマのオーナーは、タイヤに何を要求しているのかを徹底調査し、それらの要求性能を満たす開発がすすめられた。

ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 トレッドパターンヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 ショルダー
▲BlueEarth RV-02のトレッドパターンとショルダー形状

要求性能としては燃費、摩耗、静粛性などを要求しつつも、ウエット路面での高い制動力や安定性など、低燃費タイヤでありながら、ウエットグリップ力を求めていることも分かった。そこで、RV-02の目標として、低燃費でありながら雨に強い、ミニバンにありがちなふらつき、偏摩耗の抑制、優れた静粛性、2列目、3列目シートでの会話も快適になるような性能を設定し、開発した。

ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 性能
従来のRV-01 とRV-02 の各性能比較

試乗会ではこれらの目標に対し、使われた技術解説も行なわれた。主に1:ウエット性能の向上では、専用のナノブレンドゴムを搭載し、低燃費性と高いウエット性能の両立に結び付けている。2:偏摩耗のさらなる抑制という項目では、RV-02専用のトレッドプロファイルにマウンドプロファイルという形状を結合している。3:ふらつき防止、静粛性のレベルアップというポイントでは、基本性能を高めた新設計非対称パターンを採用している。

横浜ゴムのテストコース「D-PARC」
横浜ゴムのテストコース「D-PARC」
ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 
BlueEarth RV-02を装着したテストカー

◆トレッドコンパウンド技術

試乗テストはRV-01との比較試乗が中心で4行程でテスト試乗した。採用された技術を踏まえながら試乗レポートをしよう。

RV-02_ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 ナノブレンドゴム分子構造
ナノブレンドゴムの分子構造。丸く細長い尻尾をもつシリカとポリマーの間にオレンジオイルを配合

まずはナノブレンドゴムという専用のトレッドコンパウンド技術についてだ。こちらは低燃費グレードAを確保しつつ、よりウエットに強いタイヤとしている。コンパウンドはポリマー、フィラー、ゴムで形成され、そこにダブルシリカを配合している。ウエット性能を高めるシリカと、低燃費性能をバランスさせるシリカをブレンドし、コンパウンド中に配合している。そしてオレンジオイルにより、ゴムをしなやかにし、路面の凸凹に密着させ、ミクロレベルで接地面積を拡大している。さらに、ブレンドポリマーを採用している。ポリマーは末端が熱で活性化し、動く。その動きがロスになり燃費に影響を与えるので、末端の動きを制限するため低発熱ポリマーをはじめとする、複数のポリマーをブレンド採用し、ポリマーの末端とシリカが結合しあうような技術で動きを抑制しているという。

テストは10mmの水深を人工的に作ったテスト路面に100km/hで侵入し、ABSが働くように急ブレーキをかける。その時の制動距離とクルマの安定性をテストしてみた。テストはRV-01を3回、新作のRV-02を3回繰り返した。

ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 ウェットブレーキ性能
水深10mmのヘビーウェット路で100km/hからフルブレーキする

制動距離では、説明によれば4mから5m短縮できるという。およそクルマ1台分手前で停止できるわけで、より安全な性能を持つことになる。実際のテストは正確に同じ場所でのブレーキング開始というスキルにおいて、難しさがあり、体感的には1m~2mは間違いなく手前で止まる。そして、車両の安定性も高く、ABS作動中でもぶれることがなく、真っ直ぐに停止していくので、安心感が高い。このウエット制動テストでは開発テストドライバーのようにはいかないが、車両の安定性はだれもが感じる安心性能だと思う。

テスト路をUターンし、次のテストに向かう路面はさまざまな路面を再現したもので、大きい入力になる凸凹のある路面も通過する。そこでは車内に入り込むロードノイズの少なさに気づく。そして大きい入力にもソフトないなしを感じ、高級な印象を持つ。RV-01もレベルは高いと感じるが、同じ条件での比較となるとRV-02は、より静粛性と乗り心地が良くなっていることが分かる。

◆マウンドプロファイル技術

偏摩耗を抑制する技術では、トレッド中央部の3本のリブにほんの少しふくらみを持たせ、走行時の均一な接地圧分布となる技術が投入されている。これは横浜ゴムのフラッグシップタイヤ、アドバンスポーツV105に使われている技術の応用ということだ。

一般的なタイヤはリブのエッジ部に面圧がかかり気味になるが、この技術により接地したとき、均一に面圧が保てる効果があり偏摩耗性を高めることができたという。じつは肉眼で確認するには苦労するほどのレベルで、エンジニアのように日々見慣れた人であれば、見た目の違いもわかるということだ。

このトレッドプロファイル決定には、ヨコハマタイヤの研究者だけが採用した設計方法がある。それは多目的設計探査という技術・手法で、工業製品には比較的用いられているということだが、タイヤ設計においては横浜ゴムだけだという。

この多目的設計探査は、国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)の開発で、三菱重工業と東北大の共同研究で作り上げたものだという。コンピュータの中で機体の形を進化させ、世代を経てどんどん良くなっていくという仕組み。さらに、得られた形状のデータを使って設計マップを作るという技術が使われているのだ。

ヨコハマタイヤ ミニバン専用タイヤ RV-02 多目的設計探査手法
横浜ゴムが独自に開発した多目的設計探査手法の遺伝的アルゴリズムのイメージ。偏磨耗と磨耗寿命のそれぞれのシミュレーションで、両方の性能がバランスする設計パラメータを選択することで最適解を見つけることができる

もう少し噛み砕くと、偏摩耗性と摩耗寿命の両立というテーマに対し、多目的設計探査技術により、徐々に変化し最適へと導いていくことができるのだ。このプロセスは遺伝的アルゴリズムと言って、生物が環境によってその姿を変えていくことに似ていることを、コンピュータシミュレーションに応用したものだ。そして自己組織化マップとして、設計情報を可視化して見ることができるわけだ。

少し難しいが、この多目的設計探査によって得た設計マップは、データを与えればさらに進化するわけで、(場合によっては退化)最適化の可視化が可能になるわけだ。つまり、従来品より優れたプロファイルを持つものができる確率が飛躍的に上昇するとも言えるだろう。

さて、試乗では偏摩耗、摩耗寿命のテストはできないが、試乗コースを敷地外の一般道でもテストできた。テストコースとは異なり実際の使用環境でも、やはりロードノイズは小さく、乗り心地がよいという印象だった。そして何よりも直進の座りがよくなるという違いを感じた。技術説明では特に説明がなかった部分だが、あきらかに性能が変化している。これも比較試乗できたために分かったことであるが、直進の安定性向上は安心感や疲労軽減にも影響するので、好ましい性能向上だと思う。

◆ふらつき防止、静粛性向上

これらの性能を向上させるために非対称パターンを採用している。パターンには以下の6つの要素が盛り込まれている。

空気圧低下を防ぐエアテックスと低燃費構造
空気圧低下を防ぐエアテックスと低燃費構造

1:ツインパワーリブ⇒幅広リブ+カットグルーブによりドライ&ウエット操縦安定性を向上
2:パワーインサイドショルダー⇒大型ブロック構成で高剛性化、偏摩耗性も抑制
3:4本のストレートグルーブ⇒非対称デザインで高い排水性により、ウエット性能を確保
4:3次元サイプの採用⇒アウトサイドの剛性をコントロール。ノイズを抑制し、耐偏摩耗性を発揮

3Dサイプ
3Dサイプ

5:グランドサイレントショルダー⇒グルーブの最適化により、パターンノイズを抑制
6:サイレントエッジグルーブ⇒インサイドのみ配置し車外騒音を低減

これらの要素を盛り込み完成したRV02パターンでさらに、ディンプルショルダー&スムースサイドという要素もある。名前のとおりタイヤショルダーにディンプルを設け、タイヤ後方で発生する気流の乱れを抑制するものだ。空気抵抗を低減し燃費に寄与するという。

ふらつき防止、静粛性向上のための技術
ふらつき防止、静粛性向上のための技術

また、RV-01からの継承技術としてエアテックス・アドバンスドライナーがある。これはゴムと樹脂を組み合わせた、横浜ゴム独自の素材をタイヤのインナーライナーに配することにより、空気圧低下を抑制するものだ。適正空気圧が低燃費をもたらすことは言うまでもない。

ゴルフボールと同様の伝プルによる空力効果も採用
ゴルフボールと同様のディンプルによる空力効果も採用。ディンプル加工は飛距離を伸ばすことが知られているように、整流効果が高い

テストは高速周回路を走った。比較用のタイヤはセダン用のBlueEarthAE-01Fで、これをセレナに装着して比較した。まず高速道路をイメージしレーンチェンジを行なう。いわゆるおつりがどの程度感じるか?という点では、AE-01Fとは比較にならないほど、安定性に違いがある。これは誰でも感じることができるであろう差だった。

さらにWレーンチェンジを試すと、AE-01Fでは危険だと感じるレベルで、1度のテストで止めてしまった。一方RV-02では、どのような姿勢変化があるかを冷静に判断できる余裕があり、その違いは歴然だ。装着するサスペンションが違うのではないかと感じるほどの違いがあり、あらためてミニバンには専用タイヤが必要だと断言する。

ウェット路での定常円旋回
ウェット路での定常円旋回

ウエット路面のテストでは、定常円旋回と低μ路でのテストもできた。車両はアルファードで、215/60-17 96H。定常円の水深は10mm。摩擦係数としては0.4~0.5程度ということだ。舵角を一定に保ち、速度をあげていったときの滑り出しや挙動変化を試した。ESCの介入があるためスピンはしないが、デバイスの作動音は聞こえるし体感もする。こちらもRV-01との比較テストだったが、RV-02のほうが滑り出しは穏やかで、ドライバーに分かりやすい挙動。だからスロットル調整も敏速に対応ができる。そして滑りをコントロールした際のグリップ力の復元でも、穏やかにグリップが戻るので、安心感がある。

一方低μ路は0.3~0.4という低いμで、車両安定用デバイスはフル稼働している。そこでも新旧を比較するとグリップ力の違いは歴然で、タイム計測こそしなかったが、RV-02はウエットグリップにおいても大きなアドバンテージをもっていることを体験した。

BlueEarth RV-02 発売サイズ表

横浜ゴム公式サイト

 

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