出光興産 合成燃料開発企業HIFに出資し、2035年に50万トン規模のe-メタノール供給を目指す

出光興産は2024年5月13日、南米・北米・豪州などで合成燃料(e-fuel)、合成メタノール(e-メタノール)のプロジェクト開発を行なう HIF Global社(本社:米国テキサス州)へ出資すると発表した。なお、HIF 社への日本企業による出資は初となる。出資額は1億1400万ドル。

HIF Global社は、低コストの再生可能エネルギーをベースに、水素を既存のインフラで輸送し、利用可能な合成燃料に変換するプロジェクトを推進する世界有数の企業だ。HIFという社名は「地球の脱炭素化を可能にする Highly Innovative Fuelsを提供する」という会社の理念を表しており、グローバルに事業を展開している。

HIF Globalは、2022年12月にチリのハルオニ実証プラントから初めての合成燃料の生産を成功。今後は、テキサス州のマタゴルダ、豪州のタスマニア、ウルグアイのパイサンド、チリのマガラネスにおいて商業規模のプラント建設を計画している。またHIF社はポルシェとも提携し、e-フューエル製造の実証実験を実施していることでも知られ、将来的にはe-メタノール換算で約400万トンの生産規模を見込んでいる。

HIF社のチリのハルオニ実証プラント

出光は今後、この出資により合成燃料およびカーボンニュートラル燃料やその原料などとして汎用性の高いe-メタノールの国内外におけるサプライチェーン構築を推進し、カーボンニュートラル社会への貢献を進めるとしている。

出光は、2050年のカーボンニュートラル社会実現へ向け、ブルーアンモニアや持続可能な航空燃料(SAF)などとともに e-メタノールへの投資を重点的に検討している。

大気中などから回収したCO2と再生可能エネルギー由来の水素を合成することで生成するe-メタノールは、今後も需要が拡大すると見込まれる船舶燃料には直接利用できる。さらに合成ガソリン、合成ディーゼル、合成SAFなどの合成燃料や、合成化学品を選択的に製造することも可能だ。こうした理由で出光はe-メタノールを戦略的に重要な製品であると位置づけており、今回の出資につながっている。

出光はHIF社に出資することで、海外拠点におけるe-メタノールおよび合成燃料の製造・開発を推進することになり、この出資により、出光からHIF社に取締役を派遣するとともに、マーケティングやプロジェクト開発分野においても人財を派遣するとしている。つまり、HIF社の e-メタノールや合成燃料の製造プロジェクトに対する開発・マネジメント等の最先端の知見やノウハウを獲得するとしているのだ。

また出光の既存の燃料油事業における供給・販売のネットワークを活用して、e-メタノール事業の市場形成と導入を早期に実行し、2035年に国内外の拠点で50万トン規模を目安に e-メタノールの供給体制を構築することを目指すことになる。

より低コストで大量にe-メタノールの供給が実現すれば、液体燃料であるだけに航空機、船舶、発電、そして自動車の内燃エンジン用としての可能性が大幅に高まることになる。

HIFグローバル 公式サイト
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