出光興産は2021年2月16日、EVベンチャー企業のタジマモーターコーポレーションと、超小型EVなどの次世代モビリティとサービスの開発を行なう「出光タジマEV」を2021年4月に設立すると発表しました。
新会社の目指す事業
新会社は、タジマモーターの関連会社であるタジマEVに、出光興産が出資してスタートを切ります。タジマEVは、かつて存在したEVベンチャーのシムドライブ(https://autoprove.net/japan-others/106033/)の継承会社で、従来から超小型EVモビリティを開発してきています。
一方、出光興産は、カーボンニュートラル、脱化石燃料の未来を見据え、全国に6400ヶ所あるサービスステーションの活用を模索しており、岐阜県・飛騨市、高山市、千葉県館山市、南房総市における出光サービスステーションを軸にした2年間の超小型モビリティ(タジマ製の超小型EVジャイアン)を使用したカーシェアリング事業「オートシェア」の実証実験(https://autoprove.net/supplier_news/showa-shell/184547/)を行なってきました。
実証実験では、高齢者層には免許返納に伴う移動のニーズが急増していること、運転経験が浅い層は日々の買い物や子供の送り迎えに自動車を利用することに不安があり、自転車や原付に代わる雨風を凌げる、安全で安心な移動手段に対するニーズがあることが分かったといいます。
他にも、近隣営業を行なう営業業種や配送業種で、一日の移動距離が15km未満であり、また車両稼働率も20%以下である業種では、軽自動車ほどの高い性能・機能は要らないと感じていることも判明しています。
こうした調査結果から、既存の移動手段ではニーズが満たされない層の存在に着目し、超小型モビリティの需要規模は年間100万台に上ると想定しています。
これらのニーズに対し、手軽で小回りの利く、必要最小限の機能を備えたモビリティと、デジタル技術を活用した利用の仕組み、また法人と個人ユースを組み合わせた新たな利用モデル(ビジネス特許出願中)を提供することで、移動に関わるコストの低減と地域課題に対する有効な解決策を提供することが可能になると考えています。さらにこうした新しいビジネスの基盤として、全国の6400ヶ所のサービスステーションがベースなることで機能させることができるというわけです。
サービスステーションでは、シェアリング用車両の配備、超小型EVの充電、保守点検、保険業務などをパッケージ化して担当します。
このような狙いから新会社を設立し、デジタル技術を活用した利用システム、法人と個人ユースを組み合わせた新たな利用モデル(ビジネス特許出願中)を提供する、従来にはない新たなMaaSサービスを事業化することになります。
今後は、サービスステーションで展開している電力販売と超小型EVを組み合わせた新たなサービスの開発、高齢者の運転状況を見守る仕組みの開発、個々の車両を蓄電池と見立てた分散型エネルギーシステムの構築、車両・バッテリーのリサイクルシステムなど、新たなモビリティサービスの開発に取り組むとしています。
新開発される超小型EV
この新事業を担う出光タジマEVの新型車両は、2021年10月の東京モーターショーで正式発表し、2022年の発売が予定されています。超小型EVの規格であるため、最高速度は60km/h以下、自動車免許は必要となります。
この新型の超小型EVは、現時点ではプロトタイプで、4人乗りのスペースを持ち、リヤシートは取り外してカーゴスペースにすることも可能。リチウムイオン バッテリーを搭載し、航続距離120km程度を目指すとしています。
ただ、この超小型EVは全国の公道を走行するため、トヨタの超小型EVモビリティ「C+pod(シーポッド)」と同様に、国交省の超小型モビリティ用の型式認証を受けるため、エアバッグやESCなどの装備を始め、衝突試験を始め安全基準をクリアする必要があります。
もうひとつの課題は生産です。従来のタジマの超小型EVは少数生産でしたが、新型モデルは万単位の量産が求められるため、新たな生産体制の枠組みが必要となり、今後は他企業との連携が必須となってきます。
車両価格は150万円程度が見込まれていますが、当面は全国のサービスステーションへの配備が優先され、シェアリング、サブスクリプションでの利用が想定されています。
なお、出光タジマEVは超小型EVの開発、販売だけではなく、車載ソーラー発電パネル、次世代バッテリーの採用、自動運転技術開発、グリーンスローモビリティ開発、新たなサブスクリプションやカーシェアモデルの展開、MaaSに関するデジタルプラットフォームの構築、リサイクルシステムの開発なども推進していく計画としています。