自動車、産業機械分野のメガサプライヤーであるシェフラーは、クルマの電動化と自動化が進む中、プロジェクトパートナーと連携して、都市内で使用するシェアリングカーのための新しいステアリング・システムのコンセプトとプロトタイプを開発している。2019年4月3日、これまで3年間の時を費やし、ドイツ連邦教育研究省から190万ユーロ(約2億4000万円)の補助金を受けている「オムニステア」プロジェクトはまもなく完了すると発表した。
直角にハンドルが切れる!
「オムニステア」の前提条件はドライブトレインの電動化で、それを踏まえ駆動システムとホイールを一体化すること、とプロジェクトマネージャーのパウル・ハイデュクが説明している。この超コンパクトなドライブ・システムにより、都市内のモビリティにおいて新しい応用分野が広がる。
そのために、シェフラーの電動ホイールハブ駆動「e-ホイール・ドライブ」(インホイール・モーター)は、未来のモビリティに最適なソリューションとされ、このプロジェクトでは「シェフラー・インテリジェント・コーナーモジュール」と、より大きな操舵角を可能にするホイール/サスペンションを組み合わせ、クルマの取り回し、操作性を大幅に高める、メカトロニックな4輪独立の操舵システムを開発した。
このプロジェクトでは市街地における駐車性能が重視され、ハイデュク氏は「ホイールの各方向の操舵角を90度とし、ホイールを個別に操舵することによる大きな利点は、停止することなく直線走行から縦列駐車に移行可能な点です」と述べている。運転者は、状況に応じて、前輪操舵、後輪操舵、全輪操舵に切り替えることができ、その場で旋回することも可能となるなど、従来のクルマでは不可能な操舵性能が実現しているのだ。
この画期的な4輪独立操舵システムにより、どんなに狭いスペースでも駐車が可能となり、来るべき都市型電動モビリティにとって最適なステアリング・システムと考えられている。
「オムニステア」プロジェクトは、カールスルーエ工科大学(KIT)の「電動モビリティにおける自動車研究のためのシェフラーハブ」研究協力の一環として、3年間にわたって実施された。参加者は、シェフラーの他に、プラバンGmbH(障害者のための革新的な自動車改造分野における世界的な市場リーダー)、ヘラー・アグライア・モービルビジョンGmbH(インテリジェントな視覚センサーシステムの開発におけるリーダー)、さらにはKITの情報技術研究センター(FZI)、車両システム技術研究所(FAST)が名を連ねている。