イスラエルのバイアー・イメージング社 4次元ミリ波レーダーで日本市場に参入【動画】

イスラエルの4次元ミリ波レーダーを使用するイメージングシステム企業、バイアー・イメージング社(本社:イスラエル)が2020年1月14日、自動車部門統括責任者イアン・ポカミエン氏は、今後日本でレーダー・イメージング技術を市場展開することを明らかにした。

東京でプレゼンテーションを行なったバイアー社の自動車部門統括責任者イアン・ポカミエン氏。手に持つのが4Dレーダー・チップ

4次元ミリ波レーダーとは

従来のイメージングシステムは、被写体や物体の輪郭をマッピングするだけだが、バイアー社の4次元レーダーイメージング技術は、物体や素材を透過した状態で、可視化することができる。

検出した物体のドット・イメージ

4次元ミリ波レーダーによるイメージングとは、3次元の空間検知に加え時間経過を重ね合わせ、空間の中で物体を透過した状態で画像のような点群で物体を検知し、その物体を可視化した状態で物体の移動を検出できる技術を意味する。

当然ながらカメラによる物体の画像検出に比べ、人間の顔などは表示しないシステムのため、プライバシーを守ることができるのも特長だ。

バイアーの超小型レーダー・イメージセンサー

レーダー波を画像化する仕組みは、多数のレーダー波の反射波を多数のアンテナでキャッチし、その反射波をドット化してCMOSセンサーにより高解像度の画像にしている。

バイアー社のショートレンジミリ波レーダーは、極めて小さなチップに40個以上の送信回路と24〜48個のアンテナを持ち、さらに柔軟性のある周波数領域(3-81Ghz)を兼ね備えた信号プロセッサーを内蔵したハイパフォーマンスなSoC(システム・オン・ア・チップ)、すなわち1チップ構造だ。

ショートレンジのため、物体の識別距離は0m〜約30mの範囲となるが、その範囲内であれば物体や人間を検出し、物体の移動状態や人間の姿勢や呼吸状態まで検知可能だという。

車内のモニタリング

車載用の用途として、最初に想定されるのが車内の乗員モニターである。デモカーではレーダーチップを天井に取り付けているが、このレーダーセンサー1個で車内の乗員の有無はもちろん、それぞれの姿勢、胸・腹部が収縮することで呼吸なども検知することができる。

天井に仮止めされた車内モニタリング用の4Dレーダーセンサー

そのためドライバーの姿勢が正常でなければ、異常が発生していることがわかる。頭を下げた居眠り状態や、呼吸の乱れや呼吸停止など健康の異変なども検知でき、それに応じて警報を行なうことができる。またリヤ席のチャイルドイートに寝かされている睡眠状態の幼児の呼吸の動きも検出できるため、車内への幼児の閉じ込め、取り残しを検出することもできる。

ユーロNCAPでは、幼児やペットの閉じ込め事故を防ぐためのモニター&警報システムが義務化されると予想されており、室内モニター・システムの需要は今後急激に増大すると予想されている。

呼吸する幼児のダミー
リヤシートに幼児がいることと、呼吸状態の波形を表示

デモでは、模擬的に呼吸する幼児ダミーの検出はもちろん、呼吸状態まで検知できていることが公開された。

こうした乗員すべてを、1個のレーダーセンサーでモニターすることができるのが大きなメリットだ。そのため、乗員の姿勢をに合わせてエアバッグの展開調整や、シートベルト・テンショナーの作動をコントロールすることもできる。また万が一の事故の場合は「e-Call」など緊急用通信システムと乗員モニタリングシステムを併用することで、乗員の生存確認も行なうことができる。

もちろんこの室内レーダーは、車載用だけではなく、民生用として介護施設での入所者の見守り、高齢者などの室内での見守り、広い施設での人間の移動の検出などにも利用することができる。こうした場合は、風呂場やトイレなどもカバーでき、同時にカメラ画像を使用しないためプライバシーも保たれるというメリットもある。

運転支援システム

高度運転支援システムや、今後の自動運転では、車両の周囲360度を常時モニターする必要がある。そのため、これまでは複数のレーダー、4個以上のカメラ、さらに超音波センサーなどを併用している。

デモカーのフロント・ナンバープレート部にバイアー社のセンサーと比較用のカメラ
が装着されている
フロントに装着されたバイアーのセンサー。透過性があるため、正式にはバンパー内部やフロントグリル内部に設置が可能

これに対してバイアー社のレーダーセンサーであれば車両の前後左右に4個配置すれば360度の障害物、歩行者などの検知が可能で、ミリ波レーダーのためカメラが不得意な夜間や天候が悪い状態でも正確に対象物を検知することが可能だ。

バイアー社のレーダーセンサーは、0m〜30m以内であれば、170度という広角をカバーできるため、車両には前後左右4個装備すれば十分で、従来のカメラ、レーダー、超音波センサーを複数併用するシステムに比べ、圧倒的にコストを低減できるのが大きなメリットとなる。

車両の前方から歩行者が接近するケースのデモ。左がレーダーセンサーの検知状態をトップビューで表示(実際は3次元検知になっている)。右は広角カメラによる検知画像。赤が歩行者で、グリーンは静止物を表す

さらに歩行者の状態や自転車などの動きも、従来のミリ波レーダーに比べより詳細なドット・イメージとして検出できるため、より正確に危険を検知することができる点でも優位性がある。

そのため、衝突回避ブレーキだけではなく、アダプティブ・クルーズコントロールでは自動車間距離の維持、駐車支援システム、ドア・オープン時の危険警報システムなど幅広い用途が想定されている。

バイアー・イメージング社

バイアー社は、元インテルの役員やイスラエル国防軍のチーフエンジニアが2011年に創業したベンチャー企業だ。そして同社が開発した4次元レーダーセンサーは、自動車、スマートホーム、リテール、農業、ロボティクスなど幅広い分野で応用されており、すでに大手自動車企業や、シリコンバレーのメジャーな企業のスマートホーム向け製品などと提携を行なっている。

またこうした成長に合わせ、280億円以上の投資による資金調達も実現しているという。

日本においてはマクニカが代理店となり、民生用はすでにソフトバンクと提携し、車載用(79GHz)はアイシンと提携。さらに複数の自動車メーカーとのパートナーシップを結んでいる。

バイアー社は2018年に自動車規格の車載用の開発をスタートしており、2021年には量産を開始する計画だ。
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バイアー 公式サイト
マクニカ 公式サイト

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