ミシュラン、新バス/トラック用ワイド・シングルタイヤで攻勢

日本ミシュランは2019年3月12日から東京ビッグサイトで開催された「2019 NEW 環境展」にトラック/バス用タイヤ、産業・建設作業用車両タイヤなどを出展し、メディア向けに説明会を開催した。

「2019 NEW 環境展」のミシュラン・ブース
「2019 NEW 環境展」のミシュラン・ブース

人手不足解消はタイヤから?!

プレゼンテーションでは、運輸業界の深刻な人手不足、ドライバーの高齢化の問題、さらに運輸業界共通の長い労働拘束時間などにより、若年ドライバーや女性ドライバーが就業しにくい環境にあり、こうした現状では人手不足型倒産も拡大しているなど課題が説明された。

ミシュランのトラックバスタイヤ事業部の高橋敬明執行役員
ミシュランのトラックバスタイヤ事業部の高橋敬明執行役員

そこで、ミシュランは女性や経験の浅い、若年層のドライバーでも扱いやすい、働きやすいトラック車両を実現することで運輸業界の人手不足や就労者年齢の拡大、女性ドライバーの新規就労を促すことができるという提案を行なっている。そのソリューションとなるのが、大型トラック/バスの駆動輪用のワイド・シングルタイヤ「X One」の導入だ。

大型トラックやバスの駆動輪は、通常、接地荷重を減らすためにダブルタイヤとなっているが、ミシュランはワイド幅のシングルタイヤを開発し、海外市場では2000年から、日本には2007年から導入している。2018年秋にはこのタイヤのリトレッド(再生)の販売も開始した。さらに2019年2月に「X One」の最新シリーズとして「X One ライングリップ D」を発売している。「X One ライングリップ D」は全天候の路面でグリップ性能を従来より高め、転がり抵抗をさらに低減している。

ワイド・シングルタイヤ「X One」。サイズは455/55R×22.5
ワイド・シングルタイヤ「X One」。サイズは455/55R×22.5

ホイールとセットで100kg軽量できる

アルコア社製のトラック/バス用アルミホイール(22.5×14.00)に組み付けられる「X One」は、ダブルタイヤ方式に比べ1軸当たり約100kg軽量となる。2軸駆動トラックの場合は200kgも軽くなるわけだ。トラックの積載時の総重量は規制されているため、こうした100kg単位の軽量化は積載量の増大という大きなメリットが得られ、輸送効率が向上する。

「X One」タイヤの主なメリット
「X One」タイヤの主なメリット

それ以外に、低転がり抵抗による燃費の向上、シングルタイヤならではのメンテナンス費用低減、使用後の廃棄タイヤ数の低減、パンク率の低減、操縦安定性の向上など多くのメリットがある。このタイヤを実際に使用したユーザーからは、ハンドリング性能の向上、燃費の向上、軽量化の効果により積載量が増大したといった高い評価が得られているという。

圧倒的長寿命と性能確保のマジック

もちろんこのタイヤは耐摩耗性も傑出しており、さらにリグルーブ(摩耗した状態のタイヤに新たに溝を切ることで寿命を25%延長させる技術)、リトレッド(摩耗し尽くしたトレッド面に新たにトレッド・ゴムを接着する技術)により圧倒的な長寿命と初期性能が長期間にわたって維持できるという特長も持っている。

従来のダブルタイヤ方式からシングルタイヤ+アルミホイールへ切り替えるために、採用企業にとっては初期導入費用が高くなるため、日本ミシュランはホイール購入サポートやレンタル・プログラムを用意して市場へアピールしている。

事故を未然に防ぐことも

「X One」ワイド・シングルタイヤを採用した場合、ダブルタイヤの場合のようなスペアタイヤは搭載しないので、ドライバーの不安を解消することはもちろん、安全性、経済性を高めるためIoT技術を採用した「ミシュランTPMS(タイヤプレッシャーモニタリングシステ)クラウドサービス」も展開している。

クラウドを使用したミシュランTPMSクラウドサービス
クラウドを使用したミシュランTPMSクラウドサービス

これは各輪にタイヤセンサーを装備し、そのセンサーからクラウドに10分に1回といったペースでタイヤの空気圧やタイヤ温度の情報が送信され、この情報はクラウドを通じてミシュランのレスキューネットワーク、タイヤ販売店、運輸業者の運行管理者などに共有されるという画期的なシステムだ。

2軸駆動トラックに装着された「X One」
2軸駆動トラックに装着された「X One」

例えばスローパンクチャーやブレーキの引きずりなどによりタイヤ温度が上昇し始めたような場合は、登録先に自動でタイヤの異常を警報するメールが送信されるようになっており、パンクやバーストに至る前に対処できるようになっている。大型トラックの場合、パンク、バーストなどによりストップすると、修復に高い費用と長い時間を要し、さらに運輸業務にも大きな影響を与えるので、パンク、バーストが発生する前に対処できることは大きな利点となるのだ。

リグルーブされた「X One」(左)と、リトレッドされた「X One」(右)」
リグルーブされた「X One」(左)と、リトレッドされた「X One」(右)」

「X One」タイヤと、ミシュランTPMSクラウドサービスを組み合わせることで、業務効率が改善され、積載性の向上により輸送効率が高まり、高耐摩耗性と摩耗が進んだ時点でのリグルーブ、リトレッドによりランニングコストも低減できる。さらにクラウドサービスにより安全性、安心感の向上なども実現し、運輸企業にとっては革新的なタイヤと管理システムで、最近の新型トラック、バスにも純正オプション化されつつある。

「X One」タイヤは、導入時に高価格であること、スペアタイヤを装備しないことの不安感などから、まだまだ日本の市場での導入実績は少ないが、日本ミシュランは軽量、高耐久性、優れたハンドリング性能などのセーリングポイントを今後も強くアピールしていくとしている。

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