世界耐久選手権(WEC)レース・シリーズのLMGT3カテゴリーにタイヤを独占供給しているグッドイヤーは2024年5月20日、レース用タイヤにおいてサスティナビリティへの取り組みについて発表した。
グッドイヤーのレース用タイヤは、ドイツのハナウにある最新設備を導入した工場ですべてを製造している。この工場は、国際サステイナビリティ・カーボン認証(ISCC PLUS)を取得しており、これは、グッドイヤーがサステナビリティの2大目標である循環性とトレーサビリティの推進に取り組んでいる証明のひとつとなっている。グッドイヤーのレース用タイヤにはバイオベースおよびリサイクル素材を使用しており、これにより、限りある資源の需要を減少させることができるのだ。
すべてのLMGT3タイヤは約33%がサステナブル素材で構成されており、これは、現在GTレースで使用されているすべてのレースタイヤの中でも、その割合が最も高いもののひとつだ。サステナブル素材には、天然樹脂、カーボンブラック、ポリマー、リサイクルスチールなどが含まれ、ウェット用タイヤには籾殻灰シリカが使われている。
サステナブルな生産を実現するためには、生産量そのものを減らすことも重要だ。グッドイヤーは2020年に世界選手権レベルの耐久レースに復帰したが、それ以来、耐久レースにおけるCO2排出量を削減することを最大の目標の一つとして取り組んできている。
2022年に、グッドイヤーはスリックタイヤのコンパウンドを1種類に絞り込み、タイヤの生産本数を大幅に削減した。複数の種類のコンパウンドでレースをする場合は、チームや路面状況に合わせるため、相当な本数のタイヤを生産するが、タイヤの種類をシンプルにすることで必要になるタイヤの本数をより正確に予測できるため、結果的に生産本数を減らすことができる。このような取り組みで、シーズン中のタイヤ生産本数を約33%も削減することができた。
また、WECではFIAの世界選手権として初めて、2023年からタイヤウォーマーの使用が禁止されている。これは、タイヤメーカーにとって様々な点でサステナビリティの向上に寄与する。各レースに輸送する機材の量を減らし、ロジスティクスを簡素化することができ、さらに、レースにおけるタイヤを暖めることに使用されるエネルギー消費を大幅に抑えることができる。グッドイヤーは2022年にタイヤウォーマー廃止に対応するための新しいタイヤを開発した。このタイヤは、タイヤウォーマーなしでも短時間でウォームアップできるように設計されている。
耐久レースでは、同じタイヤでより長い距離を走れることが重要で、グッドイヤーのLMGT3タイヤはそれを実現している。2024年のル・マンでは、1セットのタイヤでF1レースの3倍もの距離に相当する5スティントの走行を可能にしている。
この他では、2024年からグッドイヤーはレース用のタイヤと機材の運搬に海上輸送を採用している。これにより、レースに関わる物流はより持続可能なものとなるのだ。長距離の航空輸送は、1トンの貨物を1マイル輸送するのに、海上輸送の47倍の温室効果ガスを排出すると言われており、海上輸送によるCO2削減効果は大きい。
グッドイヤーの耐久レース・プログラム・マネージャーのマイク・マクレガー
「私たちは、モータースポーツ活動におけるCO2排出量の削減に全力を注いでいます。タイヤや機材の輸送量を減らしたり、タイヤに使われるサステナブル素材の割合を増やしたり、これらすべては、モータースポーツにおけるサステナビリティの基準を作ることに貢献すると考えています。さらに、グッドイヤーのモータースポーツ活動は、一般道を走るためのロードタイヤの未来にも貢献しています。グッドイヤーのレースタイヤ開発チームとロードタイヤ開発チームは緊密な連携を取ってモータースポーツ活動に取り組み、それが継続的なタイヤ技術の進歩につながります。そして、その進歩は世界中のドライバーに享受されています」と語っている。