デンソー 前代未聞の燃料ポンプ不具合が引き起こした大量リコールの影響

デンソーは2024年2月2日、2024年3月期の第3四半期決算を発表した。第3四半期の連結業績(2023年4月1日~2023年12月31日)は、売上収益5兆3549億円で前年同期比15.5%増となり、営業利益は2386億円で前年同期比で11.0%減、税引前利益2887億円で前年同期比で3.2%減となった。そして大量に発生している燃料ポンプのリコールに係る費用として、前回予想の412億円から、新たに1518億円が追加されている点に注目したい。

2024年1月26日に各自動車メーカー(自動車メーカー:スバル、スズキ、マツダ、三菱、2輪メーカー2社)からデンソー製の低圧燃料ポンプを採用している48万台のリコールが届け出された。この燃料ポンプの不具合はメーカー10社で、合計25回のリコールが行なわれている。

国内で累計約430万台が対象となり、もちろん日本から輸出された車両も同様の不具合があり、例えばホンダだけでもアメリカ市場で260万台と驚くほど大量のリコールの原因となっている。ホンダだけで全世界で450万台のリコール台数に達するというのだ。

一連の燃料ポンプに関するリコールは2020年3月以降相次ぎ発生している。いずれも燃料タンク内の低圧燃料ポンプで、燃料を吸い上げるための「インペラ」(樹脂製の羽根車)の部品を作る金型を変更したことで不具合が発生するようになった。

結論的には樹脂の密度が低いものが生産され、使用しているうちにガソリンタンク内で樹脂製のインペラが膨張し、燃料ポンプケースと接触して作動不良となり、エンジンが停止するなどのトラブルを発生させている。

燃料ポンプの構造そのものはきわめてシンプルで、一般的に寿命が長い部品とされる。インタンク型の燃料ポンプは、ガソリンに浸された状態でモーターがインペラを回転させ、タンク内のガソリンを汲み上げて、燃料パイプを通じてエンジンに圧送するという仕組みだ。インペラの回転によりガソリンの吸い込み口と吐出口で液体摩擦の作用で圧力差が生じ、その2.5mPa程度の低圧力でガソリンがエンジン側に圧送されるのだ。

問題の低圧燃料ポンプが採用された時期は2013年9月2日。トヨタ車を始め、ほとんどの自動車メーカーの車両に幅広く採用されている。そしてこの燃料ポンプでのリコールが発生したのが2020年からで、約7年間で樹脂製のインペラが膨張・変形したことになる。

リコールが行なわれる前提として、自動車メーカー側で不具合の調査、分析が行なわれ、サプライヤーからの納入部品の場合は、サプライヤー、つまりデンソーも共同して調査、分析が実施されており、当然ながらデンソーも早い段階でこの不具合を把握しているはずであるが、有効な対策は最近まで実施されなかった。

燃料ポンプの製造後、車両に搭載し、さらに一定期間の使用を経て不具合が発生しており、様々な条件が重なっているため、根本的な原因を摘出できなかったと推測できる。

しかし、リコール理由としてはいずれも「ガソリンエンジン車の低圧燃料ポンプのインペラ(樹脂製羽根車)の成形条件が不適切であったため、樹脂密度が低くなって、燃料により膨潤して変形することがある」とされており、樹脂製のインペラの耐久性に問題があったことは明白だ。

その背景には、生産品の長期的な耐久信頼性試験の不足があったことは否定できないであろう。

デンソー 「リコール対象の燃料ポンプが搭載された車両をお使いのお客様へのお願い」:https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2023/20231222-02/

デンソー 「当社製燃料ポンプに関する対応について(続報)」:https://www.denso.com/jp/ja/news/newsroom/2024/20240126-01/

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COTY
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