メガサプライヤーのコンチネンタル社は2022年1月5日からラスベガスで開幕した国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES2022)に現在開発中の最新技術を出展した。
現在の自動車技術は、コネクテッドカー、自動運転システム、そしてソフトウェア定義型の車両へと大きく変化している。コンチネンタルは、サーバーベースのアーキテクチャーのための包括的なソリューションを提供し、例えばフォルクスワーゲンのID.電気自動車シリーズでボディ用の高性能コンピューター(HPC)を市場に投入した最初のサプライヤーとなるなど、次世代の技術を牽引している。
車両コックピット、データ管理、通信による常時接続の技術、安全性と運動性能の向上、自動運転など分野に特化したHPCのプラットフォームに加えて、コンティネンタルは現在、クロスドメイン(異領域の複数コンピュータ接続)HPCのためのモジュール型プラットフォームソリューションを提供している。
コンチネンタルが提供する最初のクロスドメインHPCは、中国の大手自動車メーカーの電気自動車および車両制御領域を統合するシステムとして供給される予定だ。
コンチネンタルのクロスドメイン機能を強化した拡張性のあるゾーンコントローラーソリューション、つまりゾーンコントロールユニット(ZCU)は、センサーやアクチュエーターの近くの物理ゾーンに位置し、通信ゲートウェイとして機能。これにより最適化されたな電力分配を提供し、信頼性の高い実行を保証することができる。このため、コンチネンタルのモジュラープラットフォームソリューションにより、自動車メーカーは将来の車両アーキテクチャに最適なものを選択することが可能になる。
また、コンティネンタルは、ソフトウェアと強力なITインフラが、新しい機能を実現し、モビリティを変革していることもプレゼンテーションしている。
このモジュール式のハードウェアとソフトウェアプラットフォームは、車両をクラウドに接続。これにより、ドライバーは、迅速かつ便利なソフトウェアアップデートをダウンロードすることで、車両の性能向上や今後必要な機能を取得することができるのだ。
コンチネンタルは、シームレスで革新的なモビリティ体験の実現に向けて、様々な開発を行なっている。例えば、シャイテック・ディスプレイは、ボタン、ライト、スイッチで構成される操作面は隠され、全く新しい方法でディスプレイと一体化させている。ユーザーのために、多くのコントロールオプションが常に用意されている一方で、関連するコンテンツのみが表示されるシステムになっているのだ。
つまりこのシャイテック・ディスプレイは、「何もない」黒いディスプレイ表面や多数の物理ボタンを設置するのではなく、木目、カーボンファイバー、レザーに似せたエレガントな表面とし、より魅力的なコックピットデザインを実現する。ディスプレイは、ダッシュボードの幅をフルに活用したピラーtoピラーの配置とし、あるいは従来ディスプレイが使用されていなかった場所にドライバーと乗員のための全く新しいインタラクティブな領域を作り出すことも可能なのだ。
ディスプレイエリアの拡大は、自動車のインテリア全体におけるトレンドの一つではあるが、これはドライバーにとって危険につながる可能性がある。コンティネンタルは、CESで初めて受賞歴のあるスイッチャブル・プライバシー・ディスプレイを発表した。
これは、ドライバーの注意力を散漫にすることなく、助手席の乗員がエンターテイメントを楽しむことを目的としたディスプレイ。この技術により、同乗者はドライバーの視界の外でビデオやマルチメディアコンテンツを楽しむことができる。
プライベートモードでは、強い指向性を持つバックライトにより、表示映像は助手席からしか見えないようになっている。必要に応じて、また交通状況が許せば、ディスプレイをパブリックモードに切り替えて、ドライバーと同乗者が選択したコンテンツを体験することもできる。
車内でのエンターテインメントが普及するにつれ、ドライバーの注意力散漫を防ぐために、スイッチャブル・プライバシー・ディスプレイのような技術は欠かせないとされているわけだ。
コンチネンタルは安全面でも新たな技術を投入している。逆走運転による事故は、米国では毎年400人近くが死亡しており、最も悲惨な事故の一つとなっている。コンチネンタルのシステムはドライバーに逆走車を警告し、安全を促進する「Wrong Way Driver(逆走車警報)」システムのデモを実施した。逆走車の位置、速度、進行方向に関する早期警報により、他のドライバーはいち早く安全対策を講じることができる。
この技術は、コンチネンタルのセンサー、コネクテッドビークルシステム、マップアルゴリズムの組み合わせにより構成されている。自己学習型のシステムで、路側機と連携して車線と進行方向を定義。完全没入型のデモでは、ユーザーがクルマの運転席に座って、逆走したドライバーとのシナリオを体験。参加者は、運転シミュレーションでコンチネンタルの技術がある場合とない場合の状況を体験できるようになっている。
また今回のCESでは、パートナーであるAEye社とともに、長距離LiDAR「HRL131」を初公開した。このレーザー光による精密なセンシング技術は、将来の自動運転モビリティを実現するために不可欠だ。
HRL131は、レベル3、レベル4の自動運転システム向けの、マイクロエレクトロ・メカニカルシステムベース(MEMS)のLiDAR。この高性能LiDAR技術は、高い動的空間分解能と長距離検出を組み合わせることで、乗用車および商用車に適合することができる。
そのスキャニングパターンは、各種の車両の要件に適応するように完全にカスタマイズすることが可能だ。これにより、このセンサーは、高速道路から密集した都市部の道路まで、自動運転にとって最も困難で動的な環境にも対応できるように設定されている。
HRL131は2024年の生産開始を目指しており、現在量産中のコンチネンタルの車載用短距離LiDAR「HFL110」とともに、自動車市場で量産される世界初の高解像度固体長距離LiDARセンサーとなる。