この記事は2019年8月に有料配信したものを無料公開したものです。
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グローバル・サプライヤーのコンチネンタルは2019年7月上旬に、9月12日〜22日に開催されるフランクフルト モーターショー2019のための出展テーマや、これからの技術開発の方向性を発表した。
EUのCO2削減政策の衝撃
コンチネンタルは、自動車用の部品開発・製造だけではなく、自動車に関する総合システムサプライヤーであり、例えば個々のエンジン関連部品のラインアップと同時に、エンジンの制御システム開発などもカバーしている。そのため、自動車メーカーからの受託により、エンジンの制御システムからECUの開発製造までを担当することも珍しくない。
しかしコンチネンタルは、欧州連合(EU)が2018年12月18日に発表した「2030年における乗用車、小型商用車のCO2排出量」を、2021年時点での排出量に比べ全体で37.5%削減するという決定を受け、改めて次世代の戦略を計画し直す必要に直面した。
このEUの2030年におけるCO2排出量の2021年比37.5%削減案は、すべての新型車に一律に適用されるのではなく、各自動車メーカーの販売車種構成と販売台数などをベースにした、企業平均値として課せられ、自動車産業全体で37.5%の削減が実現できるようにするという政策だ。
内燃エンジンだけを搭載するクルマの生産の終わりの始まり
具体的には2021年の企業平均目標CO2は95g/kmであるが、2030年には60g/kmが目標値となる。ちなみに2019年モデルのヨーロッパ仕様のトヨタ プリウスハイブリッドは75g/km〜84g/kmで、このデータからも2030年規制の厳しさがわかる。
もちろんヨーロッパの自動車業界からはこの決定に批判の声が出ており、欧州自動車工業会は「技術的、社会・経済的な現実を考慮しない完全に政治的な動機に基づいた目標だ」と声明を発表した。すでに電動化へ大きく舵を切っているフォルクスワーゲングループのヘルベルト・ディースCEOでさえ「投資計画の見直しが必要」と語っているほどだ。だが、現在のCO2削減の強いトレンドに対して、強硬に反対はしにくい状況にあることも事実である。
各自動車メーカーや、コンチネンタルのようなメガサプライヤーにとって、これまで想定していたCO2削減シナリオの予想を上回るこの政策決定は、大きな衝撃を生み出した。各自動車メーカーごとの計算が現在行なわれている最中だが、少なくとも従来の想定よりはるかに多数の電気自動車、ハイブリッド車の生産が求められることは言うまでもない。言いかえれば、もはや内燃エンジンだけを搭載するクルマの生産の終わりの始まりだと受け止められている。
2025年に内燃エンジンの開発は終了?
コンチネンタルでは、これまで数千人のエンジニアが内燃エンジンの研究・開発に従事してきているが、やがて終焉を迎える内燃エンジンの開発はどうするか、多数のエンジニアをどうするのかは大きな問題となる。
コンチネンタルの経営陣はEUの政策に対応し、2025年までに開発を進めている内燃エンジンが最終世代とするというシナリオを固めつつある。2025年までに最終世代の内燃エンジン開発に着手し、2030年頃に量産段階を迎え、電動化技術と組み合わせ、その後約10年間は量産されると予測している。つまり、この時点では少なくとも20世紀以来のパワートレーン関連技術は終焉を迎え、電気自動車やハイブリッド車等の電気駆動車だけが生き残るというのだ。
そして2040年代には内燃エンジンだけのクルマの生産は終了するというのだ。この前提に立てば2025年以降内燃エンジンの開発はないのだ。
こうしたシナリオを想定すると、コンチネンタルのようなメガ企業は、エンジニアの採用方針や、現在雇用している多数の内燃エンジン/パワートレーン担当のエンジニアのこれからの処遇にも大きな問題となるだろう。
そして、コンチネンタルは自動車業界のトレンド、次世代のクルマのあるべき姿を反映した数多くのイノベーションを「Mobility is the Heartbeat of Life (モビリティは生命の拍動)」 というテーマで表し、フランクフルトモーターショー2019に臨む。
コンチネンタルのエルマー・デゲンハート取締役会長は、「30億ユーロ(3550億円)を研究開発活動に投資し、我々は自動車産業界のその誕生以来最大の変革を推進していきます。代替ドライブシステム、すなわち電気駆動化、自律・自動運転向けのテクノロジー、コネクテッドカー向けテクノロジーはこれからのモビリティにおける最も重要な要素です。我々の目標は、環境的にも社会的にも受け入れられる新技術を開発することなのです」と語っている。そしてこの方針に基づき次のような技術開発が進行している。