コンチネンタル 完全自動運転バスなど最先端技術を試乗

【コンチネンタル テックライド2018】

コンチネンタル・ジャパンは2018年10月23日、同社の旭テストセンターで「Tech Ride(テックライド) 2018」を開催した。この「Tech Ride 2018」は、コンチネンタルの最新技術を搭載したクルマの試乗会で、メディア向けだけではなく、日本の自動車メーカーのエンジニアにも最新技術をアピールするために開催されている。

プレゼンテーションを行なったバート・ヴォーフラム社長
プレゼンテーションを行なったバート・ヴォーフラム社長

テストコースでの試乗に先立ち、コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンのバート・ヴォーフラム社長が、現在のコンチネンタル社と日本でのビジネス展開の現況や製品ラインアップのプレゼンテーションを行なった。日本での従業員数は1600人以上で、その半分以上がエンジニアだ。そして研究・開発拠点は、本社の横浜、愛知県の豊田に、そして営業オフィスは、東京、宇都宮、浜松、広島、大田の各市にあり、近年は日本の自動車メーカー向けのビジネスが急速に拡大している。

早速コンチネンタルが開発中、あるいは新製品によるテストコースでの体験&試乗会の内容を紹介しよう。

スマートフォンのアプリで呼び出せる無人バス
スマートフォンのアプリで呼び出せる無人バス

無人走行バス「CUbE」

日本初公開となる無人バス「CUbE」だ。「CUbE」とは「Continental Urban mobility Experience」の略だ。大都市圏での短距離移動手段、シームレス・モビリティの実現を目指す電動・無人バス/コミューターは、コンチネンタルだけではなくZF、ボッシュ、トヨタ(e-パレット)などから提案されている。コンチネンタルは、自動車メーカーではないので無人走行車両を製造するのではなく、無人走行を実現するセンサー類やシステムを開発するためのデモ用車両として製作し、3台はドイツにあるが、その1台が日本にやってきたのだ。

ベース車両はフランスの「イージーマイル」社(リジェ・グループとロボソフトの合弁メーカー)の電動小型バスだ。この車両も無人走行を目指して開発されているが、コンチネンタルは独自のセンサーを搭載した。

フロント左右に各2個のミリ波レーダー、リヤ左右に各1個のミリ波レーダ、前方カメラ1台、360度サラウンドビュー・カメラが4個、前方にヴェロダイン製LiDA、そしてルーフにGPSアンテナを装備。なおフロントのLiDARは、今後はコンチネンタル製のLiDARに置き換えられる予定だ。

フロントガラス下にカメラ、車両正面中央にLiDAR、バンパーの左右に角度をオフセットしたミリ波レーダー各2個が見える
フロントガラス下にカメラ、車両正面中央にLiDAR、バンパーの左右に角度をオフセットしたミリ波レーダー各2個が見える

デモのシナリオは、ユーザーがスマートフォンでこのバスを呼ぶと、決められたルートを走りながら、このバスがやって来るというもの。ユーザーが乗り込むとバスは無人走行で次の決められた目的地に向かう。実際に乗り込んでみると、電動車のため電車のようなモーター音を響かせながら走る。最高速度は18km/hで、大工場の構内、団地や大学の敷地内の移動、過疎地域でのコミュニティバスなどの用途が想定される。

走行ルートはGPS情報と地図情報で決めることができ、現状でもGPSによる位置精度は1〜2cm以内と高精度である。また、この無人バスはNVIDIAの自動運転プラットフォームを採用し車両の制御を行っている。そのためデモでは、信号、バス停留所の認識に加え、人間による交通手信号にも対応することができ、デモ走行でも人間の手信号指示に従って走行する状態が体験できた。

ターン・アシスト

ターン・アシストとは、右折時に直進車との衝突を防止、衝突被害軽減する自動ブレーキ・システムのことだ。このターンアシストは、近い将来にユーロNCAPのテストに追加されると予想されている。

左が直進車。黒いパサートが左折しようとして、直進車を検知して自動ブレーキがかかる
左が直進車。黒いパサートが左折しようとして、直進車を検知して自動ブレーキがかかる

これに対応しテスト車には第4世代のロングレンジのミリ波レーダーを装備。テストカーが右折しようとした時、直進車が迫ってくると警報を発し、それでもブレーキを踏まないと自動緊急ブレーキが作動するようになっている。

ちなみにこのテストでは、万が一の危険を想定し、直進車はラジコン操作される実物大のダミーカーだ。このダミーカーは15km/hで直進し、テストカーは20km/hで右折するシーンで行なわれ、ダミーカーが直進を続けるとテストカーのレーダーがその直進車を検知し、急ブレーキがかかって停止した。

次世代の多機能カメラ(MFC500)

「MFC500」は2020年のユーロNCAPに対応するために開発された最新の多機能カメラで、今回初めて公開された。このカメラはニューラルネットワークをベースにした物体認識機能を持ち、機械学習をすることで認識能力を高めることができる。また、従来より格段に広い125度という視野角、上下画角95度を持ち、夜間など低照度での検知性能も高められている。

カメラと制御ユニットが一体化されたMFC500カメラユニット
カメラと制御ユニットが一体化されたMFC500カメラユニット

このため、ユーロNCAP2020に適合できる運転支援機能はもちろん、部分自動運転を含む高度運転支援システムまでカバーできる能力を備えている。そのため、オートライト、対向車を考慮した車線逸脱警報&支援システム、広い範囲での自動緊急ブレーキ、ACCや自動運転のために道路標識の検知・認識、地図の作成能力を備えており、地図座標をクラウドに送信することも可能だ。

MFC500カメラによる物体認識イメージ
MFC500カメラによる物体認識イメージ

このカメラの特長は、対象物体を色分けして分類し、学習を積み重ねることで対象物体をより正確に認識できるようになるということだ。今回のテストでは、実際に路上を走り、道路、交差点、信号などを色付けして認識している様子がデモンストレーションされた。
カメラ 物体認識 デモンストレーション

多機種カメラの複合使用

このデモは、現在の多機能カメラと車体全周の視野を確保する4個の360度ビュー・カメラを組み合わせる車線維持機能や渋滞時の追従支援、駐車支援などを行なうもの。360度をカバーする近距離広角カメラにより、走行中でも車線、近距離の障害物、歩行者などを検知でき、従来の単眼カメラのみの視野を大幅に広げ、よりアダプティブクルーズコントロールや自動パーキングの能力を高めることができる。しかもこれらのカメラユニットはすでに量産しているもので比較的ローコストである。
カメラ 物体認識 デモンストレーショ

ただ、複数のカメラが捉えた物体の識別技術、物体の認識の学習には最新の技術を投入。この技術デモ走行では、この5個のカメラの組み合わせにより、ニューラルネットワークとディープラーニング機能により約64階調の色(クラス)分けで対象物を判定できることが示された。車両の走行中のレーンを認識し、急カーブや交差点なども把握でき、路面の判定も行なうことができるという。

歩行者のカメラによる認識イメージ
歩行者のカメラによる認識イメージ

したがって、高機能のアダプティブクルーズコントロールだけでなく、部分自動運転まで対応できる能力を持っている有望な技術だ。

ブレーキbyワイヤー(マーク C1 Evo)

機械式のマスターシリンダー、ブースターを廃止し、電動モーターによってブレーキ油圧を制御するブレーキbyワイヤーシステムで、従来のマーク C1を改良し、電力消費やコストを低減した製品が「マーク C1 Evo」だ。
ブレーキbyワイヤー マーク C1 Evo

ちなみにこの製品の採用第1号は、アルファロメオ・ジュリアだ。ブレーキbyワイヤーのため、ブレーキペダルを踏んだ時のフィーリングは擬似的にシミュレーターで作られ、感覚的にはよくできた通常の油圧ブレーキのフィーリングで、実際にテストカーでブレーキを踏んでみても、フィーリングがよく、コントロール性も優れていると感じた。

また、電子制御のブレーキbyワイヤーのため、万が一にシステムが失陥した時はバックアップ機能が働き、そのバックアップも失陥した場合は前輪のみの非常ブレーキがかかるようになっている。こうしたシステム・エラーを前提にしたバックアップ機能は、自動運転車には必須とされているのだ。

ドラムブレーキ用電動パーキングシステム

電動パーキング・ブレーキシステムは、リヤブレーキがディスクブレーキの車両から普及が始まったが、リヤ・ブレーキがドラムブレーキの車両、つまり軽自動車やA、Bセグメント用に開発されたのがドラムブレーキ用電動パーキングシステムで、すでに販売が開始されている。
ドラムブレーキ用電動パーキングシステム

電動パーキング・ブレーキは単にパーキングブレーキを電動化しただけではなく、自動リリースができるためオートブレーキホールド機能が得られ、非常ブレーキとして使用する場合は横滑り防止も付加される。片側路面がドライ、もう片側がウエット路という左右の路面がミューが違う状態でも、この電動パーキングを作動させると左右に振られることなくブレーキが掛けられる。このように従来のハンドブレーキ式より高機能になるのがメリットだ。最大ブレーキ力は0.2G。

今回のテストでは、坂道の上り、下りの途中でのパーキング、オートブレーキにより坂道の影響なく自然な発進ができることが体験できた。

e-ホライゾン(クラウド経由のセルラー車車間通信)

コンチネンタルが提唱する「e-ホライゾン」は、車両からの各種情報をクラウドに送信し、クラウドから他車に情報配信するシステムで、地平線のはるか前方にいる車両と情報交換できるため「e-ホライゾン」と名付けられている。

走行中の車両の車載カメラの情報がクラウドを経由して後続車に送信される
走行中の車両の車載カメラの情報がクラウドを経由して後続車に送信される

今回のデモでは、運転支援システム用のフロントカメラで検知した道路情報(速度標識)と、GPSによって計測した地点座標をクラウドに送信し、後続車がその情報をクラウドから受信する様子が実演された。車両とクラウドとの通信は4G回線を使用して行なわれた。そのため「クラウド経由のセルラー車車間通信(V2V通信)」と呼ばれ、コンチネンタルだけではなくエリクソン、日産、NTTドコモ、沖電気、クアルコムの合計6社による共同プロジェクトによるユースケーススタディである。なお4G回線による送受信データの遅延は60mm秒ていどで、実用上は問題ないという。

「e-ホライゾン」のイメージ
「e-ホライゾン」のイメージ

今回のデモでは速度標識が使われたが、例えば道路の路面情報、事故情報などをはるか手前にいる後続車に送信でき、後続車はカメラやレーダーでは把握できないはるか先の情報を受信し、余裕を持って対処できるのだ。つまりこの「e-ホライゾン」は、車載カメラやミリ波レーダーなどの車載センサーに頼らず、はるか前方の交通、道路情報を取得できるので、自動運転時代には不可欠なシステムと実感できる。

コンチネンタル・プレミアムコンタクト6

コンチネンタル・タイヤの最新のプレミアム・タイヤ「プレミアムコンタクト6」の試乗も行なわれた。純正装着タイヤとプレミアムコンタクト6の乗り比べで、ウェット路面でのブレーキと、高速走行でのダブルレーンチェンジを体験できた。
コンチネンタル・プレミアムコンタクト6 試乗

まずウェット路では、ABSが作動する急ブレーキをかけるが、純正タイヤよりプレミアムコンタクト6の方が減速Gの立ち上がりが鋭く、より大きな減速度が得られるように感じた。
コンチネンタル・プレミアムコンタクト6 試乗

高速走行時のダブルレーンチェンジでは、ステアリング操作に対してやや遅れて車体が反応してレーンチェンジするといった感じなのに対し、プレミアムコンタクト6の場合は、ステアリング操作に対して遅れがなく、舵角もより少ない状態でレーンチェンジを行なうことができることが体感できた。つまり操舵のリニアリティが高まり、微小舵角での操舵フィーリングも良好で、プレミアムコンタクト6のポテンシャルの高さが実感できた。

LiDAR

コンチネンタルが開発中のフラッシュLiDAR(レーザースキャナー)。2019年〜2020年ころに発売予定だという。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

LiDAR本体
LiDAR本体

LiDARが取得した物体のイメージ。左上が原画像で、下と中央が物体を色分け認識した状態
LiDARが取得した物体のイメージ。左上が原画像で、下と中央が物体を色分け認識した状態

コンチネンタル 関連情報
コンチネンタル・オートモーティブ 公式サイト

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