2014年5月初旬に開催された第35回 国際ウィーンモーターシンポジウムで、世界的な自動車部品サプライヤーのコンティネンタル社とシェフラー社は次世代のガソリンエンジン技術を搭載したプロトタイプカー(GTC)を発表した。
このGTC共同プロジェクトは、今後採用される48Vマイルドハイブリッド技術をネットワークで統合することで、燃料消費とCO2排出をいかに削減できるかをテーマしている。ベースモデルは、ダウンサイズされた3気筒ガソリンエンジンを搭載したフォード・フォーカス1.0Lエコブーストで、GTC技術は燃費をさらに17%も向上できることを訴求した。
コンティネンタルの取締役でパワートレーン部門の責任者のホセ・アヴィラは、「この新たな次元のハイブリットを実現するために、コンティネンタルとシェフラー社が持っている重要な技術をGTCの中に統合し、体系的にネットワーク化しました。その結果、この技術戦略の大きな可能性を強調できるクルマが実現しました」と語っている。
シェフラー社の取締役・研究開発の責任者であるピーター・グッツマー博士は、「GTCに採用したコンポーネントと技術の相乗効果により、燃料消費量だけではなく運転のしやすさの観点でもドライバーに明確なメリットを実感できます」と語る。コンティネンタルとシェフラーは、GTCの統合的アプローチを採用することで、「1 + 1 = 3」の効果を発揮することができるとしている。
GTCのパワーユニットは、フィエスタ1.0Lのエンジンにコンティネンタル製の燃料噴射ユニットとエンジン制御ユニットを搭載。さらに重要なシステムとして、マイルドハイブリッド用のコンティネンタルの「48Vエコドライブシステム」と、シェフラー社のパワートランスミッション、冷却水・油圧管理モジュール用の電子クラッチ(eクラッチ)も採用している。
これらのコンポーネント以外に、電気加熱式触媒コンバーター(Emitec) も追加されている。このような先進コンポーネントを採用することでGTCプロトタイプは、燃料効率を全体で17%向上させただけでなく、まもなく施行となるEuro 6の排出ガス基準をクリアしている。
新世代インジェクターは噴射タイミングを厳格に最適化しているが、3気筒1.0Lエコブースト・エンジンのドライバビリティを十分確保。その一方でGTCは、第2の駆動システムである48Vエコドライブを採用している。この48Vエコドライブは、デカップリングテンショナー付き駆動モーター/発電ユニットを搭載。この駆動モーター/発電機ユニットは、ベルト駆動でエンジンと接続され、駆動モーターはベルトを介してエンジンの駆動トルクをアシストする。
48VシステムのためのDC/DCコンバーターは、リチウムイオン電池の48V電圧と電装品の12Vの電圧制御を行なう。このハイブリッドは、ターボラグのような遅れのない応答性を確保し、低い回転域ではエンジンの低速トルクをアシストする「eブースト機能」を持つ。
このマイルドハイブリッドは、48V電圧による高効率な減速エネルギー回生がベースとなっており、NEDC(新欧州ドライビングサイクル)では、車両の電気系統に必要とされる電力のほぼ2倍の電力を回生することができる。
GTCプロトタイプには従来の6速MTが搭載されているが、当然、コーストモード(惰性走行)などの省エネ機能も備えている。惰性走行はシェフラー社の電子制御流体クラッチが担当する。これにより、エンジンが発生するエンジンブレーキで減速しないため、より多くの減速エネルギーを回生に利用できるのだ。
こうして得られた回生電力は、例えば電熱触媒に利用される。つまり回生エネルギーを使用して、低温始動時に触媒をより早く適温まで上昇さることができる。さらに、シェフラー社の環状スライド弁を使用した冷却水温度管理システムもGTCに採用されている。
これは、革新的なマイルドハイブリッド駆動の課題を克服するために重要な要素だ。エンジンを通常の冷却システムとは異なり、冷却水管理モジュールにより迅速に必要な温度まで冷却水温上昇させる。そのため温度を長く維持することができ、急速な冷却水温度上昇により、エンジンの摩擦損失を低減することができるのだ。さらに下り坂などでの回生時には冷却をオフに切り替えることもできる。
GTCに搭載されるコンティネンタルのエンジン制御ユニット(ECU)は、マイルドハイブリッドコンポーネントの制御も組み込まれており、走行中でもエンジンを停止する機能も持つ。このエンジン制御ユニットは、AUTOSAR(オートザー:Automotive Open System Architecture:ダイムラー、BMW、ボッシュなどを中心とした共通車載OS、ソフトウエア)に準拠したオープンシステムアーキテクチャとされ、ハイブリッド化、電動化など様々な駆動システムに対応できるパフォーマンスをもっている。なおこのエンジン制御ユニットは、ドライバーにギヤシフト・ポイントを表示できるようになっており、その支持にあわせて運転すると最高レベルのエコドライブが可能になる。
GTCは、ドライバーのMT操作、最適化された個々のコンポーネンツ、車両の機能がシンクロすることで従来の常識を破る高い効率、燃費が実現できることを実証するプロトタイプカーである。この高効率のマイルドハイブリッド、「48Vエコドライブシステム」は2016年型市販モデルに搭載される予定で、その段階では今回のGTCに搭載された技術のいくつかも同時に採用されると予想される。