会話型AIを活用した車載アシスタントを開拓するグローバルリーダー「セレンス」は2025年3月31日、エージェント型のAIアシスタント・プラットフォーム「Cerence xUI」を発表した。
このプラットフォームは車内、クラウド接続の双方で機能し、*LLM(大規模言語モデル)を活用し、より高レベルの車内ユーザーエクスペリエンスを向上させることができる。*LLM:従来の言語モデルと比べて、処理能力や学習データ量が圧倒的に大きい

AI技術と車内操作系に共通する深い専門知識を持つセレンスは、車内でのインフォテイメントやアシスタントサービスの基盤として、セレンス xUIの導入を推し進めており、既に世界中の自動車メーカーと戦略的パートナーシップおよび概念実証プログラムを締結している。
一方、自動車メーカーは、車内アシスタント・プラットフォームの性能を高め、拡張したAI機能を迅速かつ、コスト効率よく車両に搭載するための検証を加速させている。
セレンスxUIはこのニーズに対応し、自動車専用音声アシスタントプラットフォームを提供している。このプラットフォームは、NVIDIA、Microsoftと提携開発し、最適化したクラウド型、車内組込み型のLLMとSLM(小規模言語モデル)のCaLLM(Cerence Automotive Large Language Model)ファミリー、サードパーティ製LLM、リアルタイムのデータソースなどにより、乗員からの質問に回答する会話型インターフェースを構築している。
また、パーソナライゼーション機能が強化され、個人の嗜好を記憶して、ユーザーのパターンや文脈情報に基づいて応答や積極的な提案をカスタマイズすることが可能になっている。
Cerence xUIのハイブリッドアーキテクチャーとは
今回発表したCerence xUIのハイブリッドアーキテクチャーは、クラウド接続だけでなく車載システム単独でも実行が可能で、「NVIDIA DRIVE AGX Orin」で最適化され、自動車メーカーは既存の車載型インフォテインメントシステムに加えるクラウドベースのアドオンとして、または現行車両の既存のハイブリッドシステムを補完するものとして、さらには完全に統合されたクラウド型および車載型のシステムの基盤として、最適な形でプラットフォームの導入が可能となる。
これにより自動車メーカーは、AIを活用したセレンス独自のユーザーエクスペリエンスの専門知識を活用しやすくなり、以下のようなLLMを活用した機能や性能のアップグレードが可能になる。
会話スレッド:単一のアプリケーション内や、さまざまなクラウド型および車載型のアプリケーションの両方で、複雑なマルチステップの質問に対応でき理解しやすく一貫性のある会話となる。これら全ては自然言語の会話により実行される。
車内環境に合わせた会話型ユーザーエクスペリエンス:シームレスで直観的、かつ魅力的な会話は、簡潔で車内での使用に適しており、同時に複数のユーザーがやり取りできる独自の技術によって、ドライバーと同乗者の認知・区別を容易にしている。
一般的な知識と専門分野の知識:コンテンツプロバイダーであるパートナーとリアルタイムのデータソースを活用し、旅行や音楽、スポーツ、ニュースなど、多様な分野にわたる総合的な知識が活用でき、自動車メーカーは広い範囲のライブ情報をユーザーに提供できるようになる。
CaLLM(Cerence Automotive Large Language Model)言語モデルファミリーは、セレンスxUIの基盤として、オープンソースの基盤モデルをベースに、セレンスが持っている自動車データセットでファインチューニングされている。
セレンスは「NVIDIA TensorRT-LLM」、「NVIDIA NeMo」を含む、推論パフォーマンスに対して、最適化されたクラウドネイティブなソフトウェアプラットフォームである「NVIDIA AI Enterprise」を活用し、CaLLMを最適化し、車載システムとクラウドの両方を統合する機能豊富な中央エージェント型プレイヤーして機能する。

さらに、「CaLLM Edge」は、Meta社のLlamaファミリーやMicrosoft社のPhiファミリーをはじめとする、多様なモデルを提供し、セレンスAIの広範におよぶ自動車データセットでファインチューニングし、車内での使用に特化したAIを実現している。
その結果、CaLLM言語モデルファミリーは、高度な性能で、回答に遅れのない自然な会話が可能で、プライバシーとセキュリティの強化、悪意のあるインタラクションや不要なインタラクションに対するスマートガードレールを介した強固な保護機能を備え、さらに自動車メーカーの開発コスト低減を図ることができる。
セレンスブライアン・クルザニッチCEOは、「自動車メーカーと交通機関OEMは、AIとLLMを自動車に搭載しようとする動きを加速させており、ドライバーを満足させるエージェント型の会話体験を開発して導入するために、SOC (Security Operation Center)にとらわれない信頼できるパートナーとしてCerence AIに注目しています。セレンスxUIは、生成AIの力と当社のデータセットのインテリジェンスおよび精妙さを融合し、自動車メーカーがスマートで統合されたクラウド組込み型アプローチによって、エージェント型の車内ユーザーエクスペリエンスを迅速かつ円滑に創出することを可能にします。これにより、自動車メーカーは新車だけでなく、既に路上を走っている自動車にも高度な新機能を導入して、車両を購入した後もドライバーに付加価値を提供することができます」と語っている。