
ブリヂストンは、サスティナブルなタイヤの開発を進めており、2025年11月15日(土)、16日(日)に静岡県小山町の富士スピードウェイで行なわれたスーパー耐久最終戦にニュータイヤを投入した。
タイヤはST-Qクラスに参戦している#12号車ロードスターと#28号車GR86の2台に供給している。そして今回のテスト投入に先立ち、ブリヂストンのグローバルモータースポーツ管掌の常務役員今井弘さんからプレゼンテーションが行なわれた。

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まず今井氏は、ブリヂストンはスーパー耐久の理念に共感し、ブリヂストンの開発哲学との親和性も高いと話し、最終戦に新規タイヤを投入する流れになったことを説明した。
そして投入する新規のレースタイヤは、ブリヂストンのモータースポーツ活動の中で、カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現にコミットし、バリューチェーン全体でサスティナブルな未来に貢献する努力をし、さまざまなフィールドで開発を進めていることも説明した。
とくに、サスティナブルなタイヤは今後の市販タイヤには重要な項目になるわけで、リサイクル、リユースしていく中で性能の担保はマストになってくる。そうした中で2025年8月のソーラーカーレースに参戦する競技車両へサスティナブルなタイヤを供給し、次のステップとして今回のスーパー耐久のレース車両へ供給することになった。さらに、この先2026年9月からはFIAフォーミュラEへの参戦も発表しており、フォーミュラEシーズン13では、サスティナブルなレースタイヤの供給はブリヂストンが担うことになっている。

ちなみに、ソーラーカー用のタイヤには65%の再生素材が使用されているが、今回のスーパー耐久用のタイヤそれ以上の含有率であることを言及している。
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具体的な内容において詳細な説明はされていないが、タイヤ製造の設計基盤技術であるENLITENで設計され、そこに再生カーボンブラックが材料として使用されている。もちろん、タイヤのゴムには多数の材料素材が使用されており、シリカやオイル、ポリマー類などどこまで再生材料を使用しているかは秘密の部分でもある。また、含有量をどの程度にできるかといったところもポイントになってくる。
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そして開発には「接地を極める」「ゴムを極める」といったワードで、解析、分析を行なっていくが、ブリヂストンの計測技術であるアルティメット・アイで詳細な分析や可視化、そして数学モデルを作り、シミュレーションを繰り返して製品化へと近づけていっている。
また原材料を作り出す領域では、使用済みタイヤを熱分解してカーボンブラックを作り投入する。この技術は2019年には北米で市販もしている実績がある。ただ、よりサスティナブルなタイヤとしていくのが今回のタスクとも言え、どこまで再生した原材料を入れられるか、含有量は?などのハードルをひとつずつクリアしていくのが、現段階といったところだ。その使用済みタイヤの再生工場は岐阜県の関市に工場を建設しており、まもなく稼働も始まる。
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こうした背景でサスティナブルなレース用スリックタイヤが2チームに供給され、そのタイヤを使って参戦した#12の川田浩史選手、堤優威選手は以下のコメントを残している。
「これまでのタイヤに比べて、ピックアップがつきにくいという印象です。そこは良かったと思います。一方でグリップについては、後半になってくると摩擦円で言うところの横Gと加速Gがブレンドされているところ。ここの落ちが少し大きいかな、という印象ですね。ケースが硬いので表面のグリップに依存しているというか。乗り方を変える必要があるかもと感じていたのですが、その必要はありませんでした」、と話し、堤選手は、「新しいタイヤに関しては、ちゃんと比較テストをしてないのでピークや持ちがどうとかはわからないんですけど、このサステナブルなタイヤでレースをしっかり走り、タイヤトラブルが1回もなかったというのは、ぶっつけ本番にしては良い結果だったと思います。使用前後のフィーリングもあまり変化がないし、ロングを走っていても何も問題ないと感じました」、と語っている。
ブリヂストンの今井氏は、再生素材を使って作った今回のタイヤが、従来のスリックタイヤと同じようなドライブフィールであれば成功だと語り、いかにロバスト性の高いタイヤに仕上げるかがポイントなのだ。
つまり、リニアな変化であれば人間は予測が可能であり、安心につながるが、急激な変化は予測ができず人は不快になり、不安にもなる。したがって、今回のサスティナブルタイヤが従来のレースタイヤと似たような印象であればロバスト性は高く、リニアな反応をしていたことになるわけだ。
そして、ドライバーからのコメントでは、大きな違いを感じていないわけで、これは、言い換えれば大成功と言えるだろう。この先はブリヂストンがデータとコメントを持ち帰り、さらなる進化を目指し、そして来るフォーミュラEシーズン13に向けて開発は進めていく。
そして熟成された技術により市販タイヤへのフィードバックも盛んに行なわれていくようになり、サスティナブルな社会の実現、カーボンニュートラルな社会へと一歩近づいていくことになるのだ。













