ブリヂストンのプレミアム・コンフォートタイヤ、レグノGR-XⅢが発売され、早速ブリヂストンのテストコースがある栃木県黒磯で試乗してきた。
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試乗テストは一般道と高速道路、それとテストコースという環境で、一般道ではGR-XⅢの絶対評価、テストコースではGR-XⅡとの比較テストを行なった。
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テストコースでは高速周回路や直線にパイロンを設置し、スラロームやWレーンチェンジなどのコース、荷重が大きくかけられるコーナー、そして突き上げが感じられるように路面に凸凹を作った路面などさまざまな路面でのテストを体験することができた。
最初はGR-XⅡとGR-XⅢとの比較で、20km/hの速度でパイロンをゆっくりスラロームし、周回路へ入る。高速バンクの最下端を100km/hでコーナリングし、ストレートで120km/hまで加速というレイアウトのオーバルコースをそれぞれのタイヤで走行した。
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すると、タイヤの静粛性の違いや、しっかり感、剛性感といった違いが感じられる。とくに120km/hでのレーンチェンジや100km/hでのコーナリングでは、サイドウォールの剛性感に違いを感じる。GR-XⅡはそのサイドウォールがしっかりとした高い剛性感を感じるのに対し、新商品のGR-XⅢはタイヤ全体で剛性を感じるのだ。つまりタイヤの内圧による「張り」を感じることでしっかり感として伝わってくる。だから、もっと速い速度でコーナリングができるという安心感につながる印象だった。
また120km/hの車速になると、静粛性において圧倒的な差が出てくる。それは走行音が大きくならないGR-XⅢと車速に応じて走行音も大きくなる先代との違いだ。またレーンチェンジでのステア応答の違いは僅かなステア操作に対しての反応の違いがあるが、相当神経を集中していかないと気づかないレベルの違いだった。
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また100km/hコーナリングではリヤタイヤの追従性の違いがあるという説明を受けているものの、テスト車両がメルセデス・ベンツのEQEで、この車両はリヤ操舵が装備されているためリヤタイヤの存在が明確に感じられる。そのフィーリングがタイヤによるものなのか、リヤ操舵によるものなのか区別しにくく、GR-XⅡもGR-XⅢもともにリヤタイヤの追従性、接地感があり、感覚も掴みやすかった。
すごく明確に違いを感じたのは路面にアンジュレーションをつけた場所での走行と凸凹のある路面を走行するシーンだ。GR-XⅢが圧倒的にマイルドで、オブラートにつつまれたまろやかさがあるのだ。テスト車両は同じタイプのモデルなので、この違いはタイヤによる違いと断言できる。
とくに路面にロープを張り巡らせた凸凹では、おなじ車両なのに、まるで違うクルマに乗っているかのようなまろやかさがあるのだ。ちなみにテスト車両はレクサスESだった。
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一般道ではBMW i4で試乗。新型のGR-XⅢはEVにも対応という謳い文句もあり、プレミアム・コンフォートタイヤにふさわしいテスト車だ。EVのi4でGR-XⅢで走り出すと、舗装状況の良い滑らかな路面ではタイヤの存在を忘れてしまうほど、静粛性が高くしっとりとしている。
このタイヤであればEVの魅力をさらに際立たせていると感じられた。また荒れた路面では音の質が異なり、低音で音自体の大きさも小さい。そして静粛性の高さは荒れた路面でも維持されることを体験したのだ。
さて、こうした印象を受けた新型のレグノGR-XⅢ誕生の背景を少し覗いてみると、社会環境やモビリティの変化が起きている現在、タイヤに求められる性能にも違いが生じてきていることがわかる。例えば電動化が進んでいる現在、走行時のエンジン音が無くなったEVでは高い静粛性が求められるようになり、電費をよくするための省燃費性能も求められる。またSDGsの観点からも環境負荷低減といった項目が容易に想像できるわけだ。
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そこで、ブリヂストンでは新たなプレミアムタイヤとして「エンライトン」という基盤技術を使って、新しい概念でGR-XⅡの後継モデル製作に着手したわけだ。
考え方のベースは基本性能を全領域で昇華させ、そこからさらに、特性に磨きをかけた領域を持たせたタイヤの開発だった。行き着くところは「薄く、軽く、円く」。ある意味古くからタイヤに求めれてきた性能の究極性能であり、そこへ到達するための技術や知見を揃え、GR-XⅢを生み出したのだ。
じつはタイヤに求める性能は市場によっても異なり、ややこしいのだが、日本のマーケットで「レグノ」ブランドに求められるものは「乗り心地、静粛性、ハンドリング、ウエット性能、低燃費性能、軽量、耐摩耗性、そして資源循環型」といった要素がある。これらの性能の底上げから始まり、高まったところから、静粛性とハンドリング性能を磨き、ある領域は飛び抜けた性能へと導いているのだ。
そのための基盤技術が「ENLITEN」という技術で、これはブリヂストンが培ったこれまでの知見やデータを使い、より高みへ押し上げる技術に位置付けられている。
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ある性能を高めると背反する性能は悪くなるというタイヤ製造の中で、例えば乗り心地を良くするためにゴムを厚くすると、先ほどの求める性能の乗り心地、静粛性、耐摩耗性能は上がるものの、ハンドリングや低燃費性能、軽量といった領域では著しく性能低下が起きる。
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そのため、全体の性能を向上させるにはそれぞれの領域のベストとなる技術を確立し、データ化していくことで、全体にバランスの取れた高性能なタイヤが作れるということ。ひとことである領域のベストとなる技術を確立するとは言え、そこには長年のタイヤ製造技術ノウハウとデータがあるわけで、その数値化されたものはベース技術に取り入れ、データ化できない領域までも利用していくというのが基盤技術のENLITENというわけだ。
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では具体的に見ていくと、素材のゴムを例にとると、まず細かなミクロレベルの配合技術、ナノレベルのポリマー設計、それらの分析技術によってゴムを極めていく。そして接地の分析ではプライ張力の最適化で均一な変形を実現し接地が極められる。そして飛び抜けた性能を持たせるために、新パターン、新トップゴム、そして新しい、構造と形状というものを組み合わせていく。
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そして誕生したのがGR-XⅢであり、先代のGR-XⅡとの静粛性比較では、荒れたアスファルトでは12%低減でき、スムースなアスファルトでは8%の低減。そして突起乗り越し時の衝撃は10%低減できているテスト結果になったという。
GR-XⅢでは静粛性とハンドリング性能に磨きがかかった特性を持ち、環境の変化とタイヤ製造の概念を変えることでプレミアム・コンフォートタイヤとして誕生したのだ。
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