ブリヂストンとENEOSは2022年2月18日、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、使用済タイヤの精密熱分解によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた共同プロジェクトを開始したと発表した。
このプロジェクトは、国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」に採択された実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」における、2つの研究開発項目のうちの一つだ。
グリーンイノベーション基金事業とは、日本政府が掲げる「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」という目標の達成に向けて、エネルギー、産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションの加速を目指し、経済産業省により設置された制度で、この目標に経営課題として取り組む企業等に対して、10年間研究開発、実証から社会実装までを継続して支援する事業だ。
タイヤは将来的にも需要の拡大が見込まれるが、タイヤの主な材料として、石油由来の合成ゴムが使用されていることと、使用済タイヤの多くはサーマルリカバリー(熱回収)により燃料として有効利用されているものの、その時にCO2を排出するという課題がある。
このプロジェクトでは、ブリヂストンがタイヤ・ゴム事業を通じて培ってきた高機能ゴムなど高分子素材の設計技術と、ENEOSの原油精製技術や基礎化学品製造に関する基盤技術を最大限融合させ、使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の確立を目指しているのだ。
具体的には、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油を石化原料化(ナフサなど)し、この石化原料から合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を行なうことになる。
2030年までに量産を想定した大規模実証試験を実施し、その後、早期の事業化を進めて行く計画としている。
またブリヂストン、産業技術総合研究所、東北大学、委託パートナーのENEOS、日揮と使用済タイヤから合成ゴムの素原料であるイソプレンを高収率で製造するケミカルリサイクル技術の共同研究開発も開始している。
使用済タイヤのケミカルリサイクル技術の実現により、タイヤ・ゴム産業、石油化学産業のバリューチェーンにおける資源循環性の向上とカーボンニュートラル化に向けて大きな前進となる。
この研究開発は、使用済タイヤを特殊な触媒を使って分解し、合成ゴムの素原料であるイソプレンなどを高収率で製造する技術の開発と社会実装に取り組むもので、産総研、東北大学、ENEOSは使用済タイヤのケミカルリサイクル技術とその評価技術の開発を、日揮はパイロットプラントの設計を担当する。
ブリヂストンは、これまで培ってきたゴム材料の研究開発とタイヤ事業の知見・ノウハウを活かし、プロジェクトリーダーとしてこの研究開発の推進役を担当している。