ブリヂストンは2021年7月15日、満を持して4年振りにスタッドレスタイヤ「ブリザック」をモデルルチェンジし、従来の「VRX2」から「VRX3」へと進化した。
「ブリザックVRX3」」の商品企画としては、ユーザーから重視される氷上でのグリップ性能を大幅に向上させると同時に、使用期間の長期化傾向に合わせ、性能が長持ちすることや、ドライ性能、ウエット性能なども向上させ、従来製品をと比べて全方位で性能向上を図ったスタッドレスタイヤとなっている。
特に氷上性能はなんと20%アップ、ライフ性能も17%アップされ、4シーズン使用しても氷上性能は従来品を上回るということだ。
この大幅な性能向上は、氷上性能ではシリカの配合、発泡ゴム、3次元サイプの採用など従来の技術をベースに、新たに発泡ゴムの空洞形状の楕円形への改良による毛細管現象を高め吸水性能のアップ、トレッドパターンの改良による排水性能の向上、トレッド面への小突起形状の採用などで性能アップしている。
さらに、実際の氷上路面でトレッド面がより均一に接地するようなトレッド部のブロック形状が選ばれている点も注目点だ。
長持ち性能では、時間が経過しても柔軟性を維持できる新ポリマーを開発して採用したことなどが挙げられる。これらの技術に加え、製造段階でのゴムの混合などの技術革新も性能向上に大きな効果があったという。
こうした新技術の投入に加え、実際のクルマに装備されているABSの特性にも注目し、ABSが氷上で作動した時、最大のグリップ力が発生されるスリップ率に適合するようにタイヤがチューニングするなど、最新のクルマの特性を重視して「ブリザックVRX3」は作り上げられているのだ。
「ブリザックVRX3」は9月から発売が開始されるが、発売に先駆けて試乗することができた。もちろん実際の氷雪路での試乗は不可能な季節なので、アイススケートリンクでの試乗だ。スケートリンクは氷の温度は-2~-3度で、いわゆるアイスバーンの状態であり、タイヤが転がることで発熱しアイスバーンの表面に水が発生し、ツルツルになって人間は歩くことも困難・・・というコンディションになっている。
アイススケートリンクは通常ではなかなかない特殊な氷面とはいえ、一般の氷雪路に比べて路面のコンディションが一定なので、比較テストしやすいというメリットもある。
試乗車はプリウスで、タイヤサイズは195/65R15。同じプリウスで従来タイヤの「ブリザック VRX2」を装着したクルマと乗り比べをするというテスト。テストメニューとしては、発進加速、ブレーキ、スラローム、円旋回だ。
比較試乗で、一番わかり易いのはブレーキングだ。15km/hでブレーキペダルを思い切り踏むとABSが瞬時に作動するが、ペダルを踏み込んだ瞬間に発生する減速Gは、VRX2装着車より明らかに上だった。
発進加速では、軽くゆっくりアクセルを踏み込むとタイヤの空転が始まるが、スリップを抑え、緩やかにアクセルを踏んだ時の加速力と、空転を抑えるためにアクセルをゆっくり戻してから再びアクセルを踏み込むという状態では、VRX3の方がグリップの回復が早く感じられた。
また、円の旋回では、アクセルをわずかに踏んでステアリングを一定にして旋回するが、そこから軽くアクセルを踏み込んだ時にアンダーステア状態がどのくらい外側に膨らむか・・・というシーンでもVRX3のほうが踏ん張り、膨らみが少ない上に、外側に膨らみ始める状態で、少しだけアクセルを緩めると再びフロントのグリップが回復するのに対し、VRX2は外側に滑り出した時にアクセルを緩めてもグリップはなかなか回復しないという違いがある。
スラロームでVRX3の優位性が一番わかりやすいのは、ステアリングの手応えだ。アイスバーンなどでステアリングを切っても手応えはドライ路面に比べるときわめて小さいのが常識だが、VRX3はアイスバーンの上でステアリングを切った時のフィードバック感は想像したよりかなりしっかりしていた。これは、アイスバーンなどを走る上で安心感につながり重要な点だ。
新旧タイヤの比較テストで「ブリザックVRX3」の性能向上は十分に体感でき、4年振りに導入されたタイヤにふさわしい進化を感じることができた。<レポート:松本晴比古/haruhiko Matsmoto>