2015年11月30日、ブリヂストンは天然ゴム資源を生み出す「パラゴムノキ」の病害「根白腐病」を、簡単に正確に迅速に診断する画期的な簡易病害診断技術を新たに確立したと発表した。これによりパラゴムノキの保護や天然ゴムの安定供給を支援することができることになる。
パラゴムノキはタイヤの主要な材料である天然ゴムを生み出す。天然ゴムは耐久性、耐摩耗性、低ヒステリシス性など優れた物性を持ち、現在のタイヤのゴム成分の約50%に天然ゴムが使用されている。
現在の世界の天然ゴムの生産量は年間1100万トンで、そのうち約90%がタイヤの材料として使用されている。ブリヂストンは天然ゴムの使用量でも世界最大のメーカーだ。
天然ゴムは、赤道に近い雨林に生育するパラゴムノキから樹液を採取し、樹液を加工して生産される。パラゴムノキはブラジルが原産だが、現在は赤道直下のアジア地域のプランテーション(大規模農園)で90%以上が生産されている。
しかしパラゴムノキは病害に弱く、プランテーションで病害が発生すると急速に被害が拡大し、天然ゴムの生産量、価格に大きな影響を与える。現在でも各地でさまざまな病害が発生しており、ブリヂストンが所有するインドネシアの天然ゴムのプランテーションでは、「根白腐病」が年間生産量の1割以上の被害を出しているという。今回開発されたのは、この根白腐病を簡易に診断する技術だ。
ブリヂストンは2012年7月に根白腐病の対策として「DNAを利用した病原菌検出」、「ラテックス(樹液)の成分分析による診断」、「葉表面スペクトル・温度の測定による診断」、「衛星画像の解析による広域の健全度診断」の4つの技術開発を進めるとしていたが、今回発表されたのは「DNAを利用した病原菌検出」法だ。
根白腐病とは糸状菌の1種であるパラゴムノキ根白腐病菌が引き起こす病気で、根に感染し組織を腐敗させることで、パラゴムノキを枯死させる。これまでは感染初期の発見が困難で抜本的な対策がなく、発症した場合、罹病部位の切除、薬剤処理により対処している。
土壌中の病原菌が原因で感染が拡大する根白腐病の早期発見が重要な課題で、これまでは根白腐病の診断は目視で行なわれているので検出精度が低く、また地面を掘らないと診断できないことから、発見の遅れや誤診などが生じやすく、病害を蔓延させる原因となっていた。そのためブリヂストンは、2010年からインドネシア技術評価応用庁や複数の大学と連携し、早期に病害を診断する技術の開発を進めてきたという。
今回ブリヂストンが確立したのは、バイオテクノロジーを応用した診断技術だ。土壌中の病原菌に特異的なDNA配列を増幅させ検出するもので、この方法により、ブリヂストンで解析した病原菌の遺伝子配列情報をベースに開発した試薬キットを利用することで、特別な装置を使うことなく、目視で簡易に病害菌の有無を確認することができる画期的な技術だ。
この病害検出技術により、根白腐病の早期発見が可能となり、病害の感染拡を抑制することが期待される。ブリヂストン中央研究所の渡辺訓江氏は、今回の病害診断技術はブリヂストンだけの技術にするのではなく、広く利用される技術として検査キットを製薬メーカーと協力して市販化すると語っている。