2012年10月22日、ブリヂストンはナノテク・先端部材実用化研究開発の一環として、革新的なナノ階層構造設計技術を開発したと発表した。研究開発では乗用車タイヤ用ゴム材料の原材料であるポリマー、充填剤等の配置をナノレベルで最適化し、従来の乗用車用低燃費タイヤ用ゴムと比べて、エネルギーロスを40%以上低減、耐摩耗性能を25%以上向上するゴムの技術開発に成功したという。
このプロジェクトは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構による支援のもと、ブリヂストン、JSR、東北大学原子分子材料科学高等研究機構、九州大学先導物質化学研究所、産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門が産・学・官連携のオープンイノベーション研究体制を構築し、世界最高水準の分析、解析、計算、材料技術を融合させ、そこから今回の研究成果を得ている。
この技術開発を通じて得られた研究成果(評価・解析・予測法)は、今後ブリヂストンの材料技術「ナノプロ・テック」と融合させ、現在市販されている低燃費タイヤ(低燃費タイヤの転がり抵抗ラベリンググレードでAA?AAA相当)対比で、転がり抵抗をさらに20%低減したタイヤの開発を目指すという。
タイヤの転がり抵抗低減は、自動車の低燃費化によるCO2排出量削減に大きく貢献できるが、従来はゴムによるタイヤの転がり抵抗低減は、主に充填剤の分散状態を制御することにより行ってきた。しかしこの手法では相反する他性能等とのバランスから限界に近づいてきている。さらなる転がり抵抗低減には、これまでに無い全く新しい観点でのゴム材料の技術開発が必要だった。
今回の技術開発では、ゴム材料中の各部材の空間配置をナノサイズで最適化する「三次元ナノ階層構造制御技術」を開発し、ブリヂストンの乗用車用低燃費タイヤ用ゴム対比エネルギーロス44%低減、耐摩耗性能26%向上に成功した。
研究目標・内容は表の通りだが、具体的には最適化末端変性ポリマーによる、ブレンド形態の制御による耐摩耗性の向上と同時に、専用設備による充填剤の配置最適化により、低ロス化を図っている。さらに、加硫条件の最適化によって架橋網目分布を均一化させることで、更なる低ロス化を図った結果、低いエネルギーロスと高い耐摩耗性という、相反する特性を同時に備えた革新的なタイヤ用ゴム材料の開発に成功した。
今後は、ブリヂストンが今回の研究開発で得られた評価・解析・予測法について、自社の材料設計技術である「ナノプロ・テック」と融合させ、新たな低燃費タイヤ用ゴム開発に適用していくとしている。