2015年6月18日、ボッシュ・ジャパンは年次記者会見を開き、ボッシュ・グループの現況がプレゼンテーションされた。ボッシュ本社は、2014年の世界的な景気後退の中にあって、成長目標を上回り、2015年も好調なスタートを切っているという。2014年度のボッシュの売上高は名目上6.3%増の490億ユーロ(約6.7兆円)に達している。そして研究開発費として50億ユーロ(6900億円)を2014年度に投入している。
またボッシュは、2014年にBSH Hausgerate GmbH、ZFレンクシステムを完全買収した。BSH Hausgerate GmbHはシーメンス系のハウス電装部門で、スマートホームの分野で基盤を築き、ZFとの合弁会社のZFレンクシステムの買収(Robert Bosch Automotive Steering GmbHに社名変更)し、電動パワーステアの分野を拡張し、特に成長分野である自動運転のための製品ポートフォリオを充実させている。
世界市場では、ヨーロッパ、北米、アジアで事業が拡大し、この傾向は今後も継続すると見られている。日本における2014年度のボッシュの純売上高の合計は7%増の3430億円で、ウド・ヴォルツ社長は、農建機用コモンレールシステム、 4輪車、2輪車のアンチロック・ブレーキング・システムや横滑り防止装置ESC、CVTベルトなどの売上が好調だったことが好結果をもたらしたと語る。
またボッシュ・グループの日本の自動車メーカーに対する全世界での売上は前年と比較し、約13%増加している。日本の自動車メーカーは、新興のASEAN加盟諸国の市場では90%のシェアを占めているため、ボッシュは2013年から2014年にかけてタイとインドネシアで生産工場を設立し、日本の自動車メーカーをサポートしている。さらに2015年から2輪車関連事業を独立したビジネスユニット「モーターサイクル・パワースポーツ」として新設し、横浜に本拠地を構え、全世界の2輪車メーカーの要求に応える製品群を拡充していくという。
近未来の自動車を支えるテクノロジーとして、年次記者会見では48Vハイブリッド・システム、360度サラウンド・センサーシステム、次世代ボディコンピューターモジュール、インターネット接続制御ユニット、電動パワーステア(サーボトロニック)そして自動運転へのロードマップがプレゼンテーションされた。
48Vハイブリッドは、オルタネーター/駆動用モーターを48V化することで、減速回生の拡大、駆動アシストの出力を高め、中小型車の燃費を15%向上させるシステム。システムはDC-DCコンバーター、インバーター、小型リチウムイオン電池から成る。2016年には市場投入が予定されておい、近い将来には大きな市場に拡大すると見られている。なおボッシュはGSユアサと次世代リチウムイオン電池の共同開発を行なっており、リチウムイオン電池のコストの半減を目指している。
<次ページへ>
360度サラウンド・センシングは、将来の自動運転には欠かせない技術で、ボッシュは、近距離用超音波センサー(最大4m/120度)、中距離ミリ波レーダー(最長80m/10度・近距離では150度)、長距離ミリ波レーダー(最長250m/12度)、多目的ステレオビデオカメラ(最長250m、3次元認識は50m/50度)、近距離カメラ(最長25m/190度)などで構成される。
なお多目的ステレオカメラは、単体で自動緊急ブレーキ/道路標識読み取り/車線逸脱警報の機能を与えることもでき、ランドローバー社のディスカバリースポーツに採用されている。このステレオカメラはカラー認識できるCMOSセンサーを備え、1280×960画素数。このユニットはECUもボディに一体化され、2個のレンズの光軸間距離は12cmで、世界最小のコンパクトサイズにまとめられている。
なお、完全自動運転に向けて、ボッシュはミリ波レーダー、カメラ以外の第3のセンサー、レーザーレンジスキャナーの開発も行なっているという。
一方で、2015年に登場する新型メルセデス・ベンツEクラスに採用されている自動バレット(駐車場)パーキングは、ステレオカメラ、近距離用カメラ、複数の超音波センサーで360度サラウンド・センシングを構成している。最長4mの検知距離を持ち広角で高精度な距離測定ができる超音波センサーと他のセンサーを組み合わせることで実現しているのだ。システムはボッシュ、ダイムラー、car2go(カーシェアリング会社)が共同して開発した。
完全自動駐車は、完全自動運転よりも先に量産化のステップに到達するとボッシュは想定しており、低速度域での走行や、駐車場内のインフラ設備からの情報を利用できるため、より早い時期の実用化が進むというのだ。スマートフォンを使って、car2goで車両を予約し、利用者が駐車場内の乗車エリアに到着すると、車両が自動で走行してくるので、そのまま乗車。車両返却の際は、返却エリアで停車をし、スマートフォンで返却の手続きを行なうのみ。
駐車場でのインテリジェントな自動駐車システムが、車両の登録、システムの開始、そして指定された駐車スペースへの車両の誘導を行なうようになっている。