2018年7月25日、ボッシュは自動運転車両に対応できる、気象データと路面凍結検知システムをベースにした「路面状況予測サービス」の情報提供システムを開発したと発表した。
運転時のステアリングホイールやシートを通しての感覚は極めて重要で、道路はどのような状態で、タイヤのグリップはどれくらいなのか。こうした感覚を持つことは、クルマの安全を保つ上で重視すべきことでもある。特に、運転がシステム任せになる自動運転車両では、ドライバーが運転するクルマ以上に路面状況の情報が必要とされるのは容易に想像がつく。しかしながら、これまで自動運転車両は道路状況を正確に把握することは難しかった。そこで、ボッシュは自動運転車両でも路面上でのグリップ状態が得られるシステムを開発したのだ。
■自動運転レベル4以下にも有効
このシステムは、濡れた路面や降雪、アイスバーンなどで危機的な状況になる前に、この路面状況予測サービスが注意を促し、危険を回避できるというものだ。ボッシュとパートナーシップを結ぶ天気予報情報会社、フォレカ(フィンランド)が実現した気象データにより、自動運転車両は、どこで、どのように運転すべきかを正確に把握できるようになるのだ。
レベル4の自動運転では、道路の種類や交通状況、速度、環境などの条件をベースにして自動運転ができるかどうかが判断される。これからの自動運転には、このボッシュの路面状況予測サービスのデータが採り入れられて自動運転ができるかどうかが判断されるようになる。
これにより自動運転車両は早めに気象、道路状況を把握できるようになり、路面状況悪化の兆候が見られた時点で自動運転は停止し、ドライバーが運転操作を引き継ぐことになる。ドライバーは、十分な時間的余裕をもって、心の準備をすることができるというわけだ。
また、ルート上で雨が降っている場合、ハイドロプレーニング現象が発生する危険のないレベルまで自動的に速度を調整することも可能になる。つまりこのシステムはレベル4の自動運転車両だけでなく、それ以下のレベルの車両にも有効ということだ。
■その仕組み
フォレカは世界有数の気象予測企業で、路面状況の予測に関して20年の経験を持っている。フォレカとボッシュのノウハウを融合させることで、これからの自動運転の時代でもより的確な路面状況予測が可能になるのだ。この路面状況予測は一般的なメディアの天気予報とは異なり、複数の考えうる予測シナリオが考慮されている、というのが特長だ。
フォレカの常時更新される世界の路面状況のデータをベースに、危険な道路条件を正確に予測し、その場所を特定する。これを実現するために走行しながら測定するデータ収集車両と機械学習(マシンラーニング)により路面状況の判定を最適化することができたということだ。
さらに道路を走行するコネクテッドカーが増加してくると、ボッシュの路面状況予測サービスは車両自体が持つ車両データを、より補完することになる。車両データとしては、CANバスや車両のセントラルデータ・ネットワークに保存された情報、たとえば車内温度や外気温、ワイパーの作動状況などが含まれ、ネットワーク化によりこうしたデータは各自動車メーカーのバックエンドサーバー経由でボッシュのクラウドに送られるのだ。
さらに、ボッシュは横滑り防止装置(ESC)の作動状況のデータを収集し、数学的手法を用いることで、タイヤの路面摩擦係数や、各タイヤの状態を測定することができる。こうしたデータがすべて組み合わされることで、より正確な路面状況の把握が実現できる。
この路面状況サービスは 2020年に世界的に展開する計画で、当初は気象データをベースにしたデータを使用するが、路上を走るコネクテッドカーの台数が増えるにつれて、車両データからのリアルタイム情報を加えられ、より正確な情報提供サービスになっていくというわけだ。