ボッシュ 年次会見で次世代車Case、MaaSへの対応をアピール

雑誌に載らない話vol233
2018年6月5日、ボッシュは年次会見で2017年度の業績発表をし、今後のビジネス展開についても各トピックごとにラウンドテーブルを開いた。

冒頭、ボッシュのクラウス・メーダー代表取締役社長と副社長の森川典子氏から業績説明があり、2013年以降、毎年2ケタの伸び率を維持していると説明。また、2017年はグローバルでも過去最高益を記録したと説明した。

ボッシュ 年次会見 クラウス・メーダー社長 森川典子副社長
右)ボッシュのクラウス・メーダー社長と森川典子副社長

その好調の要因は、自動車の変革期のタイミングであり、多くのソリューションが求められる時代となり、その要求に応えた結果でもあるわけだ。さらに、CO2やNOx、PMなどの排ガス規制から環境性能を求めるものもあり、さまざまな分野でのテクノロジーとサービスの提供が求められ、その波に乗っているということだろう。

年次記者会見の後には、2018年以降、ボッシュが提供していくソリューションに関し、ラウンドテーブル・インタビューが行なわれ、APが注目したソリューション、サービスについてお伝えしよう。つまり「Case」=コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化、さらに「MaaS」=モビリティのサービスということへの対応ができていることのアピールだ。

ボッシュ 年次会見 WLTP走行テスト
RDPを前提とした試験WLTPでの走行テストでも2020年規制に対応できることをアピール

パワートレーン系では、よりクリーンなディーゼルとしてRDEを見据えた尿素SCR、NOx触媒を利用した後処理装置の開発を進め、すでにユーロ6対応に対応している。欧州ではA、B、Cセグメントのコンパクトサイズカーでは48Vのモーターシステムを使ったハイブリッドシステムのラインアップを充実させ、それと、OEメーカーからの要求に臨機応変に対応できる体制が整っていることをアピール。
また、e-モビリティでは、モーター、インバーター、バッテリーが一体化されたe-アクスルを提供することなどが説明された。これらは当サイトで既報で、その内容を踏襲するものだが、ディーゼルエンジンのNOx排出量はさらに進化し13g/1kmまで低減できており、2020年に施行される規制にも対応できるとしていた。
※参考:NOxとCNGで空気の質を改善【ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017レポートvol.6】

ボッシュ 年次会見 ロードシグネチャー レーダー認識
カメラではなくレーダーで障害物を認識し、自車位置を認識しつつ自動運転をするロード シグネチャー

自動運転では自車位置測位に衛星を使った技術を説明。ボッシュロード シグネチャーも既報だが、レーダーの反射で障害物を判定することとは別に、豪雪など反射物のない場所でも自車位置推定ができるシステムとして衛星を使ったソリューションを提供するという。そして、インクリメントP社とダイナミックマップ社と連携し、VMPSビークルマップポジションシステムを確立していくとしている。
※参考:自動運転のためのレーダーロードシグネチャー&ハッキング篇 【ボッシュ・モビリティエクスペリエンス2017レポート vol.5】

ボッシュ 年次会見 CDR 解析ツール
EDR装着の義務付けに向けて準備しつつ解析ツールであるCDRの存在もアピール

CDRは「Crash Date Retrieval」の略で、自動車事故における事故原因解析などに使うツールだ。EDR Event Date Recorderで記録されたものを読みだす機器で、ここから読みだされた情報には、事故直前まで車両はどのような状態で走行していたのかを、制御している部分から解析できる。アクセルの踏込量や、踏込速度、ABSブレーキの作動状況、EPSやESPの作動状況など、電子制御されるすべての機器データを解析することができるものだ。

このEDRは北米、欧州ではすでに装着が義務付けられており、国内にもその波がやってきたということだ。ボッシュとしては主に警察や保険会社など事故調査機関へアピールし、自動車メーカーは、義務化されれば装着するという流れに現在はなっている。また、このCDRで書き出されたデータの解析は、ボッシュによるトレーニングの場が提供され、資格認定の整備も現在行なっている。
※参考:ボッシュ 事故前後の車両情報を解析する「クラッシュデータ・リトリーバル」を日本で発売

ボッシュ 年次会見 eCall緊急通報システム概念図

それとe-callに関しては、シガーソケットに差し込むだけで緊急SOSが発信され、既存の車両にも適合するシンプルなユニットが紹介された。センサーには加速度センサーや進行方向の認知など、センサーが内蔵され、クラッシュした際の衝撃Gを検知し、ブルートゥースで接続されたスマートフォンから自動でサービスするというものだ。オペレーターは人であり、日本語が話せるスタッフになる予定だという。
※参考:ボッシュ 後付け「eCallデバイス」で福岡市のテレマティクス実証実験に参加

ボッシュ 年次会見 後付けeCallユニット シガーソケット差し込みタイプ

こちらもB to BのほかにB to Cビジネスも可能であり、富士通と組んで取り組んでいる事業でもある。世の中に走るクルマのすべてが、e-callを搭載していれば、多くの重大事故による死亡率なども下げることが可能になる。したがって、これから発売される新型車には搭載されたとしても、古いモデルなどにも装備が必要であり、このソリューションは富士通とともに事業展開がされる予定だ。
※参考:【緊急通報システム】富士通テン ITSヨーロッパ会議でヨーロッパ、ロシアの緊急通報システムの実証実験を実施

コネクテッドの分野ではカーシェアやライドシェアなどの分野で、モビリティ・サービスとして提供を考えている。アメリカのSPLPというカーシェアリングの企業を買収し、事業に乗り出す。具体的には、スマートフォンアプリを利用して、同じ工場や、同じ学校に向かう人同士がライドシェアを行なうというものを現段階では想定している。

他にも2025年の時点でASEANではICEが90%である予測などから、それらに対応するためのソリューションや、インダストリー4.0、Plantectというビジネスでは、AIとセンサーを使った病害予防のハウス栽培向け農業用ソリューションなどの紹介もあった。

2018年以降、ボッシュが提供するビジネスの主だったものをご紹介したが、Maasやcaseといった言葉で説明される機会が増えてきた次世代車に対し、巨大Tier1のボッシュからのソリューションはすでにいくつもの具体的なサービスが想定されており、コネクテッドをはじめとした次世代車の具体像が次第に見えてくる年次会見だった。

ボッシュ 関連情報
ボッシュ 公式サイト

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