ボッシュ社は1995年にESC(ESP)の量産を開始して以来、累計で7500万台のシステムを生産したと発表した。ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)は滑りやすい道路やオーバースピードでカーブに進入した場合などに車両を安定させ、重大な事故になりかねない横滑り事故を未然に防ぐことができる。
ボッシュのシャシーシステム・コントロール事業部長のゲルハルト・シュタイガー氏は「ESCは、シートベルトに次いで最も重要な車両安全システムで、これまでに多くの命を救ってきました」と述べている。
ボッシュはESCを開発し、1995年に世界で初めて量産を始め、メルセデスベンツSクラスに装着された。その後は次第に装着車が増大するのに比例して生産数が増大し、2010年以降、ボッシュが生産するESCユニット数は、ABSユニット数を越え、ESCはグローバルトレンドとして、車両の安全性に大きく寄与している。
国連はESCの効果を評価し、年々増加する交通事故の死亡者数にESCが歯止めをかけることができると期待している。またESCはあらゆる横滑り事故の最大80%を未然に防ぐことができるという研究結果により、現在では多くの国々で新車に標準装備するよう求められている。
ヨーロッパでは、2011年10月以降に認可された新型モデルの全車に、ESC装備が義務付けられ、すでに乗用車と軽商用車全体の72%にESCが装備されているという。米国では4.5トン以下のモデルへのESC装備が義務付けられているほか、同様の規制がオーストラリア、日本、韓国、ロシアの各国で数年以内に施行されることになっている。
現在、世界中の乗用車と軽商用車の全新車のうち48%にESCが装備されており、中国では、生産されたほぼ5台に1台の新車にESCが装備されているというのが実情だ。
ボッシュのESCは、1995年に量産を開始して以来、付加機能を取り入れながら、アクティブセーフティ・システムの継続的な開発が進められていることにも注目したい。第1世代のESCは重量が4.3kgだったが、最新の第9世代のベーシック・バージョンでは大幅な軽量・コンパクト化が進められ、その重量はわずか1.6kg。同様に、ボッシュはESCの低価格化も成し遂げ、小型車にも装備が可能となる手頃な価格となってきている。
そして、ESCシステムをベースにした新しいドライバーアシストも次々に開発されている。前走車との車間距離を自動的に維持する機能や車両を狭い駐車スペースにガイドする機能、危険な状況をドライバーに速やかに警告する機能などが実現されている。これらの機能に共通しているのは、ドライバーが関与することなくブレーキが自動的に作動することだ。つまりESCがこのブレーキの自動作動を可能にしているわけだ。
このためESCがすでに装備された車両には、セーフティやコンフォート機能を追加装備しやすいというになる。ただしそのためには、車両の周囲を監視し、他の車両を検知し、それらとの距離、速度や向きを計算するセンサー類とのネットワーク化が必要になる。
ボッシュは、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や衝突予知緊急ブレーキシステムなど、超音波センサー、ビデオセンサー、レーダーセンサーの各種センサーをベースとしたドライバー・アシスタンス機能を幅広くラインアップし、多くの車種に採用されているのも、そのバックボーンにはESCがあってこそといえるのである。