グローバル・サプライヤーのボルグワーナーは2018年9月10日、高い過渡応答特性が要求される乗用車用ガソリンエンジン向けに専用設計したデュアルボリュート(渦流)ターボチャージャーを開発したと発表した。
この新型ターボチャージャーは、低速から加速する場合に極めて素早いエンジン・レスポンスを実現する。独立したデュアル渦流構造により、エンジンからの排気を2つの渦流室に完全に分離できるので、従来のツインスクロールターボチャージャー構造と比べ、タービン駆動に、より多くの排気脈動エネルギーが利用できる。
ボルグワーナーの幅広いエンジン過給製品のポートフォリオに加わるデュアルボリュートターボチャージャーは、ガソリン乗用車の性能向上のための新たなソリューションだ。
ではデュアル渦流ターボをより詳しく見てみよう。
タービンとコンプレッサーで構成されるターボチャージャーは、エンジンから排出される高温・高圧の排気ガス流のエネルギーを利用し、このエネルギーをコンプレッサー部で圧縮し、つまり「ブースト」空気に変換してエンジンに送り込む。
タービンハウジングに導入された排気ガスは、デュアルボリュートタービンの分離された2つの渦流室(ボリュート)を通過することでタービンの回転方向に方向付けされ、それぞれがタービンホイールに直接吹き付けられる。
従来のツインスクロール・ターボチャージャーは、タービンハウジングに2本の排ガス通路ができるように横並びの隔壁を設け、タービンに送り込む排気流を分離させている。しかし、このような横並びの流路構造の場合、2つの渦流室からの排気流はタービンホイールに吹付けられる直前に従来の狭い排気通路を通ることになる。このため排気流とそれに伴う脈動エネルギーが集合部で弱まり、タービンホイール駆動に利用できるエネルギーを損失するのだ。
新開発されたデュアルボリュートターボは、この並列の隔壁ではなく排気通路を円周上に上下に完全に分離させることで、より多くの排気ガスを取り込むことができる。また排気脈動の間隔が長く、排気流量が変化しやすい低速時に、エンジンからの脈動エネルギーを積極的に利用することにより、タービンホイールを駆動させるエネルギーを大幅に増加させることができる。つまり低速時により多くの排気ガス・エネルギーを利用することにより、ブーストレスポンスを高めることができるのだ。
実はこのデュアルボリュートターボチャージャーは、商用車用ディーゼルエンジンに限定的に使用されていたが、新たな開発の結果、ガソリンエンジンに適合できるようになったのだ。ボルグワーナーは、このガソリンエンジン向けの新世代デュアルボリュートターボチャージャーの開発を2012年に開始し、現時点では1社のフルサイズのピックアップトラックのOEM用として生産を開始している。
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