第2章スバル ハイパワーエンジンという血統 名機 スバル「EJ20」型エンジンヒストリー

生まれながらのレースエンジン

初期のEJ20型ターボ・エンジンはIHI製のRHB52型ターボを採用。より滑らかなトルク特性とするため、過給圧は0.6barと低めの設定で、後の高過給圧のEJ20ターボ・エンジンとはかなり違いがある。

自然吸気仕様で150ps/6800rpm、172Nm/5200rpm、高出力型の本命、ターボ仕様は水冷インタークーラーと組み合わせて200ps/6000rpm、260Nm/3600rpmを達成した。そして、ラリーなどに使用するモデルとしてセダンにRS-RAが設定され、専用のEJ20型ターボが搭載された。

1991年のWRC コルシカラリーに出場したレガシィ RS-RAベースのラリー車

この専用エンジンの出力は220psながら、STIによりバランス取り、吸気ポート内鏡面研磨、鍛造ピストンの採用などが行なわれ、ゴールド塗装のエンジン・カバーを備えていた。このエンジンがベースとなり、レガシィ・セダンRS-RAは世界ラリー選手権(WRC)に打って出た。

このようにEJ20型エンジンは、クラストップの高出力を実現し、同時にモータースポーツでの使用も想定したハイパワー・エンジンという血統は生まれながらに備えていた。

インプレッサ WRX用のEJ20型エンジン

レガシィに続く世界戦略車の第2弾として1992年にデビューしたのが、Cセグメントのインプレッサ(GC/GF型)・シリーズであった。このインプレッサ・シリーズに搭載されたのがEJ型エンジン・シリーズで排気量は新設計の1.5L、1.6Lから2.0Lまで6機種のエンジンでカバーされていた。

1992年に登場したインプレッサ シリーズで高いパフォーマンスを追求し、進化型のEJ20型ターボを搭載した「WRX」

この初代インプレッサのスポーツモデルであり、世界ラリー選手権(WRC)への出場も想定したWRXが設定され、EJ20ターボを搭載している。しかし、初代レガシィ用の登場から3年を経て、インプレッサ WRX用のEJ20型は大幅に改良されている。

それはシリンダーヘッド部分が新設計されたのだ。よりハイパワー、大トルクを求め、DOHCのバルブ駆動は従来のロッカーアーム式からより摩擦抵抗が小さく、剛性が高いダイレクト式に変更し、バルブ挟み角は52度からやや狭められて41度に変更することで、燃焼室のコンパクト化を図っている。

シリンダーヘッド、バルブ駆動システムが新設計されたEJ20型ターボ。バルブは直動式となり、バルブ挟み角も41度に

また、ターボ過給圧は0.8barまでアップ。さらにインタークーラーを水冷式からより容量の大きな空冷式に変更し吸気冷却性能を向上させている。このため、WRXからボンネット上にインタークーラー用のエア・インテークが新設されている。さらにラリー車のベースとなるWRX RAには空冷インタークーラーの強制冷却用ウォータースプレー(水噴射)も装備されている。これは、ラリーで使用するためにFIAの公認を取得するためだ。

このような大きな設計変更により、EJ20ターボの出力は240ps/6000rpm、最大トルク304Nm/5000rpmを発生できるようになった。

そして、1994年にはインプレッサWRX RAをベースにして、さらにSTIが鍛造ピストンの採用、バランス取りなどの専用チューニングを行なったEJ20型ターボを搭載した「WRX STi」(この当時はSTi表記)が設定されている。

1994年のWRC フィンランドラリーに出場したWRX RAをベースにしたラリーカー

このインプレッサWRX RAは、計画通り1993年から世界ラリー選手権シリーズに参戦し、1995年から3年連続WRCチャンピオンを獲得するという快挙を成し遂げることができたのだ。そのパワートレーンであるEJ20型ターボ・エンジンは、ラリーというモータースポーツフィールドで、高いポテンシャルを実証しSUBARUは世界一を獲得したのだ。<編集部:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

<第3章へつづく>

<第1章はこちら>

スバル 関連記事
スバル 公式サイト

COTY
ページのトップに戻る