2019年9月21日、22日に宮城県のスポーツランド菅生で開催されたスーパーGT第7戦にスバルの中村知美社長と大拔哲雄専務という経営トップ2が激励に駆けつけていた。
今年2019年のニュルブルクリンク、そしてスーパーGTには大拔専務と技術系トップの藤貫執行役員の顔はしばしば見かけていた。それ自体、従来のスバルとしては異例な光景で、オートプルーブでもスバル本社の役員がなぜドイツ・ニュルブルクリンクまで来るのか?狙いは何か?といった記事を掲載した。
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この記事ではスバル、STIには非常に多くのファンがいて、ファンとの絆を強めること、将来に渡って魅力的な商品づくりにつなげていき、そうした繋がりを礎とするために、経営、技術のトップが現場視察をしていると書いた。
今回のスーパーGT SUGOのレースには、そのスバルの経営トップの社長と専務が来場しているのだから、スバルの本気度が伝わってくる。
では、何が本気なのだろうか?決勝レースがスタートする直前の慌ただしいグリッド上で、直接、中村社長と大拔専務に質問を投げかけてみた。
記者
「スーパーGTを現場でご覧になっての感想はいかがですか」中村社長
「社長になってからは初めてみますが、非常に多くのファンが来場していて、グランドスタンドがブルーに染まる光景は嬉しいですね。昨日の予選でコースレコードを塗り替えてポールポジションを獲得しましたから、最高の形でこれました」記者
「ドライバーやスタッフに対してはどんな言葉をかけたのでしょうか」中村社長
「いや、もう、頑張ってくれっていうことだけです」記者
「大拔専務は、このポールポジションをどのように見ますか」大拔専務
「技術的には実力が出せたということです。でも本番のレースではピットストップもあるので、難しいレースだと思います」記者
「スバルの中でこのスーパーGTの位置付けはなんでしょうか」中村社長
「社内的にはモータースポーツをどこまでやるのかの塩梅が難しいのも事実です。ですが、これまで長くSGTは戦ってきましたし、やるからには勝たないといけないし、これからもやらなければ、でしょう」記者
「このBRZは長く使っているマシンですが」中村社長
「丈夫で長持ちがスバルの信条ですから(笑)、いいものは長く大事に使っていきますよ」大拔専務
「新しいクルマに関しては・・・」と困惑した顔をしていた。記者
「他のモータースポーツ観戦はいかがですか」中村社長
「WRCに参戦していた時代、マーケティングの責任者だったので、ラリージャパンの時は運営サイドにいました。ファンの方がたくさんお見えになってブルーに染まっていくのは感動しました。この菅生も青一色のスタンドを見ると感動しますね」
スバルの応援団を目前にして、経営トップは大きな感動を噛みしめているようだった。
こうした、企業経営トップの来場は、運営するチームスタッフ、ドライバーはもちろん、ファン、ユーザーの気持ちには深く印象付けられたに違いない。
また、中村社長は、ピットでチームスタッフ全員に対して応援のコメントを発し、スタッフも心強く思ったことだろう。
「昨日のコースレコードでのポールポジションということを聞いて、居ても立っても居られず、駆けつけてきた、ということにしてください。本当は元々応援に来る予定にはしていましたが、最高の形でこれました」と茶目っ気のあるメッセージをスタッフに見せていた。
この先のスバルのモータースポーツ
記者は、大拔専務と立ち話をさせてもらったときに、目の前の自動運転の開発が大変であることを聞いた。それは内閣府が進めるSIP(戦略的イノベーションプログラム)における自動運転の目標で、2025年に高速道路でのレベル4の実現が掲げられているからだろう。
つまりセカンドタスクがOKであり、車内はエンターテイメントスペースに変わることを意味している。2025年はすぐそこだ。そこに向けての車両開発が大変だと言っているわけだ。こうした車両開発とモータースポーツのシナジー効果は一体どこにあると考えているのだろうか。
大拔専務には、フォーミュラEへの可能性、魅力について質問をしてみた。一つには多くのファンがいて、人気があり、スター性のあるレースという条件をクリアしていたらどうか?という質問に対し、「生産車に技術などのフィードバックを活かせるような規格でのマシン作りはしたいですね。フォーミュラのようなレースは、エンジニアには技術開発の領域は広がりますが、生産車と直接結びつくようには中々ならないと思うので、その辺りが今後見極めていくポイントになっていくでしょう」とも話をしてくれた。
スーバーGTやニュルブルクリンクには多くのスバルファンがいて、この人たちとの繋がりが非常に重要になってくることを経営トップは肌で感じ、絆を深めたいと思っているわけだ。
機会があれば、この先スバルはどのように舵取りされていくのか話を聞いてみたい。<文:高橋明/Akira Takahashi>