新型レヴォーグはすべてが新しく、超革新的進化を遂げている。これまでオートプルーブではインナーフレーム構造やシャシー性能、そしてアイサイトXのデモ走行、サーキットでのダイナミック性能テストとレポートをしているが、今回は標準アイサイトの進化を含む衝突安全の領域をお伝えしよう。
SUBARUの新中期経営ビジョンSTEPにある、2030年までにスバル車による死亡事故ゼロを目指すという目標。そのために日本の交通事故実態と傷害発生メカニズムに注目し、衝突安全技術を進化させている。
乗員保護
スバルの取り組みとして乗員保護、歩行者保護、後席シートベルト着用率向上の取り組み、そして救命救急の早期化という4つの分野に分けて取り組みを行なっている。
まず、車体の剛性アップによる保護と車載するデバイスによる保護という取り組みだ。その車体剛性では第2世代となったSGP(スバルグローバルプラットフォーム)の採用で、乗員保護性能の進化がある。
正面からの衝撃の場合では、従来は2系統のエネルギー吸収だったものを3系統のマルチロードパスとすることでエネルギー吸収量を向上している。ボディでは、1.2GPaの高張力鋼板の採用拡大や、現行車比で+75%のエネルギーに耐えるキャビン強度を達成。
これはデータ解析により、どれくらいの衝撃吸収材がどこに必要かといった分析により、適材配置が可能になり、また軽量化も車両全体に求められる性能であるため、超高張力鋼板の採用があるわけだ。その結果、現行比で7%が1180MPa以上の鋼材になっている。
そして車体骨格以外では、衝突時の衝撃吸収ストローク量も拡大している。主に新プロペラシャフトの採用によるもので、現行車でも採用しているが、衝突時にエンジンが下がる構造で、プロペラシャフトが縮んで衝撃吸収をしているが、このプロペラシャフトさらに短くなるようにし、ピーク車体衝撃を現行比-7%緩和。よりスムーズなパワーユニット衝突後退構造とした。
インテリアではエアバッグの効果をきちんと発揮させるために、乗員をしっかり拘束することで安全性を高める工夫をしている。まず、運転席にニーエアバッグを採用し、早期に下半身を拘束する。助手席はシート座面下にシートクッションエアバッグを装備し、シートに正しく座った状態でシートベルト拘束されるようにした。
またシートベルトもショルダー部と腰の部分でテンションのかかり方を変える「プリテンショナー&フォースリミッター付きシートベルト」を4席に採用している。イメージとしては下半身をしっかり拘束、上半身をソフトに拘束する工夫で胸部の怪我を低減する狙いがある。
歩行者保護
車体剛性が上がるほど、歩行者への攻撃性とのトレードオフとなる一面がでてくるが、新型レヴォーグでは歩行者の頭部保護としてAピラーからフロントウインドウ下部の剛性の高い部分に歩行者保護エアバッグを採用し対応している。
また歩行者の脚部保護のため、衝撃吸収部材やスペースを最適化している。フロント部は車両デザインの制約を多く受けるが、その中でも衝撃吸収スペースでは現行モデルに対して約30mm増加させている。また部材配置も解析シミュレーションにより最適化をはかって歩行者の脚部保護をしている。
後席シートベルトと救急救命
シートベルトが乗員の安全を確保するアイテムであることは認識しているものの、後席のシートベルト着用率は低い。高速道路でも74.1%、一般道では39.2%の着用率というデータがあり、新型レヴォーグではベルトリマンダーの継続採用と併せて、インジケーター点灯と警報音によってベルト着用を促す装備を採用した。
また新型レヴォーグから「つながる安全」として先進事故通報を導入。エアバッグが作動するような大きな事故を感知すると自動的にコールセンターに通報し、早期救命活動につなげる。
アイサイトの進化
リアルワールドでの本当に使える先進安全機能としてアイサイトの進化がある。それは新アイサイトステレオカメラ、前側方レーダー、そして電動ブレーキブースターを備え、検知したデータに即座に反応できるプリクラッシュセーフティを備えている。
アイサイトXは主に高速道路での渋滞時ハンズオフやレーンキープ、車線変更のアシストなどの機能を搭載しているが、標準のアイサイト機能の進化によって成立している技術でもある。
交差点付近でのシナリオ
全車標準装備になった新アイサイトでは、主に交差点付近でのプリクラッシュの作動領域が拡大している。自車が右折する時の対向車両や右左折時の横断歩行者、真横からの出会い頭の自転車などの検知領域が広角化した新ステレオカメラで捉えることが可能になっている。
ちなみにステレオカメラはこれまで日立オートモーティブ製を採用してきたが、小型化も含めSUBARUの要件と合致したサプライヤーはスウェーデンのヴェオニア(オートリヴ)で、新型アイサイトには、このヴェオニア製のステレオカメラが装着されている。
そしてフロントバンパー側面にミリ波レーダーを内蔵し、真横から接近してくる出会い頭の車両を検知することが可能となり、ブラインドになっている交差点などでは特に有効なプリクラッシュセーフティになっている。
実際にデモカーでテスト試乗したが、両側に壁や塀がある交差点は路地に多く、少しずつノーズを出してもまったく車両確認ができないような交差点も実在する。そうした交差点で左からくる車両と衝突の危険があると検知すると警報と緊急ブレーキが作動し停止する。
その際、ドライバーが次のアクションを起こさない限り、警報音は鳴らしたまま車両は停止し続ける。ブレーキペダルを踏むとか、アクセルを踏むなどすると通常の状態に戻る。
また、右左折時の横断歩行者への対応も可能になり、電動ブレーキブースターを採用したことで、応答性が上がり、より精度の高い緊急ブレーキが可能になった。つまり、人の動きには、予測しづらい行動があり、ブレーキをかけるべきかどうかの判断をギリギリまで遅らせることができるようになった。その結果、より正確な判断が可能になったというわけだ。
また現行のアイサイトVer.3の対回避車両速度は50km/hだったが、新アイサイトは60km/hまで対応可能になった。これはデモ走行を見学したが、障害物に対して余裕ある距離で停止することができている。
これらの安全装備はスバルが目指す2030年死亡事故ゼロに対する取り組みであり、ダイナミック性能の進化、運転する楽しみだけでなく、グランドツーリングに求められる、より遠くまで、より速く、より快適に、安全にすることで、心からツーリングが楽しくなるというスバルらしい価値を提供しているのだ。
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