【WEC2015】 第3戦 ル・マン24時間レース ポルシェが17年振りの優勝

WEC 2015 ル・マン24時間レース 
優勝したポルシェ#19のステアリングを握ったアール・バンバー/ニコ・ヒュルケンベルグ/ニック・タンディ。

2015年6月13~14日、世界耐久選手権(WEC)第3戦、伝統の第83回ル・マン24時間レースが行なわれた。今回は24時間を通して異次元ともいうべきハイペースの戦いの末、ポルシェチームの#19が395周を走破してトップでゴールを駆け抜け、ポルシェは1-2フィニッシュを達成した。

■公式予選
6月11日から開始された公式予選では、ポルシェが1~3番手を独占した。しかもラップタイムは、ポールポジションを獲得したポルシェ#18が3分16秒887、2番手の#17が17秒台、3番手の#19が18秒台を記録し、もちろんコースレコードである。このタイムは2014年のトヨタTS040のタイムを4秒も上回っている。

予選で驚異的なコースレコードを記録したポルシェ#18
予選で驚異的なコースレコードを記録したポルシェ#18

アウディ勢は4~6番手を占め、タイムは19秒台から20秒台で、これも昨年の予選タイムを大幅に上回っている。トヨタは予選アタックをせず、決勝仕様の確認に終始し、ラップタイムは3分23秒台で、7、8番手となった。この予選タイムは昨年より2秒遅くなっている。

WEC 2015 #3 ル・マン24時間レース予選結果表

そして注目の日産GT-R LM NISMOは、#22が3分36秒995、#23が37秒291、#21が38秒691と、LMP1ハイブリッドクラスというよりNAエンジンを搭載する下位クラス並みのタイムとなった。このためLMP1ハイブリッド・クラスの基準タイムをクリアできず、LMPクラスの最後尾、GTEクラスの前に降格されてスタートを迎えることになった。

■決勝レース
6月13日、午後3時に決勝レースのスタートが切られた。ポルシェを先頭にアウディ、トヨタ勢が続くが、先頭グループのラップタイムは3分20秒台で、トヨタは23~24秒台のため序盤から引き離されていく。

WEC 2015 ル・マン24時間レース
24時間レースのスタート。序盤で黒色のポルシェ#18がトップに立った

トップグループを形成するポルシェ、アウディは全車が3分20秒台でラップタイムを刻み、接戦を演じている。昨年の予選タイムを上回るペースでのレース展開で、序盤こそポルシェ#17がリードを保ったものの、その後はポルシェとアウディがピットストップのたびに順位を入れ替えるというレース展開となった。その接戦の様子は、トップのポジションの入れ替わり表を見るとよく分かる。

ポルシェ#18
レース序盤をリードしたポルシェ#18
トップ位置の変遷
トップ位置の変遷

またそれにつれ、クリアラップでは3分20秒を切るラップタイムも記録されている。ただ、アウディはレース開始3時間後の時点で#8がGTEクラスの集団を強引に抜くときにGTE車両と接触してガードレールに激突する事故が発生。幸い#8は自走でき、ピットでボディとフロント・サスペンションを交換。修理には4分間を要したがコースに復帰した。

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夜10時過ぎ、日没を迎え夜間走行の時間を迎えるが、トップグループのペースに変わりはない。しかし午前7時頃、アウディ勢の先頭を走りトップ争いをしていた#7号車のリヤボディが外れるという予想外の出来事が発生した。ピットに帰り約7分間の修理を行なったため、2ラップ分を失い、これは結局挽回することはできなかった。その結果、アウディは#9がトップ争いを演じる役割を担ったが、このマシンは午前中にハイブリッドモーターにトラブルが発生し、さらにフロントドライブシャフトも交換せざるを得ず、17分間を失い、後退した。

この結果、夜間にトップに立ったポルシェ#19がそのポジションを守り続け、レース序盤に1分間のペナルティを受けた#17が2番を走り、#18はブレーキは不安定な状態が続いたが粘り強く走り続けた。そしてポルシェは日曜日の朝方から、勝利を確実にするため一人のドライバーが4スティントを担当する作戦を実行した。

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アウディ#9、#8。決勝レースではポルシェを凌ぐ速さを見せつけた

終盤にポルシェを追い上げるアウディの全車はペースを上げ、なんと#7は終盤に3分17秒475という決勝レースでのレコードタイム叩き出している。ポルシェ勢はレース中は19秒台~20秒台で、レース中はアウディの方がラップタイムは上回っているのだ。したがってアウディに不運なトラブルがなければポルシェを脅かしてであろうことは想像できる。

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しかし、ポルシェ終始トラブルフリーで走り続け、1-2フィニッシュと、ル・マン史上17回目の優勝という最高の結果を手に入れることができた。ヴゥイザッハ研究開発所の責任者、ヴォルフガング・ハッツは「参戦2年目での1-2フィニッシュは、919ハイブリッドの開発を続けてきた230人のエンジニアによる努力があってこそです」と語っている。

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レースがフィニッシュすると、アウディ社のルパート・ シュタートラー会長はポルシェのピットに急ぎ、「今回のレースは、モータースポーツの最高峰と称すべきものでした。会場に押し寄せた観客は、アウディとポルシェという同じグループのブランドでありながら、お互いに手を緩めることなくスリリングなバトルが繰り返され、非常に素晴らしい耐久レースを堪能されたことと思います。ル・マンで優勝することが、どれほど難しいかを知り尽くしている我々は、ポルシェの優勝を称えます」と語った。

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またレースを見守ったアウディの技術開発担当取締役のU.ハッケンベルク博士は、「まったく異なるコンセプトで産み出されたアウディとポルシェのハイブリッドレーシングカーが、レース全体を通じて互角の闘いを繰り広げたことに、非常に大きな驚きと感動を得ました。両ブランドが採用したコンセプトは、いずれもトヨタのマシンを凌駕する速さを示しました。これこそが我々がWECやル・マンで明らかにしたいものなのです」と語っている。

昨年より1秒速いラップタイムで走り続けたトヨタTS040
昨年より1秒速いラップタイムで走り続けたトヨタTS040

トヨタは6位と8位でレースを終えた。6位に入ったのはアレックス・ブルツ/ステファン・サラザン/マイク・コンウェイの#2。8位はアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴の#1だった。レース序盤にガードレールに接触し、ボディとサスペンションを痛め、13分間を失っていた。

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TS040は昨年より1秒速いラップタイムを刻んだが、ポルシェ、アウディは4秒も早いタイムで、上位争いには参加できなかった。ただ、トヨタは#1のクラッシュ以外はノートラブルだったのが救いであろう。

トヨタは、今回の結果を受け2016年仕様は、全く新たなパッケージング、直噴ターボエンジン、リチウムイオン・バッテリーの採用などの検討に入ったといわれている。

ただ1台、ゴールラインを超えたGT-R LM NISMO #22。しかし完走扱いとはならず
ただ1台、ゴールラインを超えたGT-R LM NISMO #22。しかし完走扱いとはならず
WEC 2015 ル・マン24時間レースWEC 2015 ル・マン24時間レース

日産チームは予選も屈辱的な結果だったが、決勝レースはさらに惨めな結末となった。#21はレース開始1時間でリタイヤし、#23はレース半ばでリタイヤ。唯一242周してゴールを迎えた#22は、周回数不足のため完走扱いから除外されている。速さも欠けていたが信頼性もなかった。日産GT-R LM NISMOはテストデーで最高速を記録したのが唯一の成果だろう。言い換えれば、レースに臨むコンセプトそのものが非現実的だった。

WEC 2015 ル・マン24時間レース ゴールWEC 2015 ル・マン24時間レース

GTEクラスでは、シボレー・コルベットC7 Rが、フェラーリ、ポルシェ、アストンマーチンなどを抑えクラス優勝を果たした。コルベットレーシングは予選で1台が大クラッシュし、決勝は1台のみで戦った末の優勝だった。

WEC 2015 第3戦 ル・マン24時間レース結果

 

WEC2015関連情報
FIA WEC公式サイト
ル・マン24時間レース公式サイト
トヨタ・モータースポーツ公式サイト

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